侵略戦争正当化目的の謀略工作は米国のお家芸だ
米国のオバマ大統領がシリアへの軍事侵攻の判断を先送りした。
オバマ氏は議会の同意なしに軍事侵攻に突き進む姿勢を示していたが、米国の横暴に対する批判が国際的に高まり、オバマ氏はとりあえずの退却を迫られた。
米国は謀略の国である。
目的のためには手段を選ばない。
これが米国である。
米国最大の産業は戦争産業である。
軍事費は年間50兆円。戦争産業は超巨大産業である。
この巨大産業の「飯の種」はもちろん戦争である。
常時、戦争を創作していなければ産業が枯渇してしまう。
戦争は「必然」によって生じるものではない。「必要」によって生じるものである。
米国は戦争を必要とし、そのために、人為的に戦争を創作する。
そのための工作活動が「謀略」である。
これは単なる空想論、陰謀論ではない。
歴史的事実に裏付けられた「真実」である。
「戦争を美しく語る者を信用するな。
彼らは決まって戦場にいなかった者なのだから」
この言葉を私たちは常に胸に刻んでおかなければならない。
米国は戦争を「創作」する際、必ず戦争を正当化する大義名分を用意する。
しかし、その大義名分のほとんどは捏造されたものである。
油井大三郎著『好戦の共和国米国-戦争の記憶をたどる』
http://goo.gl/ThmgVP
には、米国の謀略の史実が記されている。
①1898年の米西戦争では、キューバ情勢が緊迫していた最中、ハバナ港に停泊中の米軍艦メイン号が突然沈没し、米兵260人が死亡した。
原因は不明だったが米海軍がスペイン軍からの攻撃を示唆したためにメディアが扇動的な報道を繰り返し、スペインとの開戦を支持する世論が形成された。用いられたスローガンは「メイン号を忘れるな」であった。
しかし、のちの調査で、メイン号沈没の原因がスペイン軍からの攻撃ではなく、軍艦内部の事故によることが判明した。
②1941年12月8日の日本軍によるハワイ・パールハーバー攻撃に端を発する太平洋戦争では、日本の外務省ワシントン大使館の不手際で日米交渉終結通知が攻撃1時間後に米国国務省に届けられた。
このために、「だまし討ち」とのスローガンが流布された。NBCラジオ番組を担当したサミー・ケイが「リメンバー・パールハーバー」という曲を作り、このフレーズが米国参戦を正当化する大義名分に使用された。
しかし、日米開戦は米国が仕向けた戦略上に発生したものである。パールハーバーへの攻撃情報も米国は事前に入手していたことが明らかにされている。
さらに、日本軍内部に米国と通じる勢力が存在していたとの疑いも濃厚に存在している。
③1964年に始まったベトナム戦争本格化の引き金を引いたのは、同年8月2日に米軍が北ベトナムから攻撃を受けたとの情報だった。ジョンソン大統領は直ちに北ベトナムへの報復攻撃を命令し、ベトナム戦争が本格化した。
しかし、1971年にニューヨーク・タイムズ紙が以下の真相を暴露した。
実際には、米軍側が戦線の行き詰まりを打破するために、意図的にトンキン湾に軍艦を侵入させて、攻撃を誘発したのである。米国は北ベトナムへの本格軍事攻撃を正当化するために謀略工作を仕組んだのである。
⑦1990年8月2日に勃発した湾岸紛争と91年1月に開始された湾岸戦争。米国はイラクへの軍事攻撃に踏み切った。米国世論はクウェートの武力解放に懐疑的だったがクウェート人少女の米国下院公聴会での証言が世論の流れを変えた。
ナイラと名乗るクウェート人少女が、イラク兵がクウェートの病院で保育器の赤ん坊を投げ捨てるのを見たと証言した。メディアはこの証言を大々的に報道した。
しかし、のちに、この少女が駐米クウェート大使の娘で、その証言内容が曖昧であることが判明した。
2003年に米国はイラクに軍事侵攻した。理由は、イラクが大量破壊兵器を保持しているというものだった。
ところが、イラクから大量破壊兵器は発見されなかった。
米国による単なる侵略戦争だった。
日本の小泉純一郎氏は、米国の対イラク軍事侵攻開始時に、直ちに米国の行動を支持する立場を表明した。
日本外交に消すことのできない大きな汚点を印した。
米国はシリア政府が化学兵器を使用したと主張するが、極めて疑わしい。
化学兵器を使用したのは、米国と通じる反政府勢力である可能性が高い。
メルマガ読者が提供してくれた情報だが、8月28日の米国国務省定例記者会見でロイターの記者が、シリアの化学兵器使用疑惑をめぐり、米国による広島、長崎への原爆投下の例を挙げて軍事介入の正当性について追及した。
米政府はアサド政権による化学兵器使用を断定。会見でハーフ副報道官は、アサド政権が多数の市民を無差別に殺害したことが一般的に国際法違反に当たると強調した。
これに対してロイターの記者が、
「米国が核兵器を使用し、広島、長崎で大量の市民を無差別に殺害したことは、あなたの言う同じ国際法への違反だったのか」
と質問したのである。ハーフ副報道官は質問に答えることが出来なかった。
米国のペテン、謀略、侵略行為に対する世界の目が厳しくなっている。
日本政府は思慮なく米国に隷従する行動を直ちに改めるべきである。
日本で9月の最大の問題は消費税大増税問題である。
9月7日にはIOC総会がアルゼンチンのブエノスアイレスで開催され、2020年のオリンピック開催地が決定される。
東京が選出される可能性があるが、思慮深い国民の判断は、
「オリンピックの前にやるべきことがある」
だ。東電福島第一原発が過酷な事故を引き起こして2年半の時間が経過する。
この間、政府と東電は汚染水対策を怠ってきた。
その結果、新たに「国際原子力事業評価尺度」で「レベル3」(重大な異常事象)に該当する重大な放射能事故を引き起こしてしまった。
