『美味しんぼ』騒動がもたらした巨大な啓蒙効果
放射線被ばくが健康被害をもたらすとしても、全員にその被害が生じるわけではない。
ここが大事なところだ。
大半の人々には目立った変化が生じなくても、変化が生じる人の比率が上昇することが問題なのだ。
「福島に行ったが鼻血が出なかった」
と言う人が多くいたとしても、そのことは、
「福島の放射能汚染が問題を引き起こしてはいない」
ことを証明する根拠にはならない。
問題は、影響が具体的に生じている人の比率が上昇することにある。
したがって、「鼻血が出る」人が現実に存在し、その比率が原発事故前よりも上昇しているなら、これは重大な事実である。
その事実の確認は容易でない。
だが、現に、「鼻血が出た」人が存在することが事実であり、また、「鼻血が出る人はたくさんいる」との発言を示した人物が存在することが事実であるなら、その事実は、極めて重要な意味を持つ可能性を秘める。
言論の自由、出版の自由は、こうした「事実の記述」に制限をかける、弾圧することと矛盾する。
『美味しんぼ』の作者は、2年間にわたる福島での取材をもとに、この作者の目を通して得たものを、漫画作品として表出しているのであって、この言論活動に制限をかける、あるいは、弾圧することは、政治権力の行動として間違っている。
ウェブ上に、
「総統閣下が「美味しんぼ」鼻血問題でお怒りのようです」
と題する映像が配信されている。
秀逸な作品であるので、拡散いただきたいと思う。
『美味しんぼ』作者の雁屋哲氏は、強い信念と行動力をもって対応している。
これに対して、石原伸晃環境相が、安易な批判を展開したことが、結果的には、重要事実を日本中に流布させる契機になった。
石原氏は
「鼻血と原発事故の因果関係は否定されている」
との見解を示したが、この見解が正しくない。
学者の一部が述べていることは、
「低線量被ばくで鼻血がでることはない」
という一つの「見解」であって、
「実際に被ばくして鼻血が出た」
という現実があるなら、その事実を否定することはできない。
昨日付の記事で紹介したチェルノブイリ原発事故関連でのアンケート調査結果を見る限り、
「原発事故で鼻血を流す人が増えている」
という現実は、否定しようがないように思われる。
「風評被害」
という言葉が安易に用いられるが、「鼻血が出る」という現実があるなら、その事実をありのままに述べて生じる影響は、
「風評被害」
ではない。
「事実」と「事実に基づく影響=被害」
である。
「旅館の予約がキャンセルされた」
のは風評被害ではなく、「事実」に基く影響である。
旅館は被害者であるが、加害者は雁屋哲氏ではない。
加害者は原発事故を引き起こした国と東京電力である。
旅館予約のキャンセルによって、旅館に被害が生じるのであれば、その被害を補償する責任は国と東京電力が負うべきであって、その負担を雁屋哲氏にかぶせようとすることは、論理のすり替えでしかない。
『院長の独り言』ブログの5月13日付記事
「美味しんぼ」大阪府が言論封殺行為」
http://onodekita.sblo.jp/article/96472463.html
のコメント欄に紹介されていたが、「美味しんぼ」騒動が勃発すると、産経新聞が次の記事を掲載したことが紹介されている。
"低線量被曝が原因で鼻血が出ることは、科学的にはありえない”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140513-00000112-san-soci
続きは本日の
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