私達は『略奪者のロジック』を知っておく必要がある
響堂雪乃氏の著書『略奪者のロジック』(三五館)には、現代の日本政治、世界経済を読み解く、意味の深い言葉がちりばめられている。
本の帯には、
「“脅威”の正体を暴く「暗黒の箴言集」」
とある。「箴言」は「しんげん」と読む。
「箴言」とは、「戒めの言葉。教訓の意味をもつ短い言葉。格言。」のこと。
安倍政権が推進しているTPPで、日米両政府は4月12日に日米両政府による事前協議の結果を公表した。その文書がこれだ。
「駐米日本大使と米通商代表代行の往復書簡」
「自動車貿易TOR(委任事項)」という添付文書
その内容は驚くべきものだった。
また、これとは別に両国政府は国内向けに事前協議結果を公表した。
すでに、4月20日付ブログ記事
「TPP日米事前協議に見られる売国政策の実態」
メルマガ記事第548号
「安倍晋三政権の即時退場が求められる理由」
に記述した通り、この事前協議結果は、安倍政権の外交交渉能力の欠落を鮮明に示している。
事前協議では、
①米国の自動車輸入関税の引下げを最大限先延ばしすること、
②日本が米国車の輸入認証方法を改めて輸入台数を2倍にすること、
③日本政府がかんぽ生命などの新規事業を許可しないこと、
などが決められた。
日本だけが一方的に米国に全面譲歩したことは明白だ。
しかも、この重大事項は日本政府発表資料には記載されていない。
米国発表資料には、これらが「日本政府より一方的に通告されたもの」と表記された。
表記の上では、日本の全面譲歩は「協議」を通じて決まったものではなく、日本側が勝手に決めたこととされている。
「日本政府が交渉で譲歩した」ことにならないように、「日本政府が一方的に決めて通告した」ことにしたのなら、日本政府の罪はなお深い。
冒頭の響堂氏の著書『略奪者のロジック』に戻るが、この書の112ページに、連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーの言葉が紹介されている。
「最高司令官は日本政府に対して命令する。しかし交渉するのではない。交渉は対等の者の間に行われるのである。」
日本国憲法との関連では、改憲論者は、「押し付け憲法論」を主張し、GHQが押し付けた憲法には正統性はないとの主張を展開する。
たしかに、日本国憲法を制定する過程でGHQが深く関与したことは事実である。
しかし、日本国民が憲法制定に関与しなかったわけではない。
民主的な選挙で選出された議員が国会において、憲法を審議したことも事実だ。
したがって、上記のマッカーサー最高司令官の言葉をそのまま憲法に当てはめて理解することは妥当でないと思うが、この言葉は、現在の日米関係を示す言葉として正鵠を射たものになっている。
日米協議というのは表向きの名称であって、実体は、米国が日本に、より正確に言えば、安倍政権に命令しているのである。
交渉は対等の者の間に行われるものであって、現在の日米関係はこの関係にはない。
米国が日本政府に命令しているだけである。
安倍氏が率いる自民党は、昨年12月の総選挙に際して、TPP断固反対のポスターを貼り、6つの公約をクリアできない限り、TPPに参加しない方針を示した。
①コメ、麦、乳製品、牛肉、砂糖原料の五品目の聖域化、
②自動車等の数値目標排除、
③国民皆保険制度堅持、
④食の安全・安心確保、
⑤ISDS条項の排除、
⑥政府調達・金融での日本の特性維持、
が公約として示された。
ところが、日米事前協議で、すでに②、⑥が破られている。
①も、米国は国内発表資料には「センシティビティ」の言葉さえ記されなかった。
米国の自動車輸入関税の撤廃を先送りすることが決められたのに、日本の農産品5品目については、まだ何も決まっていないのだ。
『略奪者のロジック』には、
日本の教育改革を推進した三浦朱門氏の、
「エリート以外は実直な精神だけ持っていてくれればいい。」
ヘンリー・キッシンジャー米国元国務長官の、
「エネルギーを支配することで国家を支配できるが、食物を支配することで個人を支配できる。」
など、重大な言葉がちりばめられている。
非常にためになる書である。
続きは本日の
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