« 原発事故適正責任処理で東電の法的整理は不可避 | トップページ | 辺野古基地建設強行日米政府と徳洲会事件の関係 »

2013年10月 7日 (月)

安倍政権のTPP詐欺実態が次々と明るみに出る

インドネシアのバリ島でAPEC首脳会議が開かれる。


米国のオバマ大統領はこの首脳会議に出席して、TPP交渉の大筋合意を演出する予定だったが、米国の政府閉鎖・債務上限引上げ問題が難航し、外交日程をキャンセルした。


最重要の国際会議をドタキャンするわけで、米国の指導力低下、米国の威信低下は免れない。


今回のAPEC首脳会議はインドネシアで開催されるが、当のインドネシアはTPPに参加しない。


アジア諸国では、韓国、中国、インドネシア、インドなどがTPPには不参加の意向を示しており、そのインドネシアで開催されるAPEC総会で米国がTPP交渉の大筋合意を発表しようというのも、不可思議な話である。


日本はアジアの一国であるのだから、アジアを基軸に外交および貿易自由化交渉に臨むべきである。


アジアを中心とした貿易自由化を考える枠組みを表わす言葉に、ASEAN+3、ASEAN+6などの言葉がある。


3とは日本、中国、韓国のことだ。6とは、これにインド、ニュージーランド、オーストラリアを加えたものだ。


ASEAN+6の枠組みで検討されている広域的な包括的経済連携構想がRCEP=Regional Comprehensive Economic Partnershipである。


RCEPは2011年11月にASEANが提唱し、その後16ヵ国による議論を経て、2012年12月のASEAN関連首脳会合において正式に交渉が立上げられたものである。


RCEPが実現すれば、人口約34億人(世界の約半分)、GDP約20兆ドル(世界全体の約3割)、貿易総額10兆ドル(世界全体の約3割)を占める広域経済圏が出現する。


2012年11月にはASEAN関連首脳会合において、RCEP交渉開始式典が開催され、16カ国の首脳が「RCEP交渉の基本指針及び目的」を承認し、RCEP交渉立上げを宣言した。

これを受けて2013年5月には、ブルネイでRCEP交渉第1回会合が開催された。

人気ブログランキングへ

TPPとRCEPの最大の相違は、米国を基軸にするものであるのかどうかという点である。


米国を含めたより広範な自由貿易圏を構築するものとしては、アジア太平洋自由貿易圏(Free Trade Area of the Asia-Pacific FTAAP)構想がある。


アジア太平洋地域において,関税や貿易制限的な措置を取り除くことにより、モノやサービスの自由な貿易や、幅広い分野での経済上の連携の強化を目指すものである。


2010年に横浜で開催されたAPEC首脳会議において,FTAAP実現に向けた道筋が策定された。


TPPは、米国の米国による米国のための枠組みである。


米国は、これから世界の成長センターになるアジアの果実を獲得するために、米国を主軸とする経済連携、自由貿易の枠組みを構築しようとしている。


TPPに日本が参加しなければ、TPPはアジアに食い込む強力な武器にはならない。


アジア諸国が米国を除外した自由貿易・経済連携の枠組みを構築すれば、米国はアジアの果実を取り損なうことになる可能性が高い。


そこで、米国はシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイが始めたTPPに参画し、ここに日本などを引き込む策略を構築したのである。


日本がアジアの一国であることを忘れて、米国の僕として米国に隷従してTPPに参加する必然性はまったく存在しない。

人気ブログランキングへ

なぜなら、TPPは日本経済と日本国民に有害無益な枠組みであるからだ。


工業製品において世界の関税率はすでに十分に低い。工業製品の関税が撤廃されても、日本経済が得るメリットは限定的である。


他方、一部の農産物等には、日本の国益を守るために、高率関税が維持されている。


さまざまな理由から関税を維持することが必要とされて、これが維持されている。


しかし、だからと言って日本の市場が閉鎖的であるというわけではない。


全品目の関税率、農産品の関税率において、日本の市場は十分に開かれている。一部産品について高率関税が残されているからと言って、日本の市場が閉鎖的であることにはならない。全体とし日本の市場は十分に開放的であると言って差し支えない。


TPPの害悪は、別のところにある。


TPPは単に関税を撤廃しようとするだけの経済連携ではなく、各国の制度、規制を強制的に変更させる取り決めであり、しかも、TPPにISDS条項が盛り込まれると、国家主権の上にTPPが位置するという、許されざる本末転倒をもたらすものなのである。


日本の諸制度が強制的に破壊されることになる危険が限りなく大きいのである。

人気ブログランキングへ

安倍晋三氏は2012年12月の総選挙で、「TPP断固反対」のポスターを掲げて戦った。


このとき、国民に対して、6つのことがらを約束した。


政治の基本は国民との約束を守る点にある。


安倍自民党は選挙公約に完全なる責任を持たねばならない。


安倍自民党が国民に約束した6つの事項とは、


1.例外5品目の関税を維持する


2.数値目標を受け入れない


3.食の安心・安全を守る


4.国民皆保険制度を維持する


5.政府調達・金融サービスで国の特性を尊重する


6.ISDS条項を受け入れない


である。


この6項目の公約順守を厳しく安倍政権に求めなければならない。

人気ブログランキングへ

ところが、日本政府の対応が疑わしくなっている。


自民党の西川公也環太平洋連携協定(TPP)対策委員長は10月6日、TPP交渉が開かれているバリ島で記者団に対し、「聖域」として関税維持を求めてきたコメなど農産物の重要五品目について、関税撤廃できるかどうかを党内で検討することを明らかにした。 


