詰め甘の あいまい公約 怪我のもと
11月16日に投開票日を迎える沖縄県知事選は、日本の民主主義の根幹を問うものになる。
沖縄県民は2010年の知事選、2010年から2014年の間に4度実施された名護市長選および名護市議選で、辺野古海岸を破壊して米軍基地を新設することを拒絶する意思を明示してきた。
現在、沖縄県知事の地位にある仲井真弘多氏は、2010年の知事選で、普天間移設先について、県外・国外を公約に掲げて当選した。
仲井真氏は現在もこの任期中にある。
この仲井真氏が昨年12月末、1月の名護市長選を目前にして、政府の辺野古海岸埋め立て申請を承認した。
万死に値する悪徳の裏切り行為であった。
仲井真氏の行動は民主主義の根幹を破壊する背徳の行為である。
そして、この悪徳の行動を教唆、扇動したのが菅義偉官房長官であると見られている。
本年1月19日に名護市長選が実施されるのであるから、少なくともこの選挙での意思表示を見守るべきであった。
現実は逆の発想によるものであり、1月名護市長選で辺野古米軍基地建設が否定される可能性があるから、その前に埋立申請承認を強行したのである。
こうした暴挙を既成事実として容認してしまうべきでない。
安倍政権が民主主義の根幹を破壊しているから、11月16日の沖縄県知事選の重要性が一段と増したのである。
沖縄では、辺野古海岸を破壊して米軍基地を建設することを阻止しようとする人々が、全力で活動を続けてきた。
最大の問題は、候補者一本化であった。
辺野古基地建設阻止を唱える候補者が複数立候補して県民の投票が分散すれば、辺野古米軍基地建設推進勢力に塩を送ることになる。
統一候補の擁立が難関だった。
しかし、辺野古に米軍基地を作らせないと公約に掲げておきながら、この公約を一方的に破棄して埋立申請を承認した仲井真弘多氏の実例がある。
県民を裏切る候補ではだめなのである。
そこで、県政野党5会派は、統一候補の選挙公約に
「埋立申請承認撤回」
を掲げることを求めてきた。
ところが、この公約への明記が外された。
そもそもの問題はここにある。
「詰め」を甘くすれば、成し遂げられることがらも成し遂げられなくなる。
翁長雄志氏は、
「腹八文目、腹六文目で公約をまとめた」
と言うが、野党5会派の要求を蹴ったのは翁長氏の側ではないのか。
この問題をめぐる情勢が急変した原因は、菅義偉官房長官の発言にある。
菅氏は辺野古基地建設問題について、
「過去の問題」
「埋立申請承認がすべて」
と言い放った。
この発言により、
「埋立申請承認撤回」問題の重要性が
飛躍的に高まったのである。
菅氏の発言がなければ、翁長氏が当選した場合、その後に辺野古基地建設阻止をどう実現してゆくかをじっくりと検討するとの説明も、幾ばくかの合理性を有する余地が生じたかもしれない。
沖縄県民の総意として、辺野古米軍基地建設阻止の意思が示された場合、安倍政権はこの立地自治体民意を無視し得ないとの説明が一定の合理性を有するからである。
ところが、この逃げ道を自ら塞いだのが、菅義偉氏発言だった。
「埋立申請承認がすべて」
と公の場で明言してしまった以上、いやおうなく
「埋立申請承認撤回」問題が
知事選最大の焦点として浮上することになったのである。
新知事が埋立申請承認を撤回しなければ、辺野古米軍基地建設阻止はまったく前に進まない。
誰にでも分かることだ。
この状況下で、翁長氏が頑なに、「埋立申請撤回」の公約化を拒絶するなら、翁長氏はすべての沖縄県民から、
「隠れ辺野古米軍基地建設容認派」
ではないかと疑われることになる。
翁長氏がこの疑惑を否定するのは簡単である。
「埋立申請承認撤回」を確約すればよいのだ。
辺野古海岸を破壊して米軍基地を建設することを阻止しようとする政党団体は、翁長氏に「埋立申請承認撤回」の確約を求めるべきである。
トリック政治=トラップ政治が横行している現在の状況を踏まえれば、選挙前に公約を厳密に「詰め」ないことは致命傷になる。
詰め甘の あいまい公約 怪我のもと
なのである。
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