社会保障を切り刻み消費税を大増税する根本矛盾
おかしな政策運営が大手を振って繰り広げられている。
消費税の大増税が強硬に推進されているが、その一方で法人税の減税が議論されている。
2007年10月に政府税制調査会は、
「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」
と題する報告書を発表している。
この報告書では、法人の税負担等について国際比較を行った結果が示されている。
その調査結果によれば、日本の法人負担は国際的に見て高いとは言えないとの結論が示されている。
これは私的な見解ではない。
政府税制調査会の報告であるから、国としての公式見解のひとつと言って差し支えないものである。
日本政府は2007年時点で、法人税負担が国際比較上、高いとは言えないとの判断を明示したのである。
ときは安倍晋三政権から福田康夫政権に引き継がれたころである。
日本の税収構造は過去20年間に激変した。
1990年度には60兆円を超えていた国税収入が2009年度には40兆円を下回った。
20年間で国税収入は3分の2に激減した。
この間、主要三税目の税収を見ると、所得税は91年度の26.7兆円が09年度の12.9兆円へと半分以下に減少した。
法人税は89年度の19.0兆円から09年度の6.4兆円へと3分の1に激減した。
この中で、消費税だけは、89年度の3.3兆円から12年度の10.4兆円へと3倍増しているのである。
この中で、いま安倍政権が推進しようとしているのが消費税の倍増と、法人税のさらなる減税である。
消費税は89年度を基準とすれば、なんと6倍の規模に大増税されるのだ。
私は財政構造改革に反対しない。逆に、財政構造改革の重要性を強く訴えているというのが、偽りのない真実である。
しかし、私が提唱する財政構造改革は、安倍政権がいま推進している、括弧つきの「財政構造改革」とは似ても似つかないものだ。
正しい財政構造改革とは、
1.財政支出の無駄を完全に排除する
2.高齢化社会に備えて社会保障制度を拡充する
3.適正な国民負担のあり方を構築する
というものである。
安倍政権の「財政構造改革」が似ても似つかないと記述したのは、安倍政権の「財政構造改革」が、
1.無駄な政府支出を際限なく拡大する
2.社会保障制度を徹底的に切り込む
3.法人の税負担を軽減して、中低所得者層に巨大な負担を強制する
というものだからである。
主権者である国民は、安倍政権が具体的に進めている政策をよく知ったうえで、それが良いのか悪いのか。適正に判断する必要がある。
メディアが安倍政権を絶賛しているからといって、政策の中身を見ることもせず、付和雷同で安倍政権を支持してはいけない。
その無責任な行動が、結局は自分の身に跳ね返る、自分の首を絞めてしまうことになるのである。
9月26日付の日経新聞朝刊に、
「介護保険 2割負担に上げ 厚労省案」
の見出しが1面トップで掲載された。
「夫婦年収360万円メド」
とも記された。
夫婦の年収がこの水準を超える人を対象に、自己負担の比率を現行の1割負担から2割負担に引き上げるというのだ。
この措置は、高所得者の負担増加策ではない。中所得者の負担増加策である。
社会保障制度は安倍政権の下で、片端から切り刻まれ始めている。
財政事情が本当にひっ迫しているというならまだ分かる。
ところがそうではない。
安倍政権が発足して直ちに13兆円もの規模の補正予算が編成された。
その中身はほとんどが、公共事業と官僚利権へのバラマキ支出だった。
このような政策運営を日本の主権者国民は、本当に是認するのかどうか。
そのことをすべての主権者が十分に考える必要があると思う。
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