辺野古基地建設を普天間閉鎖条件にするのが過ち
沖縄県議会は2010年2月24日に、「米軍普天間飛行場の早期閉鎖・返還と県内移設に反対し、国外・県外移設を求める意見書」を全会一致で採択している。
普天間飛行場の閉鎖と、県内移設反対の両方を沖縄県議会は全会一致で求めたのである。
そして、沖縄選出の自民党議員も、選挙の際に、普天間飛行場の県内移設反対を公約に掲げている。
県内移設反対派、沖縄県民の総意であり、沖縄選出国会議員は、すべて、県内移設反対を公約に掲げて国会議員に選出されているのだ。
この状況下で、沖縄選出自民党国会議員が全員、辺野古移設容認の見解を表明した。
民主主義の堕落である。
堕落した民主主義である。
もちろん、背後には、これを推進した安倍政権が存在する。
沖縄の問題を決めるのは沖縄の人々である。
米軍といえども、沖縄の県民の意思を踏みにじることはできない。
米国は民主主義を掲げており、住民自治を掲げている。
沖縄県民の意思を踏みにじることは、米国の政治制度が許容しない。
それにもかかわらず、辺野古基地建設計画がいまなお推進されているのは、米国が辺野古基地建設を執拗に要請しているからであり、沖縄県民の意思は踏みにじっても、米国のご機嫌だけは損ねたくないと考える、さもしい政治家が存在するからである。
同じ日本国民として、誠に恥ずかしい現実が存在する。
沖縄の県民が辺野古基地建設反対であるなら、それがすべてなのだ。
米国といえども、日本の中央政府といえども、沖縄県民が基地建設NOであるなら、これを尊重する以外に道はない。
それが民主主義であり、住民自治である。
仲井真弘多沖縄県知事は、早期に、辺野古海岸埋め立てを許可しない判断を示すべきだ。
辺野古の地元である名護市議会は、埋め立て許可に反対する意見書を採択した。
仲井真知事は、名護市の意見表明を待って、方針を表明すると発言してきたのだから、直ちに、辺野古埋め立てを許可しないことを明示するべきだ。
敗戦から68年の年月が流れた。
しかし、占領はまだ終わっていない。
陸地面積が日本全体の0.6%しかない沖縄に、米軍専用施設の73.8%が集中している。
1952年4月28日、サンフランシスコ講和条約が発効し、日本は主権を回復した。
安倍政権は、この日を新しい、日本の記念日にしようと画策している。
祈念式典に天皇を招き、万歳三唱を行ったことは、紛れもない天皇の政治利用である。
1952年4月28日は、日本が主権を回復した日であるが、吉田茂内閣は、主権回復と引き換えに、二つの犠牲を生み出した。
ひとつは、米軍による日本占領継続を認めたことである。
ポツダム宣言およびサンフランシスコ講和条約によって、日本は独立を回復し、日本に駐留する連合国軍は日本から速やかに退去することが定められていた。
ところが、吉田茂首相はこの講和条約に但し書きを盛り込むことに同意し、さらに、議会の論議も経ずに独断で、米軍の日本駐留継続を認める日米安全保障条約に署名してしまった。
暴走宰相と言うよりほかはない。
いまひとつは、日本の主権回復と引き換えに、沖縄を中心とする南西諸島を日本から切り捨てたのである。
日本の主権回復は、米軍による日本占領の継続と、沖縄を軸とする南西諸島の切り捨てという代償の上に初めて成り立ったものなのである。
日本が沖縄を切り捨てたその日から、沖縄の新しい戦災が始まったのである。
「銃剣とブルドーザー」によって、沖縄県民の土地は米軍に奪われていった。
日本政府が沖縄を切り捨てたことによって、沖縄は米軍基地の島にされてしまったのである。
これが沖縄差別の原型である。
敗戦から68年経過するいま、この、沖縄差別の構造は、何ひとつ変わっていない。
普天間飛行場が返還されても、代替施設を沖縄県内に建設する限り、沖縄負担率は73.8%から73.1%までしか低下しない。
沖縄の負担軽減などの言葉を口にするべきでない。
73.8%が73.1%になることを「負担軽減」などと言うのは、詐欺師くらいのものである。
辺野古に基地を建設しないと普天間が固定化されることを、脅しの材料に使っているのは米国で、この脅しをそのまま受け入れるなら、自らを政府と称すことはやめた方がよい。
危険な普天間の放置など許されるものではないのだ。
普天間を閉鎖するべきことは当然のことで、日本政府が、辺野古に基地を作らなければ普天間を閉鎖しないという米国の横暴を認めなければよいだけのことなのだ。
日本のことを日本が決めるのは当然のことではないか。
日本のことなのに、米国が命令して、ただその命令に従うだけであるなら、これは独立国の政府ではない。単なる植民地政府でしかない。
続きは本日の
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