アベノミクス解散ではなくアベコベノミクス解散
安倍首相が
「アベノミクス解散」
と発言しているようだが何かの間違いだろう。
正しくは
「アベコベノミクス解散」
である。
昨日夜、IWJのインタビュー番組に出演させていただいた。
「大義なき解散総選挙」シリーズの第9弾とのことだった。
大義のない、権力濫用解散であるが、主権者はこのチャンスを生かさねばならない。
最大の問題は、主権者の意思を正面から捉える主権者政党が不在であることだ。
「選択肢なき選挙」
の感想を持つ主権者が多いだろう。
しかし、だからと言って参政権を放棄してしまっては、敵の思うつぼである。
参政権を放棄することなく、現在の制約条件の下で、最善を尽くすことが求められる。
選挙前に政界の大再編が不可能なら、その課題を選挙後に先送りすることも考えなければならない。
2012年12月にスタートした第二次安倍政権。
スタート直後に円安と株高が実現したために、安倍政権はこれを懸命にアピールする。
株高が実現したのは、安倍政権の前任である菅直人政権、野田佳彦政権が財務省路線の財政再建原理主義に走っていたために、日本の株価が不当に低い水準に誘導されていたからである。
安倍政権は政権発足直後に、景気浮揚優先の経済政策を実行した。
この対応は間違っていなかったが、当たり前のことを当たり前に実行しただけのことである。
政策を適正化しただけで株価の大幅上昇が生じた。
米国金利が上昇し、これが円安をもたらす主原因になり、この円安が日本株価を引き上げる重要な要因になったことも事実である。
政権発足直後の円安・株高は、米国の経済動向の影響が大きいが、安倍政権の政策対応が寄与したのも事実であり、この部分は評価に値する。
この事態改善を生み出した安倍政権の政策対応が「アベノミクス」と呼ばれているが、その内容は、
金融緩和
財政出動
成長戦略
の三つとされる。
しかし、成長戦略はまだ動いていない。
要するに、アベノミクスと呼ばれるものは、単純な「財政金融政策の発動」ということなのである。
金融緩和と財政出動を同時に実行して円安・株高が実現した。
これが「アベノミクスの成果」とされているが、この政策路線はその後に大転換されてしまった。
具体的には、財政出動が超緊縮財政政策に大転換されてしまったのである。
それが、2014年4月の消費税大増税である。
消費税増税で9兆円の負担増。
さらに補正予算規模が13兆円から5.5兆円規模に圧縮された。
合計、16.5兆円の史上空前の財政急ブレーキが踏み込まれたのである。
私は、このような超緊縮財政を実行すれば、せっかく浮上しかけた日本経済が再墜落してしまうことを警告した。
政策逆噴射による日本経済撃墜を回避するべきだと強く主張した。
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しかし、安倍政権は制止を振り切って、「日本版財政の絶壁」を飛び降りたのである。
その結果、警告通り、日本経済は政策逆噴射によって撃墜された。
そして、2015年10月の消費税再増税実施が経済運営上、不可能になったのである。
つまり、「アベノミクス」の主軸であった財政出動を、超緊縮財政に転換してしまったために、日本経済を破壊し、増税先送りについて国民の判断を仰ぐ事態に追い込まれたのである。
安倍首相は「アベノミクス」をひっくり返して、これを「アベコベノミクス」にした。
その結果、日本経済を破壊してしまった。
そして、増税先送りについて国民にお伺いを立てなければならなくなった。
これが今回解散の意味である。
したがって、「アベノミクス解散」は命名上の誤りであって、正しくは「アベコベノミクス解散」なのである。
続きは本日の
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