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2013年9月19日 (木)

FRBの金融緩和政策縮小先送りをどう読むか

9月7-18日に開かれたFOMC=米国FRB公開市場委員会で、FRBは量的金融緩和措置の縮小決定を先送りした。


事前の市場では縮小決定会合を見込む見通しが優勢であったが、FRBは慎重な姿勢を示した。


9月6日に発表された8月雇用統計で示された非農業部門雇用者数は前月比16万9000人増で市場予想より小幅な伸びにとどまった。


失業率は7.4%から7.3%に低下し、2008年12月以来4年半ぶりの低水準となったが、失業率低下は失業者の減少ではなく労働参加率の低下を反映したものだった。


失業率は働く意思を示す人の中で実際に失業している人の比率を示す。


景気が悪く仕事を求めても仕事を得られないと諦めてしまうと、人は仕事を求める求職の状況からさえ撤退してしまう。


労働参加率の低下とは、求職を諦めて労働市場に参加する意思を取り下げてしまった人が多いことを示している。


失業率は労働市場に参加意思を示している人の中で失業している人の比率を表示するものなので、景気が悪く、労働市場参加率が低下する局面でも失業率が低下することがある。


しかし、この時の失業率低下は景気改善を示す指標にはならない。


雇用者数の増加は事前の市場予想値をわずかに下回るものであった。


このために、9月のFOMCでFRBが金融緩和縮小を決定するかどうかは、見方が交錯していたのである。

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今回のFRBの決定の背景として、もうひとつの要因を指摘できる。


次期FRB議長人事の影響だ。


金融市場では、次期FRB議長にローレンス・サマーズ氏が指名されるとの見方が有力だった。


日本経済新聞などは、1面でサマーズ氏がFRB議長に指名されるとの見通し記事まで掲載してしまった。


ところが、その後、サマーズ氏がオバマ大統領にFRB議長候補から降りるとの意思を伝えたことが報じられた。


表向きはサマーズ氏の議長候補からの辞退であるが、内実は、オバマ政権によるサマーズ氏指名断念ということだった。


サマーズ氏のFRB議長就任に対する反対意見が、実は、きわめて根強かった。


私も、サマーズ氏のFRB議長就任に反対の見解を本ブログ、メルマガ、会員制レポートなどに執筆してきた。


同時に、多数派の見解ではないが、最終的にイエレン氏がFRB議長に就任することになる可能性が高いとの予測も示してきた。


最大の理由は、FRB議長に求められる最重要の資質の一つに、FRB内部、FOMC参加メンバーの考えを統一できる説得能力、根回し能力が存在するということだった。


この点において、イエレン氏はサマーズ氏をはるかに上回っている。


私はサマーズ氏とイエレン氏の両氏に面識があるが、私の印象としても、この点は重要であると判断した。


表にはあまり出ないが、今回の一連の動きの中で、アラン・ブラインダー教授の果たした役割も大きい。


ブラインダー氏は、かつて、次期FRB議長候補としてFRB副議長に就任した経歴を持つ人物である。


このブラインダー氏が自身のFRB内部での経験をも踏まえて、サマーズ氏よりもイエレン氏が適任であることを広く」訴えてきたのである。


オバマ氏は次期FRB議長に誰を指名するかをまだ公表していないが、イエレン現FRB副議長は依然として有力候補の一人である。

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9月6日発表の8月米雇用統計で、失業率は0.1%ポイント低下して7.3%になったが、非農業部門の雇用者数は市場予想値を下回り、また、

6、7月分の非農業部門雇用者数も当初発表から合計で7万4000人下方修正された。


8月の雇用統計は米経済が7月以降、景気回復の勢いを取り戻せずにいる可能性を示唆するものになった。


バーナンキ議長は本年5月以降、量的金融緩和政策を縮小する方針を明示してきているが、バーナンキ議長自身が来年1月末のFRB議長の任期満了をもってFRB議長職を辞任する意向を明確にしているから、次期FRB議長に円滑に業務を引き継ぐことの重要性を強く認識している。


二人の有力候補であったサマーズ氏とイエレン氏を比較した場合、量的金融緩和策縮小に、より積極的であるとみられてきたのがサマーズ氏である。


イエレン氏の場合、量的金融緩和縮小措置をより慎重に実施すると見られている。


このなかで、今回のFOMC直前にFRB議長候補からサマーズ氏が脱落したことは、FRBにより広範な自由度が与えられたことを意味する。


来年1月末のFRB議長交代までに、拙速に金融緩和縮小を進めなくてもよい状況が生まれたのである。


しかしながら、これらの事情は、イエレン氏がインフレ抑制に後ろ向きであることを意味しない。ブラインダー教授が指摘してきたように、イエレン氏はすでに2005年の段階で、その後のサブプライム金融危機につながる金融機関による野放図な融資拡張に警告を鳴らしていたのである。


イエレン氏の姿勢は、「インフレに甘い」という、対インフレハト派というものではなく、それぞれの状況に応じて、適時適切に対応するというものだと理解すべきである。


FRB議長人事を取り巻く環境変化、FRBのより慎重な金融緩和縮小姿勢は、米国経済の成長持続にとってはプラスに作用すると判断しておくべきと思われる。

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