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2014年8月22日 (金)

国と自治体は土砂災害警戒区域を一斉点検せよ

各地で発生するゲリラ豪雨が甚大な被害をもたらしている。


広島の土砂災害では多くの犠牲者が発生し、いまなお行方の分からない市民が多数存在するとともに、1000人を超す市民が避難生活を余儀なくされている。


犠牲になられた方々のご冥福を祈るとともに、行方不明者の一刻も早い救出と被災者に対する万全の生活支援が望まれる。


時間雨量が50ミリを超える、いわゆるゲリラ的な豪雨はかつてはあまり観測されなかったが、ここ数年、非常に高い頻度で発生するようになった。


こうしたゲリラ豪雨が数時間にわたって同一地域で発生すると、今回のような土砂災害はいつでも再現され得る。


昨年の10月には台風26号に伴う豪雨が伊豆大島を襲い、東京都だけで37名の死者と3名の行方不明者が発生した。


同じような災害は、日本全国のいずれの場所でも発生し得る。


時間雨量の程度、土壌の種類及び状況、地形によって、今回と同じような土砂災害が発生し得る箇所は日本全国に多数存在する。


日本の住環境の厳しさから、こうした、土砂災害の危険のある土地の上に住居を構えなければならない事情がある。


2009年7月に発生した山口豪雨では、土石流が特別養護老人ホームに流れ込み、高齢者12名が犠牲になる被害が発生したが、この特別養護老人ホームは川の合流地点に立地していた。


土木工学の知見をもとにすれば、50ミリを超す時間雨量が3時間以上継続して発生するようなゲリラ豪雨が観測される場合に、どの地域にどの程度の被害が生まれるかを、あらかじめシミュレーションすることができる。


こうした災害に関する情報を、平時に広く流布して浸透させることが、人的な大参事を防ぐうえで不可欠である。

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南海トラフ地震などのシミュレーション調査に膨大な国費が投ぜられ、影響調査と防災対策が検討されているが、こうした大地震対策よりも、より身近で切実な豪雨による土砂災害に関する調査と情報提供が遅れているのではないか。


広島市では1999年6月に、今回のような崖崩れなどが発生し、20人が死亡する大災害が発生している。


この災害をきっかけに、土砂災害防止法が2001年に施行されたのだが、その教訓が十分に生かされなかった。


今回の土砂災害で最も大きな被害を受けた広島市安佐南区の2つの地区については、広島県が9年前に土砂災害警戒区域に指定しようと現地調査を進めながら、調査が白紙に戻されていたことが判明した。


土砂災害警戒区域に指定されていれば、住民の土砂災害に対する日常の警戒心がまったく違うものであったと考えられる。


大雨の予報や大雨警報の段階で、予防的な非難を実行する住民の数は格段に多くなったはずである。


土砂災害が発生しても、住民が災害が発生する前に、安全な場所に避難を終了させていれば、人命が失われる事態を回避することが可能になる。


建造物は修復可能だが、一度失われた命を修復することはできない。


平時におけるリスク管理が極めて重要な意味を持つ。

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今回の土砂災害で、被害が大きかった地区のうち、警戒区域に指定されていたのは広島市安佐北区の1か所だけだった。

広島県は、「過去に災害の被害があった地域を優先した結果、警戒区域に指定する作業が後回しになってしまった」と説明していたが、広島県が記録を調べ直したところ、今回の土砂災害で最も被害が大きかった安佐南区の八木と緑井の二つの地区で、2005年度に土砂災害警戒区域の指定に向けた現地調査が行われていたことが判明した。


土砂災害警戒区域に指定されれば、地下には強い下方圧力がかかる。


土地所有者にとっては保有資産の時価下落の要因になるわけで、警戒区域の指定を望む者は少ないだろう。


また、住宅建設業者にとっても、土砂災害警戒区域の指定は、営業上の不利益をもたらすことが多いだろう。


こうした利害関係が、土砂災害警戒区域指定の妨げになっているとすれば問題である。

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台風による被害と異なり、ゲリラ豪雨の場合には、事前に確度の高い情報を提供することが難しい。


積乱雲は急速に発達し、ゲリラ豪雨に見舞われる地域はごく狭い場所に限られる場合も多く、しかも、こうしたゲリラ豪雨が深夜に発生する場合、住民が事態を正確に知ることも難しく、また、豪雨のなかでの避難も容易ではない。


国や地方自治体は、全国規模で土砂災害のリスクのある地域の特定を急ぐべきである。


地区指定をすることよりも、住民に対して現実のリスクを正確に伝えることが重要である。


近年の日本の気候変動の急変を踏まえれば、居住地を定める際に、ゲリラ豪雨による土砂災害の発生可能性を十分に点検することが必要になる。


基本的に土砂災害のリスクの大きな場所には居住しないことが重要であるが、やむを得ず、リスクのある地域に居住する場合には、常に大雨に対する情報入手と早期の避難措置などをいつでも取れる体制を構築することが必要である。


巨大な災害の教訓を今後に確実に生かしてゆく対応が強く求められる。

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