消費税再増税強行主張谷垣法相の本末転倒
安倍政権の谷垣禎一法相が8月18日、長野県軽井沢町で開いた派閥研修会でで講演し、2015年10月の消費税率10%への再増税について、
「予定通り増税すべきだ」
との考えを示した。
報道によると、谷垣氏が提示した理由は次の二つだ。
「10%にもっていけない状況が生まれれば、経済政策『アベノミクス』が成功しなかったとみられる可能性がある」
「増税を中止すれば法案を再提出する必要があり、簡単なことでない」
この二つの理由で、消費税再増税を決定するべきであるとの考え方を示した。
このような考え方を本末転倒という。
日本政治の劣化が鮮明に示されている。
政治の根本に関わる問題である。
「アベノミクス」のために政治が存在しているわけではない。
また、法案を再提出するのが大変だから増税を実行するという理屈を堂々と述べるというのも仰天だ。
誰のための政治か。
何のための政治か。
こんな素朴な、しかし根源的な問題に関わる問題だ。
「アベノミクス」と騒いだのはメディアである。
国民にとって「アベノミクス」はほとんど無縁だ。
「アベノミクス」がもてはやされた唯一の理由は、2013年前半に株価が上昇したことだ。
8600円の株価が15600円に上昇した。
株価が半年で8割上がったことがもてはやされた。
それ以上でもそれ以下でもない。
株価が上昇したのは円安が進行したからだ。
円安進行もアベノミクスの成果と思われているが、実は違う。
円安が進行した主因は、米国金利が上昇したことだ。米国の10年国債利回りが2012年7月の1.38%から2013年末の3%へと急上昇した。
この米国金利上昇に連動してドル高=円安が進行した。
これに連動して日本株価が上昇した。
それだけのことだ。
菅政権と野田政権の時代に株価低迷が続いたから、2013年前半の株価上昇が際立った。
それで安倍政権人気が高まったが、ひと言で言えば、運が良かっただけ。
しかし、そんな経済は1年3ヵ月前に終了している。昨年5月から現在まで、進歩はゼロ。為替も株価もまったく動いていない。
変化があったのは、日本経済が撃墜されたことだけだ。
8月13日に発表された4-6月期のGDP統計の正確な情報を伝えるマスメディアが1社もない。
前期比年率-6.8%の経済成長率を伝えて、「想定の範囲内」との論評を伝えるだけだ。
「想定の範囲内」という言葉は、どこかのIT会社の元社長がよく発していた、ひと昔もふた昔も前の、時代遅れのフレーズだ。
GDPの数値は、発表された経済統計を集積して推計するから、経済統計を確認すれば、直前には誰でも概ね正確に予測できる。
それを「想定の範囲内」と言っている。
ほとんどのエコノミストと、マスメディアは、消費税増税の影響ははるかに小さいと言い続けていた。
まったく「想定の範囲内」ではなく、「まったく想定外」の景気墜落になったのだ。
しかも、その内容を見ると、売れ残りの激増と輸入の激減による対外収支の改善が成長率を大幅に押し上げており、この二つの要因を除く経済成長率は、なんと前期比年率16%のマイナス成長だったのだ。
この分析を伝えているマスメディアが皆無なのだ。
消費税再増税を行うかどうかを判断する基準は、「主権者の幸福」である。
国民生活にとって最適な経済政策を実行すること。
これが判断基準である。アベノミクスも関係ないし、法律を再提出するのが面倒などというのは理由になりようがない。
国民に必要な法律を制定するのが国会の役割である。一度作った法律を変えるのが面倒だと考える横着な国会議員は、直ちに国会議員をやめるべきだ。
国民は国民に必要な法律を制定するために、1人1年間に1億円もの直接給付を国会議員に注ぎ込んでいるのだ。
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