執拗に繰り返される消費税増税影響軽微の報道
消費税増税が実施されて1ヵ月が経過した。
マスメディアの報道は、
「消費税が増税されたが消費等への影響が軽微である」
とのトーンで染め抜かれている。
報道番組ではエコノミストが登場して解説するが、ほとんど意味のない発言を繰り返して、消費税増税の影響が軽微であることを強調する。
背後には財務省による世論操作プロジェクト=TPRが存在する。
消費税増税が実施されても、もともと需要が供給を超過しているような財サービスでは、引き続き需要が所得を上回ることがある。
需要が減少しても、なお供給水準を上回ることはあるからだ。
JR九州は鉄道事業にさまざまな創意工夫を凝らしている。
豪華寝台列車「ななつ星 in 九州」
博多と湯布院を結ぶ特急「ゆふいんの森」
九州西海岸を走る「動くレストラン」の観光列車「オレンジ食堂」
など、ユニークな観光事業を展開している。
こうした斬新な商品がゴールデンウィークにかけて、売り切れになるのは当然のことだ。
こうした事例をあげて消費税増税の影響が軽微というのは、
「木を見て森を見ず」
の典型である。
ファミリーレストランが好調の声もあるが、その背景を単純化して理解するのは誤りである。
2013年前半の株価上昇で経済楽観論が広がった。前年比でファミレスの売り上げが伸びたのは事実である。
しかし、消費税増税が実施されて、景気が下向きになれば、ファミレス消費は減少に転じるだろう。
また、単価の高い外食を控えて、ファミレスに移行した消費者も存在するだろう。
このケースでは、経済の悪化がファミレス消費を増大させる。
ファミレス消費の動きで消費税増税の影響など計れない。
消費税増税の影響を見るなら、
住宅投資
自動車購入
宝石・高級時計などの高額品
の動向を見るのが一番よい。
これらの支出が、この4月以降もほとんど減少していないなら、
「消費税増税の影響軽微」
と言ってよいだろう。
しかし、現実には、これらの分野で支出水準は激減しているはずだ。
消費税増税の影響は小さくないのである。
それにもかかわらず、マスメディアが口を揃えたように、消費税増税の影響が小さいとの報道を展開しているのは、裏側で口を揃えさせている者が存在するからだ。
それが財務省のTPRである。
消費税増税の経済への影響は、消費や住宅投資などの統計数値を集計して計測しない限り、はっきりしたことは分からない。
ガソリン消費が4月上旬は落ち込んだが、最近になって前年と変わらぬ水準に回帰しているとの声を、これまた、消費税増税の影響が小さいというために使われているが、あまりに劣悪な放送だ。
増税前に満タン給油をしても、毎日ガソリンを利用する利用者が、ガソリンが空に近付いて、給油に来るのは当たり前のことだ。
皆が同時に3月末にガソリンを満タンにしたなら、その反動が4月下旬以降に表れてもおかしくない。
都合のよい数値だけを紹介しているに過ぎない。
これらの報道に協力するマスメディア、そして、エコノミストは恥ずかしい存在だ。
孫崎亨氏の『小説外務省』(現代書館)
に、コメンテーターとして頻繁にテレビに登場したという人物の言葉が紹介されている。
「学者はね、テレビに出るでしょう。それで自分の意見を述べるでしょう。一発で駄目。テレビには番組の筋書きがある。その筋書きで話をしてくれなきゃ、さよなら!よ。僕なんか、テレビが話してくれと思っていることを話す。だから最も需要があるわけ」
コメンテーターは役得がある。
テレビの出演頻度が増すと、比例して講演の仕事が増える。
商売としてコメンテーター稼業にいそしむ人種は、孫崎氏が紹介するコメンテーターの流儀を確実に守る。
こんな輩が跋扈(ばっこ)しているのが現実だ。
日本の既得権益は、日本国民がメディアコントロールに極めて弱いと判断している。
国政選挙で完全に味をしめた。
メディアの誘導に日本国民は乗る。
彼らはこう考えている。
そこで、
「消費税増税の影響は軽微」
という巨大な洗脳活動が展開されている。
その影響は決して侮れないのである。
(訂正とお詫び)
昨日付記事で紹介した
『自由からの逃走』(東京創元社)
の著者名をデイビッド・リースマンと記述しましたが、エーリッヒ・フロムの誤りですので訂正してお詫びします。
デイビッド・リースマンが著した
『孤独な群衆』(みすず書房)
には、社会状況に左右される人間の価値意識や物の見方が鋭く解析されている。現代日本を理解する上でも必読の古典的名著のひとつだろう。
続きは本日の
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