党代表の資質欠くことを露呈した岡田克也氏
民主党の代表選が行われている。
本来は日本政治上の重大イベントであるはずのものだが、その意味はほとんどない。
小選挙区を軸とする選挙制度は、政権交代が常に起こり得る政治状況を生み出すためのものであるが、この選挙制度の存在は、政権交代が起こり得る政治状況を生み出す必要条件であっても、十分条件ではない。
民意を代表する二つの大きな政治勢力が出現したときに、初めて小選挙区制度の真価が発揮されるのである。
政治の専門家のなかには、「小選挙区制度」そのものが悪いのだとする者が存在するが、そうではないだろう。
従来の「中選挙区制度」と「小選挙区制度」とを比較したときに、そのそれぞれに、長所と欠点がある。
すべてのものごとには「陰」と「陽」とがあって、基本的には一長一短がある。
1993年の政権交代を契機にして、小選挙区制度が導入された。
この制度改革を牽引した中心人物が小沢一郎氏だった。
この経緯があるから小選挙区制度を批判する者が多い。
「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」
の類いで、小選挙区制度を批判する者が多いのだ。
また、中選挙区制度の下では、地盤、看板、カバンの三つが揃っていれば、長期間の当選可能な状況が生まれる。
世襲政治家の大量発生はこの土壌から生まれてきたのである。
ぬるま湯につかった状態で政治屋稼業を利権の多い職業として特定の人々が占有できる状況が小選挙区制度では破壊される。
ぬるま湯につかり続けることができなくなる与党政治屋を中心に、小選挙区制度批判が展開されてきたことも、また事実である。
話が横にそれたが、選挙制度には、一長一短がある。
だから、一概に小選挙区制度を軸とする選挙制度が悪いとも言い切れないのである。
日本の場合は、比例代表選挙を並立しているため、小規模政党も比例代表で議席を獲得できる。
共産党は今回の12月選挙で、選挙区での当選は1人だったが、比例代表で20名の当選者を出して、21議席を獲得した。
小選挙区を軸として、比例代表制度を並立させることは、ひとつの賢明な選択であるとも言えるのである。
大事なことは、この選挙制度の存在を前提として、この制度を十分に生かすような政党分化が生じることなのだ。
現在の政治状況では、自公が多数議席を占有している。
しかし、全有権者のなかで自公に投票した者は、昨年12月の選挙で24.7%しかいなかった。
つまり、現在の安倍政権与党である自公勢力は、主権者全体の4分の1の意思にしか支えられていないということになる。
この自公勢力が衆議院475の定数の68%にあたる325議席を占有した。
4分の1の民意が、日本政治を独裁的に支配してしまう状況が生まれている。
この状況が、「健全な民主主義の状況」であるとは思われない。
このような事態が生じている最大の原因は、安倍政権与党の政策方針に反対の考えを持つ主権者の意思を正面から受け止める国民政党が不在になっていることにある。
冒頭に、本来は民主党代表選が日本政治上の重大イベントであるべきだが、そうはなっていないと書いた。
その意味は、民主党が上記の要件を満たす存在にはなっていないからなのだ。
日本の主権者にとって、何よりも重大な問題のひとつは原発再稼働問題だろう。
また、解釈改憲問題=集団的自衛権行使の問題も同じだ。
自公勢力と対峙する二大勢力の一翼を担う国民政党として存立するには、少なくとも原発再稼働阻止、憲法破壊阻止の旗が打ち立てられる必要がある。
原発再稼働賛成、憲法破壊賛成ということなら、自公勢力と違いがない。
岡田克也氏や細野豪志氏の主張は自公の主張と酷似している。
この主張が展開される以上、自公に対峙する二大勢力の一翼を担う政治勢力には永遠になり得ないと思われる。
長妻氏の主張だけが、自公に対峙する民意と重なる部分が多い。
民主党代表選を通じて期待されることは、民主党が一刻も早く分裂した方が良いということである。
水と油が同居を続けていても有益なことは何もない。
選挙の投票率が52.66%にまで下落した理由は、主権者の無関心が増えたということにあるわけではない。
主権者の意思を正面から受け止める政治勢力が不在になっていることを反映したものなのだ。
だからこそ、主権者の意思を正面から受け止める国民政党、主権者政党の一刻も早い創出が強く求められている。
これを促進するひとつの現象に民主党の分裂がある。
民主党代表選が民主党分裂の契機になることが強く期待される。
続きは本日の
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