GDP報道に見る日経とNHKの救い難い劣化
昨日発表された4-6月期のGDP統計は、消費税増税に伴う影響が甚大であることを鮮明に示した。
「消費税増税の影響軽微」
の報道を展開し続けてきた日本経済新聞は、これまでの報道が「誤報」であったことを認めて謝罪するべきである。
ところが、その日経新聞が8月14日紙面で
「景気、緩やか回復続く」
の見出し記事を掲載した。
誤りを誤りとして認めることをせず、間違った主張を強引に押し通そうとする、弱い敗者に特徴的に見られる行動様式が示されている。
日本経済新聞の劣化は目を覆うばかりである。
類似した報道を展開しているのがNHKだ。
NHKは昨日の定時ニュースでGDP激減統計について、
「大都市圏とそれ以外の消費回復は二極化している」
との報道を行った。
大丸東京店の売り上げは前年同月を上回る状態が続いているが、高知大丸の売り上げは下がっていることを紹介し、大都市と比べて、それ以外の地域では所得が増えている人が少ないことが背景にあるとみられるとの声が紹介された。
日本経済新聞とNHK報道の特徴は、こうした歪んだ見解を、第三者の言葉として報道していることである。
日経新聞の場合、民間調査機関のGDP成長率見通しの数値が「緩やかな景気回復が続く」根拠として用いられている。
NHKの場合は百貨店職員の声を根拠に大都市は堅調で地方都市が停滞の見方が示されている。
いずれも、間違った場合のリスクヘッジの手法である。
あくまでも第三者の見方を紹介したまでのことだと言い逃れる準備が施されているわけだ。
経済統計を公正に見る限り、日本経済新聞もNHKもいずれも完全なる「誤報」である。
4-6月期GDP統計で経済成長率が前期比年率-6.8%となったが、この統計のポイントは、在庫急増がGDP成長率を前期比で1.0%も押し上げたことにある。年率換算では4%以上もGDP成長率を押し上げたのである。
在庫増が生産を押し上げたとはどういうことか。
経済分析の専門家でないと、その意味をすぐには理解できない。
GDPは「生産」の統計で「最終需要」の統計ではない。
4-6月期GDP統計が示した最重要のポイントは、売れ残りである「在庫」が激増して、この売れ残りを発生させた「生産」が経済成長率を4%も押し上げた点にある。
とんでもない売れ残りが発生してしまったのである。
売れ残りが出ないように生産していれば、つまり、モノの売れ行きに応じた生産が実行されていた場合、経済成長率は年率で10%以上の落ち込んだのである。
さらに、経済成長率は外需で前期比1.1%も押し上げられた。
輸入の急減が原因だが、この外需の成長押し上げ効果は今後期待できない。
この寄与を差し引くと、経済成長率の実態は年率-16%だったのである。
とんでもない日本経済崩落が生じたのである。
百貨店売上を見てみよう。
日本百貨店協会が月次の地域別百貨店売上の前年比伸び率を公表している。
http://www.depart.or.jp/common_department_store_sale/list
東京地区の売上伸び率推移は
4月 -10.8% 5月 -4.3% 6月 -4.1%
だった。
四国の売上伸び率推移は、
4月 -14.3% 5月 -2.6% 6月 -4.6%
だった。東京と四国で大差はないのである。
大丸東京店という一つの例外を用いて、大都市圏は堅調だが地方は低迷しているとの報道を展開したNHK。
NHKの劣化も目を覆うばかりである。
7-9月期のGDPは前期比では大幅プラスになる。
しかし、このような数字のトリック=偽計で消費税再増税を決められてはかなわない。
財務省の支配される日本の報道機関が日本劣化の大きな原因となっている。
前日弁連会長の宇都宮健児氏が拙著をツイッターで紹介下さった。
「大分の実家に帰省中に読んで良かった本を紹介します。『日本の真実〜安倍政権に危うさを感じる人のための十一章〜』(植草一秀著、飛鳥新社)。「戦争と弱肉強食」社会を作ろうとしている安倍政権の実態と日本社会の構造的問題点がよく分かる本です。」
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記して深く感謝の意を表したい。
について、良質な情報を提供する報道機関であるデータ・マックス社
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追加で、当方からデータマックス社を通じて読者プレゼントを提案したく考えているのでご期待賜りたい。
続きは本日の
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