チェルノブイリの鼻血問題に関する報告
「美味しんぼ」鼻血騒動が続いているが、日本の政治権力の言動は、力による言論封殺でしかない。
「原発推進者の正体」がはっきりと表れたものである。
「美味しんぼ」作者の雁屋哲氏は自身のブログに次のように記述している。
「私は自分が福島を2年かけて取材をして、しっかりとすくい取った真実をありのままに書くことがどうして批判されなければならないのか分からない。
真実には目をつぶり、誰かさんたちに都合の良い嘘を書けというのだろうか。
「福島は安全」「福島は大丈夫」「福島の復興は前進している」
などと書けばみんな喜んだのかも知れない。
今度の「美味しんぼ」の副題は「福島の真実」である。
私は真実しか書けない。」
正論そのものである。
雁屋氏はさらに続ける。
「自己欺瞞は私の一番嫌う物である。
きれい事、耳にあたりの良い言葉を読み、聞きたければ、他のメディアでいくらでも流されている。
今の日本の社会は「自分たちに不都合な真実を嫌い」「心地の良い嘘を求める」空気に包まれている。
「美味しんぼ」が気にいらなければ、そのような「心地の良い」話を読むことをおすすめする。」
日本の言論空間が汚染されている。
除染が必要なのは、この汚染された情報空間である。
情報空間が汚染されていることを認識し、この情報空間に「真実」の情報を提供しようと努力する人々がいる。
私の活動もその一部である。
マスメディアでは、東京新聞=中日新聞、北海道新聞、日刊ゲンダイなどが、孤軍奮闘の活動を展開している。
雁屋氏は、自らの足で2年間にわたって福島で取材し、その取材で確かめた真実を「美味しんぼ」で情報発信している。
「鼻血が出た」という話を取材で得たことも真実であるし、「鼻血が出たと話した人がたくさんいた」との話を聞いたことも真実である。
30万部の販売部数を誇るコミック誌に連載されている人気漫画であるから、原発推進者は慌てたのである。
しかし、権力の力によって言論封殺をすることは、完全に間違っている。
その権力と一体化して雁屋氏を攻撃する市民の態度も間違っていると言わざるを得ない。
「チェルノブイリ子ども基金」前代表で月刊誌「DAYS JAPAN」編集長チェルノブイリにおける鼻血問題について、貴重なデータを開示された。
レーバーネットサイトが、公表されたアンケート結果文書のPDFファイルを公開されているので、ぜひご熟読いただきたい。
http://www.labornetjp.org/files/0514days
1993年~1996年にかけて、広河氏とチェルノブイリ子ども基金は、チェルノブイリ原発の避難者2万5564人に対して、健康状況に関する独自のアンケートを行ったという。
その結果では、5人に1人が鼻血を訴えている。
アンケート結果の一部を紹介する。
●プリピャチ市(原発から約3キロ)の避難民アンケート
回答者9501人
「事故後1週間に体に感じた変化」
という質問に、人々は次のように答えた。
頭痛がした 5,754人 60.6%
吐き気を覚えた 4,165人 43.8%
のどが痛んだ 3,871人 40.7%
肌が焼けたように痛んだ 591人 6.2%
鼻血が出た 1,838人 19.3%
気を失った 880人 9.3%
異常な疲労感を覚えた 5,346人 56.3%
酔っぱらったような状態になった1,826人 19.2%
その他 1,566人 16.5%
「その人々の事故から約10 年後の健康状態」
健康 161人 1.7%
頭痛 7,055人 74.3%
のどが痛む 3,606人 38.0%
貧血 1,716人 18.1%
めまい 4,852人 51.1%
鼻血が出る 1,835人 19.3%
疲れやすい 7,053人 74.2%
風邪をひきやすい 5,661人 59.6%
手足など骨が痛む 5,804人 61.1%
視覚障害 2,773人 29.2%
甲状腺異常 3,620人 38.1%
白血病 50人 0.5%
腫瘍 440人 4.6%
生まれつき障害がある 34人 0.4%
その他 1,715人 18.1%
武田邦彦氏は5月10日付記事に次のように記述している。
http://takedanet.com/2014/05/post_32bc.html
「今、甲状腺がんは100倍とされ、思春期の子供の急性白血病が増加していること、二本松市の死亡者数が20%以上も増大していることなど、日本人として関心を持たざるを得ないことが起こっている。」
雁屋哲氏の指摘は、安倍晋三氏にとって「極めて不都合」な内容を含んでいる。
これでは、
「フクシマの状況は完全にコントロールされている」
ことにはならなくなってしまうからである。
「「鼻血が出る」が真実でない」
ことを立証するのは簡単なことではない。
テレビメディアは、福島の医師を登場させて、
「鼻血が出るという話は聞いたことがない」
と発言させる。
しかし、たった一人の医師がこのように発言したことは、
「「鼻血が出る」が真実でない」
ことを立証する根拠にはなっていない。
続きは本日の
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