つまり、例外5品目の関税を維持するとの公約を破棄する可能性を示唆し始めたのだ。

人気ブログランキングへ

続きは本日の
メルマガ版
「植草一秀の『知られざる真実』」
第684号「安倍政権TPP公約破棄なら倒閣運動に正統性」
でご購読下さい。

『アベノリスク』(講談社)
動画配信はこちら
著書と合わせてせて是非ご高覧下さい。


2011101日よりメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(月額:525円(税込)/配信サイト:フーミー)の配信を開始しました。

 創刊月201110-2012年6月は、このようなテーマで書いています。ご登録・ご高読を心よりお願い申し上げます。詳しくはこちらをご参照ください。

 メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、info@foomii.com までお願い申し上げます。

人気ブログランキングへ

20人の識者がみた「小沢事件」の真実―捜査権力とメディアの共犯関係を問う!

価格:1,680円 通常配送無料

出版社:日本文芸社
amazonで詳細を確認する

オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 1 二つの世界大戦と原爆投下

価格:2,100円 通常配送無料

出版社:早川書房
amazonで詳細を確認する

アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪

価格:1,575円 通常配送無料

出版社:講談社
amazonで詳細を確認する

鳩山由紀夫 孫崎享 植草一秀 「対米従属」という宿痾(しゅくあ) 鳩山由紀夫 孫崎享 植草一秀 「対米従属」という宿痾(しゅくあ)

価格:1,470円 通常配送無料

出版社:飛鳥新社
amazonで詳細を確認する

金利・為替・株価大躍動 ~インフレ誘導の罠を読み解く 金利・為替・株価大躍動 ~インフレ誘導の罠を読み解く

価格:1,785円 通常配送無料

出版社:ビジネス社
amazonで詳細を確認する

消費税増税 「乱」は終わらない 消費税増税 「乱」は終わらない

価格:1,470円 通常配送無料

出版社:同時代社
amazonで詳細を確認する

国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る 国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る

価格:1,470円 通常配送無料

出版社:祥伝社
amazonで詳細を確認する

消費増税亡国論 三つの政治ペテンを糺す! 消費増税亡国論 三つの政治ペテンを糺す!

価格:1,000円 通常配送無料

出版社:飛鳥新社
amazonで詳細を確認する

日本の再生―機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却 日本の再生―機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却

価格:1,575円 通常配送無料

出版社:青志社
amazonで詳細を確認する

日本の独立 日本の独立

価格:1,800円 通常配送無料

出版社:飛鳥新社
amazonで詳細を確認する

売国者たちの末路 売国者たちの末路

価格:1,680円 通常配送無料

出版社:祥伝社
amazonで詳細を確認する

知られざる真実―勾留地にて― 知られざる真実―勾留地にて―

価格:1,890円 通常配送無料

出版社:イプシロン出版企画
amazonで詳細を確認する

消費税のカラクリ 消費税のカラクリ

価格:756円 通常配送無料

出版社:講談社
amazonで詳細を確認する

戦後史の正体 戦後史の正体

価格:1,575円 通常配送無料

出版社:創元社
amazonで詳細を確認する

日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土

価格:798円 通常配送無料

出版社:筑摩書房
amazonで詳細を確認する

日米同盟の正体~迷走する安全保障 日米同盟の正体~迷走する安全保障

価格:798円 通常配送無料

出版社:講談社
amazonで詳細を確認する

検察崩壊 失われた正義 検察崩壊 失われた正義

価格:1,365円 通常配送無料

出版社:毎日新聞社
amazonで詳細を確認する

検察の罠 検察の罠

価格:1,575円 通常配送無料

出版社:日本文芸社
amazonで詳細を確認する

「主権者」は誰か――原発事故から考える 「主権者」は誰か――原発事故から考える

価格:525円 通常配送無料

出版社:岩波書店
amazonで詳細を確認する

原発のカラクリ―原子力で儲けるウラン・マフィアの正体 原発のカラクリ―原子力で儲けるウラン・マフィアの正体

価格:1,680円 通常配送無料

出版社:鹿砦社
amazonで詳細を確認する

</

« 原発事故適正責任処理で東電の法的整理は不可避 | トップページ | 辺野古基地建設強行日米政府と徳洲会事件の関係 »

TPP」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 安倍政権のTPP詐欺実態が次々と明るみに出る:

» 見えるものと見えざるもの [高橋敏男のブログ]
知人がまた一人亡くなった。 [続きを読む]

« 原発事故適正責任処理で東電の法的整理は不可避 | トップページ | 辺野古基地建設強行日米政府と徳洲会事件の関係 »

有料メルマガご登録をお願い申し上げます

  • 2011年10月より、有料メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」の配信を開始いたします。なにとぞご購読手続きを賜りますようお願い申し上げます。 foomii 携帯電話での登録は、こちらからQRコードを読み込んでアクセスしてください。

    人気ブログランキング
    1記事ごとに1クリックお願いいたします。

    ★阿修羅♪掲示板

主権者は私たち国民レジスタンス戦線

  • 主権者は私たち国民レジスタンスバナー

    主権者は私たち国民レジスタンスバナー

著書紹介

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想
2025年6月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

関連LINKS(順不同)

LINKS1(順不同)

LINKS2(順不同)

カテゴリー

ブックマーク

  • ブックマークの登録をお願いいたします
無料ブログはココログ