安倍政権の巨大矛盾解消第一歩は東電の法的整理
安倍晋三氏は福島原発の放射能事故が完全に管理下にあると宣言したが、これを肯定する者は、少なくとも現実を知っている者のなかには一人もいない。
“under control”とは、事態が制御されていることを指す。
放射能汚染水が地下水や海洋に流出しているのは、事態が制御されていないから生じているもので、定義の上で、福島原発の放射能事故は“under control”の状態にはない。
しかし、安倍氏はオリンピックを招致するために、このような虚偽を宣言してしまった。
この事実が安倍政権の命運を左右する問題になると思われる。
安倍氏が福島原発放射能事故は“under
control”の状態にあると宣言したことは、福島の現実とは異なっている。
ここに「矛盾」がある。
ものごとが崩壊する原因は、常に「矛盾」である。
例えば、株価のバブルが崩壊すること。
これは、現実の株価と、企業の真実の価値との間に「矛盾」が広がる際に生じる。
「矛盾」を生み出すこと、「矛盾」を創り出すことが、ものごとの崩壊を導くのである。
オリンピックという新たな目標が生まれて、上昇する「気」の流れを生み出すことは悪いことではない。
「陰の気」が支配し続けてきた日本に、「陽の気」を創り出すことは良いことである。
しかし、オリンピックを実現すればそれだけで良いのかと言えば、むろんそうではない。
日本の国はいま重要な分岐点に差し掛かっている。
米国流の弱肉強食社会に完全に移行してしまうのか。それとも、助け合い、分かち合い、支え合いの文化、哲学、価値観を取り戻すのか。
2001年に発足した小泉政権が、日本の方向を変えた。
「助け合う社会・分かち合う社会」から「叩き合う社会・奪い合う社会」に基本方向を大転換させた。
鳩山由紀夫政権が誕生した背景には、小泉政権が推進した弱肉強食社会創設の政策路線への反省、見直しの気運があった。
日本の針路は、いったん大幅に修正される方向に進み始めた。
ところが、日本の弱肉強食化、日本収奪の目論見を持つ米官業トライアングルが、この流れを再転覆させた。
彼らは目的のためには手段を選ばぬ暴虐の限りを尽くした。
その結果として、まず、民主党内のクーデター政権である菅直人政権と野田佳彦政権が樹立され、そのうえで、昨年12月に第二次安倍晋三政権が樹立されたのである。
私の考えは、「オリンピックの前にやるべきことがある」というものだ。
いま安倍政権が推進していることは、社会保障制度の破壊である。
消費税増税は社会保障制度を拡充するためのものと説明されているが、現実はまったく違う。
庶民増税を強行するが、同時に社会保障も切り刻むのである。
増大する税収は、官僚利権と政治利権のために使われるのである。
このような政策の流れでオリンピックを招致しても、それは、ごく限られた人々の利権のためのものにしかならない。
オリンピックを実施するなら、特定少数の利益のためのオリンピックではなく、すべての国民のためのものにしなければならない。
オリンピックと同時にパラリンピックが開催されることの意味を見つめ直すべきである。
さて、「矛盾」の話に戻るが、最大の矛盾は、政府の東電への対応にある。
「原賠法」は放射能事故発生時の損害賠償責任を事業者に課している。
原発事故の損害賠償責任を負うのは東電である。
ところが、東電には損害賠償能力がない。
したがって、まずは法律の規定に沿って、東電に最大の責任を果たさせ、そのうえで、不足する部分の政府が責任を持って対処することが必要だ。
つまり、東電を破綻処理して、責任ある当事者の適正な責任を問い、そのうえで、国が責任をもって事後処理にあたるべきなのである。
ところが、いまだに東電の法的整理が行われていない。
東電の経営責任、株主責任、債権者責任が問われぬまま、巨大な血税負担が注がれようとしているのである。
これ以上の「矛盾」は存在しないと言ってよいだろう。
安倍氏は汚染水対策に国費を投入する方針を発表したが、国費を投入するなら、その前に、経営責任、株主責任、債権者責任を問うのは当たり前のことだ。
当たり前のことを当たり前に実行できない政権に大きな仕事を遂行できるわけがない。
そして、もうひとつの重大事態は、東電と国の刑事責任が適正に処理されていないことだ。
続きは本日の
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