安倍晋三政権を震撼させた名護市長選の大敗
基地問題を考える際に、何よりも重視するべきことは地元自治体の意思である。
1月19日の名護市長選は、辺野古海岸を破壊して巨大な軍事基地を建設することの是非について、地元の名護市民が判断を示す最重要のイベントであった。
安倍政権はこの市長選に照準を定めて行動してきた。
沖縄県では県を挙げて、普天間の県外・国外移設を求めてきた。
そのなかには、仲井真弘多知事も含まれてきた。
仲井真弘多氏は2010年の知事選においても、県外移設を公約に掲げてきたのである。
「普天間の固定化」、「沖縄の負担軽減」、「普天間の危険性除去」
などの言葉が常套句として用いられるが、普天間を閉鎖し、辺野古に基地を作らなければよいだけのことだ。
辺野古に基地を作らなければ普天間を閉鎖しないというのは、米国の言い分であって、日本政府がこれに同調する必要はない。
米国に対して、辺野古とは切り離して普天間の返還を求めればよいだけのことである。
日本が米国の植民地で、日本政府は米国に隷従するしかなく、独立国として当然の主張さえ示すことができないというのなら話は別だが、日本は独立国であるとの前提に立って考えるなら、その主張を米国に示すことは当然のことである。
名護市民は、辺野古海岸を破壊して米軍基地を建設することに対して、明確にNOの意思を示した。
安倍政権は市長選では建設支持派が4割以上もの得票を得たから、この意向を尊重すべきだとの見解を示しているが、ご都合主義はほどほどにするべきだ。
国政において、主権者の強い反対のある施策について、国会における「数の論理」を振り回して横暴な政治運営をしているのは、どこの誰かをよく考えてからものを言うべきである。
辺野古に基地を作ることについて、何よりも重視されなければならないことは、名護市民の意思である。
その名護市民が基地建設にNOの意思を示した。
この選挙を受けて、基地建設強行はあり得ない選択である。
安倍政権は名護市長選挙の結果が判明したにもかかわらず、直ちに基地建設を強行する姿勢を示している。地方自治の本旨、民主主義の根幹に反する行為である。
安倍政権は名護市長選で基地建設推進の候補を勝利させるために全精力を注いできた。
この過程で、仲井真弘多知事は、県民を裏切る背徳の辺野古埋め立て申請承認に突き進んだ。
徳洲会の選挙違反事案で仲井真氏は揺さぶられたのだろう。
哀れな行動である。
1月19日の名護市長選の結果を確認してから埋め立て申請を判断するのが当然の手順ではないか。
どのような弱みを握られているのか知らないが、県民を裏切り、魂を売り渡すような埋め立て申請承認に踏み切ったことで、仲井真氏は晩節を汚した。
埋め立てを既成事実化して、札束で頬を叩けば、名護の市民など、基地建設に賛成に回ると読んでいたのだろう。
しかし、名護市民はこの策略に籠絡されなかった。
その判断は見事というほかない。
沖縄の叡智が日本を変える原動力を与えることになるかも知れない。
基地問題と原発立地問題は重なる部分が多い。
誰もが嫌がるものを金の力で押し付けるという構図は、基地と原発に共通する。
日本を滅亡させる一歩手前の状況を生み出した東電福島原発事故。
これだけの惨事が広がったのに、日本全国の原発立地自治体で、原発ゼロの運動が広がらない。
福島県などでは、この状況下で、原発を推進する自民党の候補者が国政選挙で当選を果たしている。
金の力の威力というべきだろう。
名護市長選では、露骨な合法的買収活動が展開された。
500億円などの数字が飛び交い、金の力で住民をねじ伏せる動きが本格化した。
しかし、名護市民はこの恫喝、買収工作に打ち克った。
ここが賞賛に値する点である。
三つの重要な点を指摘できる。
第一は、名護の市民が札束に動かされず、未来への正しい判断を示す矜持を示したこと。
第二は、市民の正しい判断を誘導する適正なリーダーが存在したこと。
第三は、メディアが社会の木鐸として真実の情報を提供したことである。
この三点が沖縄と本土の相違である。
続きは本日の
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