消費税増税の影響限定的との情報を信用できるか
1997年の消費税増税の際も、今回とまったく同じ情報操作が行われた。
情報操作が行われているのは、まぎれもない事実である。
ある主体が明確な意図をもって情報操作を実行しているという事実が存在するからだ。
ある主体とは財務省である。
明確な意図とは、ただひとつ。
増税を実現することである。
増税さえ実現してしまえばあとはどうなろうと構わない。
増税の実現が目的なのであって、増税の影響でどのような問題が生じようが、財務省にとって大きな問題ではないのである。
財務省は旧大蔵省の時代に、TPRという名称のプロジェクトを創設した。
1885年のことだから、いまからもう30年近くも前のことになる。
TPRというのは、TAXのPRという意味で、増税を実現するための情報工作活動を実施するプロジェクトであった。
私は当時、大蔵事務官として大蔵省に勤務していた。
そして、私が在籍した大蔵省財政金融研究所研究部が、このプロジェクトの事務局を担当することになった。
私は末端の職員として、このプロジェクトの創設に関わったから、財務省=旧大蔵省の情報工作活動の実態を直接見聞している。
私が大蔵省を離れるとき、このプロジェクトを担当した直属の上司から、はなむけとしていただいたのは次の言葉である。
「植草さん、国家公務員には守秘義務がありますから。」
特定秘密保護法が施行されると、こうした事実を主権者に伝えることも処罰の対象になるかも知れない。
主権者は国民で、国民は主権者として行政のすべてを知る権利を有している。
それにもかからわらず、行政機構が事実を隠ぺいして主権者である国民には知らせず、これを知らせること、あるいは、これを知ろうとすることを、懲役刑をもって処するというのが特定秘密保護法である。
憲法違反の暴法であるとしか言いようがない。
TPRのプロジェクトが創設されたのは、当時の中曽根康弘政権が、「売上税」という名称の大型間接税の導入を目論んだからである。
プロジェクトが発足した当初は、まだ「売上税」という名称が決まっていなかった。
プロジェクトでは、これを「KBK」という符牒で表現していた。
KBKとは
課税(K)ベース(B)の広い間接税(K)を略したものだった。
TPRの具体的な活動として実施されたもののうち、主要なものは次の三つだった。
第一は、3000人リストの作成とその全員への説得工作
第二は、メディア全般に対する「働きかけ」
第三は、メディア情報の「監視」
この三つが大蔵省の全省的活動として実行されたのである。
こうしたTPR活動によって、メディアを通じて提供される情報は歪むことになる。
冒頭に記したことがらも、その一環である。
景気回復が持続しており、消費税増税の影響は軽微にとどまるとの「風説」が積極的に流布された。
今回もまったく同じ情報統制が実施されている。
日本経済新聞は1月5日付朝刊の一面トップに、
「増税影響「限定的」52%」
の見出しを躍らせた。
消費税増税の影響は軽微であるとのイメージを刷り込むための情報活動の一環であると推察される。
実際に97年度の現実はどのようなものだったのだろうか。
97年4-6月期と7-9月期の推移にその影響がくっきりと表れた。
生産活動自体は、97年4-6月期にさほど落ち込まなかったのである。
理由は、企業が、「消費税増税の影響は軽微」との情報を鵜呑みにして、生産活動を引き下げなかったからである。
ところが、製品の販売には激しい影響が生じた。売り上げが激減したのである。
生産を減らさずに販売が落ち込めば在庫が膨れ上がる。
企業サイドは在庫急増の現実を目の当たりにして、生産活動を抑制していった。
消費活動は消費税増税を境に急激な悪化傾向を示し、これが企業の生産抑制を誘導して、日本経済は大不況に突入していったのである。
したがって、今回も情報空間で流布される情報を鵜呑みにしてはいけない。
情報空間を占有する情報の多くが汚染されている。
日本においては、放射能だけでなく、情報空間の情報に関する除染活動も極めて重要になっている。
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