STAP細胞問題は個人問題でなく政府機関問題
STAP細胞騒動が続いている。
学術論文としての適格性を欠いていることは明白になっている。
最大のポイントは結論が真実であるのか否かであるが、客観的に立証できていることをもって「真実の発見」、「真実の摘示」であるとするわけだから、現状ではSTAP細胞は単なる「仮説」の域を出ていない。
「200回以上作製に成功した」
と発言しても、客観的なデータ等の開示がない限り、意味を持たない。
世間では小保方氏擁護論と批判論が存在するようだが、少なくとも、すでに公表されている客観データからは、小保方氏擁護論は成り立ちようがない。
個人の好き嫌いの感情を持つことは自由だが、「科学」の研究成果としての評価においては、責任を問われる問題が多すぎる。
小保方氏の博士論文の内容精査を含め、関係各部署は早急に適切な対応を取る必要があるだろう。
しかし、問題は、小保方氏の個人的な責任に留まるものではない。
ネイチャー誌に投稿された、「世紀の大発見論文」の共著者は多数存在するのであり、これらの共著者は連帯して責任を負う存在である。
また、この研究には理化学研究所を通して巨大な国費が投入されている。
このことから、単なる民間の問題ではなく、国民が厳しい監視の対象としなければならない機関の問題でもある。
日本政府は財政危機を叫び、日本の主権者に巨大な負担を押し付けている。
消費税は租税負担能力のない国民にも税負担を強制する、言わば「悪魔の税制」である。
この「悪魔の税制」で巨大な税負担を国民に強制する一方で、政府支出が杜撰に管理されることは許されない。
巨大な国費投入機関である理化学研究所を舞台にした深刻な不祥事であるとの視点で、問題を捉える必要がある。
理化学研究所の予算規模は理研のサイトによると2013年度で844億円に達している。
http://www.riken.jp/about/facts/
人員は2013年4月1日現在で3390名である。
2012年度の収入決算金額は988億円であり、そのうちの太宗である850億円程度が補助金収入である。
つまり、年間850億円の血税が注ぎ込まれ、利権の運営が行われているのである。
小保方氏の研究ユニットの研究室が、美しい内装で装飾され、ムーミンのキャラクターの意匠までデザインされていたが、税金を投入してこれらの内装を施すことが適正であるのかを考えるべきである。
一方で、国は生活困窮者に消費税負担を強制している。
所得がなく、生活が苦しく、餓死する者までもが存在するなかで、巨大な血税を投入して、ムーミンの意匠デザインに注ぎ込むのが適切なのか。
そのような視点で問題を考える必要がある。
研究室の内装工事は小保方氏がユニットリーダーに就任した時点で実施されたと記者会見で説明されたが、その時期が具体的にいつであったのかについての問いはなかった。
巨大な政府予算を「ばら撒く」ために、全体が「演出」されてきた疑いが濃厚なのである。
「2位ではダメなんでしょうか」
のフレーズが、科学技術振興予算を聖域化するための「印籠」の如くに用いられてきた感が強いが、政府予算の水膨れ体質は、極めて深刻な状況に立ち至っている。
神戸に所在する理化学研究所:発生・再生科学総合研究センターを安倍晋三氏が訪問したのは本年1月11日のことである。
神戸新聞サイトに、同研究センターを訪れた安倍首相が笹井芳樹副センター長、野依良治理研理事長、山中伸弥京都大教授と共に写る一枚の写真が掲載されている。
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201301/0005663243.shtml
理研がネイチャー誌に投稿したSTAP細胞論文についての記者会見を開いたのが1月28日のことだ。
このニュースをNHKは大々的に報道した。
他のメディア各社も同様の取り扱いをした。
これは「予定されたイベント」であり、安倍首相の理研訪問も、このスケジュールを織り込んだうえでのものであったと考えられる。
安倍政権は
女性の社会進出促進
科学技術の振興
を「成長戦略」のひとつの柱、目玉にしようと考えてきた。
そのシナリオのなかに、STAPが重要なコンテンツとして盛り込まれていたわけだ。
ところが、これが、とんでもない代物だった。
少なくとも、現段階では、STAPは海千山千のたぐいのひとつに過ぎない。
問題は、国家予算が杜撰にばら撒かれていることである。
国に金が余り、金の処分に困っているというなら、こうした事態も理解できなくもない。
しかし、現実には、財務省は、日本がいつギリシャのような事態に追い込まれるか分からないと叫び、庶民に悪魔のような重税を強制しているのである。
このバランスの欠如が、ほとんど犯罪的なのである。
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