PC遠隔操作事件での警察検察裁判所の重大犯罪
パソコン遠隔操作事件で威力業務妨害罪などにより起訴された片山祐輔氏は、1年以上もの長期にわたって東京拘置所に勾留されていたが、ようやく3月5日に保釈された。
日本の刑事裁判制度の重大な欠陥が露わになった事例のひとつである。
片山氏が逮捕されたのは昨年の2月10日だった。
片山氏は1年以上の長期にわたり身体の自由を奪われたことになる。
報道されている情報によれば、検察側は決定的な証拠を掴んでいない。
「犯罪の証明」はまったくなされていない。
そして、さらに重大な事実は、警察・検察は、片山氏を逮捕する前に、この事案において、4人の市民が逮捕され、その一部が起訴されるという事態が生じたことである。
そのすべてが、誤認逮捕、誤認起訴であった。
しかも、警察は誤認逮捕した市民から、全面自白の調書まで取り付けていた。
完全無実の人間が自発的に自白調書の作成に応じるわけがない。
自白調書の作成を強要したか、あるいは利益誘導したということになる。
片山氏の保釈については3月4日に東京高裁が保釈決定を示したが、検察が抗告して保釈が停止された。
ところが、高検が行うべき抗告を地検が行なっていたことが判明し、高検が再度抗告したが、高裁はこれを認めず、片山氏の保釈が実現した。
犯罪の証明が極めて不確かな事案で、片山氏は1年以上にわたって身体の自由を奪われてきた。
しかも、接見禁止措置が取られていたために、外部の情報と接することも遮断されてきた。
一連の経過は、日本が人権蹂躙国家であることを明白に物語っている。
日本の警察・検察・裁判所制度は、いまなお、前近代の暗黒の時代にとどまっているのである。
日本国憲法には次の条文がある。
第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
○2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
○3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
身体の自由は、基本的人権のなかでも、もっとも根源的なものである。
18世紀的人権、19世紀的人権、20世紀的人権という表現がある。
自由権が18世紀的人権、参政権が19世紀的人権、生存権が20世紀的人権と表現される。
身体の自由は人間の最も根源的な基本的人権なのである。
片山氏および弁護士の説明を聞く限り、犯罪の立証は客観的になされていない。
有罪と無罪の分かれ目はどこにあるか。
その根拠となる法律条文は次のものである。
刑事訴訟法
第三百三十六条
被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。
有罪の認定は「犯罪の証明」による。
「犯罪の証明」がない場合は、無罪の判決が言い渡されなければならない。
ここで問題になるのが「犯罪の証明」である。
「犯罪の証明」の程度が問題になる。
この点について最高裁判例が示していることは、
「刑事裁判における有罪の認定に当たっては,合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要である。」
というものである。
「犯罪の証明」について、合理的な疑いを差し挟む余地があれば、裁判所は無罪の判決を言い渡さなければならない。
これが「疑わしきは被告人の利益に」という大原則なのである。
しかし、日本の警察・検察・裁判所の現実は、こうした憲法および法令の定めに反する「前近代」の状況そのものなのである。
「前近代」の意味を一言で表現するなら「法の支配」が実現していないことである。
PC遠隔操作事件では、誤認逮捕された被疑者がうその自白調書作成に追い込まれている。
このこと自体が、日本の警察・検察取調べの前近代性を如実に示しているのである。
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