日経新聞がFRB議長人事予測記事で大誤報か
8月4日付の本ブログ記事
「金融市場を読み解く鍵は米経済とFRB議長人事」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-4bcb.html
ならびにメルマガ第630号記事
「イエレン副議長が次期FRB議長最適任者」
に、FRB議長人事について既述した。
私は次期FRB議長にはローレンス・サマーズ氏よりもジャネット・イエレン氏が適任であり、最終的にそう決定される可能性が高いと記述した。
金融市場では、サマーズ氏のFRB議長就任の可能性が高いとしてきた。
9月14日付の日本経済新聞は1面で、
「FRB議長サマーズ氏」
の見出しでサマーズ氏がFRB議長に選任されるとの見通しを記述した。
ところが、その直後に、サマーズ氏自身がFRB議長候補から辞退する意向をオバマ大統領に電話で伝えたことが報じられた。
経済を専門とする日本経済新聞の事実上の「誤報」が明瞭になりつつある。
FRB議長について、正確な情報を提供することは、経済専門誌を標榜する日本経済新聞のレゾンデートル=存在意義である。
そのFRB議長人事報道で「誤報」を流してしまうことは、日本経済新聞にとっては致命的な失態である。
責任者の更迭は免れないだろう。
日本経済新聞は国内の金融関連報道などでスクープを記録することがあるが、これらのほとんどは、インサイダー的な情報の入手によるものである。
金融関係の閣僚などと癒着してインサイダー的な情報を入手してこれをスクープ記事としてきたことが多い。
公務員の守秘義務違反、公務員の収賄事案と背中合わせの不正な情報のやり取りがこうしたスクープ報道の裏側に存在する。
米国の場合にはこのようなインサイダー的な情報の入手が困難であると考えられるから、本来の取材力が問われるが、そうなると、今回のような誤報を流してしまうというのが、日本経済新聞の実力なのだろう。
オバマ大統領は声明を発表し、サマーズ氏の決断を受け入れたことを明らかにしたと報じられている。
サマーズ氏はハーバード大学長時代に、女性蔑視発言により学長辞任に追い込まれた。
また、ウォール・ストリート金融機関との深すぎる関係も批判の対象とされてきた。
FRB元副議長を務めたプリンストン大学のアラン・ブラインダー教授は、サマーズ氏ではなくイエレン氏のFRB議長が望ましいことを訴えてきた。
私はかつてブラインダー氏と頻繁に接触していた。
また、サマーズ氏、イエレン氏の両氏にも面識がある。
8月4日付記事に記述したように、私もブラインダー氏と同様に、次期FRB議長にはイエレン氏の就任が望ましいことを主張してきた。
FRB議長に求められる資質と各候補者の持つ資質を比較検討する場合、イエレン氏がFRB議長に就任することがもっとも適切であると私は判断する。
サマーズ氏がFRB議長候補であることを辞退したが、オバマ大統領が誰を次期FRB議長に指名するかは、現段階で明らかでない。
しかし、依然としてイエレン氏は有力なFRB議長候補の一人である。
私が提示するFRB議長に必要な資質は次の三つである。
第一は、経済・金融情勢を正しく洞察する鑑識眼
第二は、経済金融情勢判断に基づいて正しい政策対応を判断できる政策対応能力
第三は、その判断をFRB内部でまとめ、議会を納得させ、国民に理解させる調整能力と説明能力
この三つを備えることが、FRB議長に求められる資質である。
幸いなことに、グリーンスパン氏とバーナンキ氏は、この三つの基準を満たす稀有の人材であった。
かつてFRB副議長を務めたブラインダー氏もこの三つを兼ね備えている稀有の人材である。
ブラインダー氏はFRB議長就任を目指したが、FRB議長に就任するための政治的な駆け引きを実行しなかった。そのためにブラインダー氏はFRB議長に就任することなくFRB副議長を退任した。
FRB議長に就任するには、この意味での「意志」も必要になる。
サマーズ氏がFRB議長候補であることを辞退したことは、オバマ政権にとって幸いすると思われる。
オバマ氏が誰をFRB議長に指名するか、現段階では明確でないが、サマーズ氏の事態により、イエレン氏がFRB議長に指名される可能性は高まった。それでも、コーン前FRB副議長が指名される可能性は残っている。
現段階で確実な状況ではないが、結果として、イエレン氏がFRB議長に就任することになれば、これが、オバマ政権にとっての最善の選択になる。
FRB内部をまとめて、最適な金融政策運営を実現することが最重要の課題であり、この課題に鑑みれば、イエレン氏をFRB議長に指名することが最適であると考えられるからである。
続きは本日の
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