株価上昇の先にある大きなリスク
会員制レポート『金利・為替・株価特報』では、すでに5月12日号で日本の株式市場見通しを下落から上昇に転換している。
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
レポートでは昨年11月に、年内株価は急伸だが、年初以降は株価下落の可能性が高いとの予測を記述してきた。
昨年末、金融市場では日本の株価について強気一色の見通しが広がっていたが、本レポートでは年初来の日本株価下落見通しを示してきた。
実際に、日経平均株価は昨年12月30日に16291円でピークを記録して、年初来、下落傾向をたどった。
安倍晋三首相は昨年12月30日の東証大納会で、
「アベノミクスは来年も買い」
と宣言したが、皮肉なことに、この発言の日が株価最高値になってしまった。
日経平均株価は4月11日に13960円に下落。5月19日には14009円の安値を記録した。
このなかで、『金利・為替・株価特報』では、5月12日号で、日本株価見通しを「下落」から「上昇」に転換した。
消費税増税の影響は深刻に広がっている。
この影響で日本株価は下落基調をたどった。
しかし、株式市場は消費税増税の影響を織り込んだ。
逆に、このなかで際立っているのが、日本株価の「割安さ」である。
私は適正株価水準の算定の中軸に、株式益利回りと債券利回りとの比較を置いている。
リスク資産である株式の利回りと安全資産である債券利回りの較差=リスクプレミアムの標準値を3%と置いて適正株価の算定を行っている。
この視点に立つと、日経平均株価は24000円水準であって不当でない。
消費税大増税等の影響で日本株価は著しく安い価格に暴落してきたのである。
しかし、消費税増税の影響が株価に織り込まれてしまうと、それ以上の株価下落は生じにくくなる。
安すぎる株価は適正水準に戻ろうとする力を受けるが、株式市場の環境がフォローでないと、株価修正は生じにくい。
日本の株式市場を取り巻く環境が、日本株価に対してフォローの状況が生じれば、日本株価の大幅上昇の可能性も浮上する。
抑えなければならないリスクファクターは、米国の金融引締め政策=金利上昇=米国株価調整、世界の地政学リスク、中国経済金融動向などであり、これらを考察して日本市場のゆくえを見定める必要がある。
詳しくは、『金利・為替・株価特報』をご参照賜りたい。
日本では4月の消費税増税の影響を株式市場はすでに織り込んだ。
日本経済新聞は「消費税増税の影響軽微」のキャンペーンを展開してきたが、現実の影響は甚大だった。
家計調査で示された5月の実質家計消費は前年同月比で8.0%の激減となった。
1989年の消費税導入期、1997年の消費税増税期と比較しても、はるかに深刻な消費の減退が観察されているのである。
百貨店売上も4月に前年比-12.0%の激減を示したのち、4月は前年比-4.2%だったが、5月には-4.6%と減少率が拡大してしまった。
消費税増税の影響は深刻に広がっており、4-6月期のGDP成長率は大幅マイナスを記録した可能性が高い。
「消費税増税の影響軽微」の情報は虚偽であり、実際には「消費税増税甚大」である。
この虚偽の情報が流布されている背景に、財務省による情報統制=TPRが存在する。
財務省はマスメディアに圧力をかけて、消費税増税の影響が甚大であるとの真実を流布しないよう、「指導」しているのだ。
日本経済新聞は率先して政府の御用報道を展開しているのだと考えられる。
消費の回復には時間がかかると考えられる。
消費が回復しない大きな要因として、実質所得の減少をあげられる。
家計調査は、6月の勤労者世帯の実収入が実質で前年比-6.6%となったことを示した。
名目所得は小幅増加に転じているが、インフレ率が上昇し、個人の実質所得が減少している。
消費税率が引き上げられた上に、実質所得が大幅に減少しているのだから、個人消費が伸びるわけがない。
日本国民の生活は極めて厳しい状況に追い詰められている。
今後のポイントは、2015年10月の追加増税を実施するのかどうかに移る。
この点に関して重大な問題は、安倍政権が追加増税の判断を8月に発表される4-6月期GDP統計を見て判断するのではなく、11月17日に発表される7-9月期GDP統計を見て判断するとしていることだ。
4-6月期のGDP成長率は大幅マイナスとなり、7-9月期GDP成長率は反動で大幅プラスになることがいまから分かっている。
そのプラスに発表される数値をもとに増税を判断するというのは、政策判断姿勢として著しく偏っている。
「増税ありき」の手順設定なのだ。
続きは本日の
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