その原因は、政府が東電を法的整理せず、放射能汚染問題に対する東電のおざなりな対応が放置されてきたからだ。
続きは本日の
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
第654号「避けて通ることができない東電の法的整理 」
でご購読下さい。
『アベノリスク』(講談社)
の動画配信はこちら
著書と合わせてせて是非ご高覧下さい。
2011年10月1日よりメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(月額:525円(税込)/配信サイト:フーミー)の配信を開始しました。
創刊月2011年10-2012年6月は、このようなテーマで書いています。ご登録・ご高読を心よりお願い申し上げます。詳しくはこちらをご参照ください。
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、info@foomii.com までお願い申し上げます。
20人の識者がみた「小沢事件」の真実―捜査権力とメディアの共犯関係を問う! 価格:1,680円 通常配送無料 出版社:日本文芸社
|
オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 1 二つの世界大戦と原爆投下 価格:2,100円 通常配送無料 出版社:早川書房
|
アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪 価格:1,575円 通常配送無料 出版社:講談社
|
鳩山由紀夫 孫崎享 植草一秀 「対米従属」という宿痾(しゅくあ) 価格:1,470円 通常配送無料 出版社:飛鳥新社
|
金利・為替・株価大躍動 ~インフレ誘導の罠を読み解く 価格:1,785円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
消費税増税 「乱」は終わらない 価格:1,470円 通常配送無料 出版社:同時代社 |
国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る 価格:1,470円 通常配送無料 出版社:祥伝社 |
消費増税亡国論 三つの政治ペテンを糺す! 価格:1,000円 通常配送無料 出版社:飛鳥新社 |
日本の再生―機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却 価格:1,575円 通常配送無料 出版社:青志社 |
日本の独立 価格:1,800円 通常配送無料 出版社:飛鳥新社 |
売国者たちの末路 価格:1,680円 通常配送無料 出版社:祥伝社 |
知られざる真実―勾留地にて― 価格:1,890円 通常配送無料 |
消費税のカラクリ 価格:756円 通常配送無料 出版社:講談社 |
戦後史の正体 価格:1,575円 通常配送無料 出版社:創元社 |
日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 価格:798円 通常配送無料 出版社:筑摩書房 |
日米同盟の正体~迷走する安全保障 価格:798円 通常配送無料 出版社:講談社 |
検察崩壊 失われた正義 価格:1,365円 通常配送無料 出版社:毎日新聞社 |
検察の罠 価格:1,575円 通常配送無料 出版社:日本文芸社 |
「主権者」は誰か――原発事故から考える 価格:525円 通常配送無料 出版社:岩波書店 |
原発のカラクリ―原子力で儲けるウラン・マフィアの正体 価格:1,680円 通常配送無料 出版社:鹿砦社 |
« 放射能汚染を放置する国でオリンピックは妥当か | トップページ | 五輪のため汚染水処理決めた安倍政権の厚顔無恥 »
「反戦・哲学・思想」カテゴリの記事
- 暦に刻むべき「日本敗戦の日」(2024.09.01)
- 早田選手の知覧発言について(2024.08.15)
- 核廃絶言えない対米隷属の日本(2024.08.07)
- 藤井聡太氏が示す八冠の品格(2023.10.12)
- 国民を犬死させた戦争に負けた日(2023.09.01)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 侵略戦争正当化目的の謀略工作は米国のお家芸だ:
» THE BIG ISSUE (ザ・ビッグイシュー) [インターネット政党 「ネット des 新党 (NetdesNewParty)」 のブログ]
土曜の夜はNHKの「ニュース7」を楽しみにしている。理由は単純明快。キャスターの小郷知子さんがお目当てだからだ。はっきり言って私は小郷知子さんにベタ惚れである。よって、土曜の夜は彼女に拝顔しなければ気が済まなくなっている。
そんな話はさておき、今...... [続きを読む]
» 安倍晋三はやはり馬鹿殿であったか [木霊の宿る町]
ただいまの当地時間は8月27日の朝。細かいことまでぜんぶ覚えておけとはいわないが、十年に一度とか二十年に一度とかいう大きな出来事、時代の骨格、原理というようなものは頭に入れておく、いや自然と体の一部になっていないといけないのではなかろうか、日本の首相たる者は。北ベトナムがトンキン湾で米海軍を攻撃した(1964年)とかイラクが核戦争を準備している(2003年)とかいった米国がついた嘘を安倍晋三が覚えていないとは思えないのだが、もし覚えているのなら、米国が戦争を始めるときには大きな嘘をつくということが分... [続きを読む]
« 放射能汚染を放置する国でオリンピックは妥当か | トップページ | 五輪のため汚染水処理決めた安倍政権の厚顔無恥 »