安倍政権は人命第一原則に沿って全力尽くすべき
湯川遥菜さんは殺害されたとの情報が伝えられている。
後藤健二さんは依然として拘束されたままの状況で、安否が心配されている。
1月24日に、湯川さんが殺害されたように見える写真を携えて、後藤さんが救出される条件を、後藤さん自身が語るyoutube動画が投稿された。
後藤さんの発言内容はイスラム国が用意したものであると考えられる。
youtube映像が提示した後藤さん解放の条件は、
ヨルダンで拘束されているイスラム国の女性死刑囚の解放だった。
そして、この発言のなかで、極めて重大な意味を持つ言葉が、
hours
という表現だった。
後藤さんが、条件が満たされない場合には、この世で残された時間が
hours
になると述べたのである。
イスラム国はヨルダン国に拘束されているイスラム国の女性死刑囚と後藤健二さんの交換を後藤さん解放の条件として提示してきた。
しかし、イスラム国女性死刑囚を収監しているのはヨルダン国である。
日本の判断だけでは決められない。
ヨルダン国では、女性死刑囚の釈放と取引する対象として、第一の優先順位が与えられるべきは、イスラム国に拘束されいているヨルダン国パイロットであるとし、このパイロットと女性死刑囚の交換を提案した。
ヨルダンは、ヨルダン国パイロットを釈放するのであれば、イスラム国女性死刑囚を釈放する用意があることを表明した。
ただし、女性死刑囚をトルコ国境地帯にまで連行するには、ヨルダン国パイロットの生存に関する証拠の提示が必要であることを表明した。
しかし、イスラム国はヨルダン国パイロットの生存を証明する証拠を提示しておらず、そのため、イスラム国女性死刑囚のトルコ国境地帯への連行を行っていないことを発表した。
イスラム国は、1月28日夕刻(現地時間)に、イスラム国女性死刑囚の釈放の期限を1月29日日没と規定し、この時刻までにイスラム国女性死刑囚が釈放されない場合には、ヨルダン国パイロットを殺害することを通告してきた。
しかし、ヨルダン国は、ヨルダン国パイロットの生存を証明する証拠の開示が先であるとの主張を崩しておらず、人質交換が実現しないまま、イスラム国が設定した期限が過ぎてしまった。
このなかで、後藤健二さんの安否が心配されている。
イスラム国が、ヨルダンに拘束されているイスラム国女性死刑囚の釈放を後藤さん解放の条件に設定したため、事態が錯綜しているが、イスラム国が後藤さん解放の条件を提示して以降の日本政府の対応はあまりにも遅い。
当初の映像で、この世に残される後藤さんの時間が
hours
とされたのであるから、もとより、一秒を争う事態である。
安倍晋三氏が当初示した、
「人命第一」
を基本に据えるなら、文字通り、人命第一でできることをすべてやることが必要である。
「人命第一」の対応と、
「テロに屈しない」の対応とは、
基本的に正反対の方向を有する。
「人命第一」の対応を取るなら、イスラム国の要求を受け入れる側面が必ず浮上せざるを得ない。
「テロに屈しない」ことを貫くなら、基本的には人命を犠牲にするという側面を覚悟するということになる。
この基本において、言行不一致が観察されている。
イスラム国がヨルダン国が拘束しているイスラム国女性死刑囚の釈放を求めていることから、日本が単独で問題を解決し切れない側面は確かに存在する。
しかし、安倍政権の対応からは、後藤さんの命を何としても救おうという、気迫がまったく感じられないのである。
「ヨルダン国任せ」
ということなら、国民の生命を守るべき政府としては失格ということになる。
この点は、今回の人質事件発生に、安倍首相のこれまでの言動が深く関わっていることと切り離して考えることができない。
安倍首相は湯川さんがイスラム国に拘束されたあとの昨年9月に、
「空爆によるイスラム国壊滅を支持する」
見解を明示した。
そして、この1月に中東を訪問し、イスラエルとの緊密な協力関係確立を宣言するとともに、イスラム国と闘う周辺国に2億ドルを提供することを宣言したのである。
こうした言動が邦人殺害予告あるいは邦人殺害につながったことは明白である。
この経緯を踏まえれば、安倍政権は人質を救済するために、全力を尽くすべきであるが、日本の邦人救出に向けての対応は、あまりにも不明確である。
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» 後藤氏の処刑が確認された時点で問われる安倍首相の進退 〔天木直人〕 [Cloud Party Japan]
たった今(午前5時過ぎ)、NHKテレビが後藤氏の処刑の投稿がイスラム国から流されたというニュースを流した。 それを知ってこのメルマガを書いている。 誰よりも先に書いておくために。 やがて政府はこの動画の真否を確認しなければいけない。 そしておそらく政府は残念ながら後藤氏の処刑を確認することになるだろう。 問題はその時の安倍首相の第一声だ。 それはこれから始まる安倍首相の記者団に対する第一声ではない。 後藤氏の死を安倍首相が確認した後に行われる記者会見の時の言葉だ。 その時、テロとの戦いに屈してはい... [続きを読む]