卵と壁「私は常に卵の側に立つ」
「高くて硬い壁と、壁にぶつかって割れてしまう卵があるときには、私は常に卵の側に立つ」
これは、村上春樹さんがエルサレム賞授賞式のスピーチで語った言葉だ。
村上さんは、こう続けた。
「この比喩の意味するところは何でしょうか。あるケースにおいては、それはあまりにも単純明快です。爆弾・戦車・ミサイル・白リン弾は高くて硬い壁である。卵はこれらに撃たれ、焼かれ、つぶされた、非戦闘市民である。これがこの比喩の意味するところの一つです。」
「しかしこれが全てではありません。もっと深い意味もあるのです。このように考えてみませんか。
私たちは皆それぞれ、多かれ少なかれ、一つの卵であると。皆、薄くてもろい殻に覆われた、たった一つのかけがえのない魂(たましい)である、と。
これは私にとっての“本当のこと”であり、皆さんにとっての“本当のこと”でもあります。
そして私たちは、程度の多少はあるにせよ、皆高くて硬い壁に直面しているのです。」
(翻訳は
「青山の昼と千駄木の夜 ~Indiana(インディアナ)暮らし編」
http://ameblo.jp/fwic7889/entry-10210795708.html
による)
村上さんは、さらにこう語った。
「私が今日、皆さんに伝えたいと思っていることは、たった一つだけです。
私たちは皆、国家や民族や宗教を越えた、独立した人間という存在なのです。
私たちは、“システム”と呼ばれる、高くて硬い壁に直面している壊れやすい卵です。誰がどう見ても、私たちが勝てる希望はありません。壁はあまりに高く、あまりに強く、そしてあまりにも冷たい。
しかし、もし私たちが少しでも勝てる希望があるとすれば、それは皆が(自分も他人もが)持つ魂が、かけがえのない、とり替えることができないものであると信じ、そしてその魂を一つにあわせたときの暖かさによってもたらされるものであると信じています。」
私が沖縄知事選で立候補している喜納昌吉さんにシンパシーを感じるのは、失礼な言い方になるかも知れないが、喜納さんの行動に、高くて硬い壁に立ち向かう卵が持つ「魂の尊厳」を感じるからである。
辺野古の海に新たに米軍基地を作らせない。
多くの沖縄県民、そして日本国民がこの意思を持つ。
矢部宏治さんの新著
『日本はなぜ「基地」と「原発」を止められないのか』
(集英社インターナショナル)
の73ページに次の記述がある。
「もし今回、辺野古での基地建設を認めてしまったら、それは沖縄の歴史上初めて県民が、米軍基地の存在をみずから容認するということになってしまう。それだけは絶対にできないということで、粘り強い抵抗運動が起きているのです。」
「辺野古に基地を作らせない」と考える人々が翁長雄志氏を知事選の候補者に擁立した。
しかし、翁長氏は、仲井真知事による埋立申請承認の撤回も取消も確約しない。
「あらゆる手法を駆使して」
とか
「撤回・取消も視野に入れる」
とは言うが、
「埋立承認の撤回・取消」
を確約しない。
私は、辺野古に基地を作らせないためには、新知事が埋立申請承認を撤回または取消することが必要であると考えている。
もちろん、国による提訴を予測して、その訴訟に勝つための準備と方策は必要になるが、埋立承認の撤回・取消なしに辺野古基地建設を阻止することは難しいと考えている。
もちろん、撤回・取消なしに辺野古基地建設を阻止できるなら、それで構わない。
しかし、選挙の最大争点であるからには、選挙前に、具体策を提示することが必要だ。
その具体策を提示して、撤回・承認を確約しないのなら理解できる。
しかし、具体策もなく、しかも、撤回・取消を確約しないのは、公約として不十分、不完全である。
翁長氏が撤回・取消を確約しない理由は、翁長氏を支持する旧来の自民党支持勢力が、本音としては辺野古米軍基地建設容認の「腹」を持っているからであると推察される。
「水」と「油」が呉越同舟するには、一番の核心部分をオブラートに包んで、
「腹八分腹六分」
で「曖昧合意」するしかなかったのではないか。
そう推察される。辺野古基地建設を阻止しようとする方々には、この点の疑念を選挙前に払拭して欲しかった。
続きは本日の
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