株価急落主因は史上空前超デフレ政策決定にあり
日経平均株価は9月29日に14,799円の高値を記録して以来、大幅に下落している。
拙ブログでは9月29日に、
「「絶好調」全開安倍政権に巨大な暗雲が迫りつつある」
と題する記事を掲載した。
10月4日には、日経平均株価が取引時間中に14,000円の大台を割り込んだ。
『金利・為替・株価特報』2013年9月30日号のタイトルは、
「2014年度「財政の絶壁」への対応が不可欠」
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
である。
ロイターは、
「日本株は続落、日経平均が一時1万4000円割れ-米財政と円高」
と題する記事を配信しているが、もっとも重要な問題に対する指摘がない。
それは、安倍政権が史上最大の「デフレ政策」を実施する決定を示したことだ。
安倍政権は「デフレからの脱却」に全力を挙げる方針を提示しているが、その安倍政権が、史上最大の「デフレ政策」を実施することを決定した。
本年最大のブラックジョークである。
この決定を示せば、経済・金融の流れが転換する。
この点を私は警告してきた。
残念ながら、今回もまた、警告は聞き入れられなかった。
米国の予算が成立せず、米政府機関が一部閉鎖に追い込まれている。
オバマ大統領は議会対応に追われて、インドネシアのバリで開かれるAPEC首脳会議にも出席しないことになった。
米国で最重要の経済統計である雇用統計も、10月4日発表予定の数値が公表されなくなる。
米国は政府債務上限を引き上げる法律を成立させる必要があるが、議会において政権与党である民主党と野党共和党が対立して、法律成立のめどが立っていない。
米国国債の債務不履行のリスクが高まっていることが懸念されている。
最終的には債務不履行は回避しなければならないが、そこにたどり着くまで、なお紆余曲折が見込まれている。
オバマ大統領の指導力の低下が深刻な状況に陥っている。
オバマ大統領はシリア政府が化学兵器を使用したとして、シリアに対する軍事攻撃の方針を示したが、根拠が不明確な米国によるシリアへの軍事介入に対して、世界から批判が高まった。
英国ではシリア攻撃の政府方針を議会が否決する事態が生じた。
結局、オバマ大統領は軍事介入を見送る決定を示さざるを得なくなり、指導力の翳りは深刻な状況に立ち至っている。
内外の金融市場はいま、三つのリスクファクターに直面している。
米国の財政金融をめぐる不透明要因の浮上。
中国の金融問題。
そして、日本経済の再悪化懸念である。
米国では、FRBによる量的金融緩和政策の縮小がいつ行われるのかに関心が寄せられている。
これと関連するのが、次期FRB議長人事だ。
オバマ大統領は10月にも次期FRB議長に指名する者を公表すると見られているが、世界経済に重大な影響を与える米国金融政策の運営方針を決める最重要人物の人事であるだけに注目を怠れない。
そして、政府債務上限の引き上げ問題。
債務上限が引き上げられないと、米国政府は新たな資金調達を行うことができず、最悪の場合、過去債務の償還が不可能になる。
米国国債が債務不履行になれば、その影響は測り知れないものになる。
他方、中国経済の先行きに対する警戒感も依然として強い。
影の金融=シャドーバンキング問題を解決できるかどうか、疑念はまだ晴らされていない。
しかし、日本株価の下落を考察する際、見落とせない第一の要因は別にある。消費税増税問題だ。
2014年4月に実施される予定の消費税増税等の影響で、国民負担は約9兆円増大する。
これだけでも極めて強力な財政緊縮政策になる。
しかし、もっと大きな爆弾が潜んでいるのだ。
それは、2012年度13兆円補正予算の効果が剥落することである。
これを合わせると、2014年度の財政デフレ政策の規模は22兆円になる。史上最大の財政デフレ政策なのだ。
史上最大の財政デフレ政策を発表しつつ、「デフレからの脱却を最優先政策課題に位置付ける」ことが、最大の矛盾なのだ。
これが主因で、日本株価が急落している。
ところが、権力迎合のマスメディアは、この点に一切触れようとしない。
消費税増税の障害になるからだ。
しかし、財政政策が史上空前の急ブレーキを踏むことになるなら、日本経済の悪化は避けることは難しいだろう。
ようやく休眠状態から覚めることになる国会では、財政デフレ政策の是非を十分に論議してもらわねばならない。
続きは本日の
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