猪瀬直樹氏はオリンピック招致撤退を表明すべき
東京都の猪瀬直樹知事がNYタイムズ紙のインタビューで、イスラム諸国を侮蔑する発言を示し問題となっている。
NYタイムズ紙とのインタビューで猪瀬知事は以下の内容を話したと伝えられている。
「アスリートにとっていちばんよい開催地はどこか。インフラや洗練された競技施設が完成していない、二つの国と比べてほしい」
とほかの立候補都市に言及し、そのうえで、
「イスラム諸国に共通するのはアラーだけで、あとはいつも喧嘩ばかりしている。それに彼らには階級制度がある」
と述べた。さらに、
「トルコは日本よりも平均年齢がはるかに若く、貧しいので子供がたくさん生まれる。日本は人口増加も止まり、高齢化が進んでいるが健康的で落ち着いた生活を送っている。
トルコの国民も長生きしたいと思っているのは同じだろう。彼らは早死にしたくないのなら、日本と同様の文化を創造すべきだ」
と言った。
猪瀬氏はNYタイムズ紙の記事が自分の発言の文脈とは異なると反論したが、NYタイムズ紙は「絶対の自信がある」と再反論し、結局、猪瀬氏が謝罪の会見を行った。
NY出張は誰のお金で行ったのだろうか。
公費を投入してこのありさまでは、都民が泣く。
お粗末千万だが、発言内容は前知事の石原慎太郎氏を彷彿させるものである。
他国や他国の人々に敬意を払い、尊重する姿勢が欠落している。
オリンピックの東京招致に熱心な人々の多くが、経済的理由に基いて招致活動を推進している。
経済的理由とは、要するに「金もうけ」である。
日本でオリンピックを開催し、世界の人々と交流し、スポーツの祭典を盛り上げること自体に私は反対はしない。
しかし、オリンピックの招致のために巨大な財政資金を投入するのであるなら、他の財政支出項目との比較検討が必要不可欠だ。
政治の決定とは、常に優先順位の決定である。
財政支出に対する要請は無限に存在する。
しかし、そのすべての要請に応えるだけの財力がない。
主権者に1年あたり13.5兆円、10年で135兆円、20年で270兆円もの巨大な増税をお願いしようというのだから、必要不可欠な財政支出需要以外に財政資金を配分する余裕は皆無である。
そのなかで、巨大な財政支出を伴う形でのオリンピック招致を行う必然性は存在しない。
2016年オリンピックに向けての招致活動では、150億円もの費用が投入され、血税が100億円も投入されたと伝えられている。
招致活動をした前東京都知事の石原慎太郎氏は、旅客機のファーストクラスを使い、ホテルのスイートルームを使用して、「招致活動」の名の下に大名旅行をした。
広告代理店は招致のプロモーションビデオを作成するとの名目で巨大な利得を得た。
メディアがオリンピック招致の音頭を取っているが、しょせんは欲得に目のくらんだおぞましい動機によるものである。
オリンピックのためだけに巨大な施設を建設しても、その後の利用が行われなければ、巨大な資金の無駄遣いで終わる。
ゼネコンと利権のキックバックを受ける利権政治屋は儲かるだろうが、これは「公」のためのオリンピックではなく、単に「私腹」を肥やすためのオリンピックである。
こんなことに巨大な資金を投じる前に、社会保障の充実を図るべきではないのか。
猪瀬氏がNYを訪問したのはNYの地下鉄を視察するためだったと伝えられている。
NYにならって東京の地下鉄や公共バスを24時間営業にすることが検討されているという。
そんなことを東京都が行う必要はないだろう。
24時間都市のことを「不夜城」と呼ぶが、東京を「不夜城」にする理由などどこにもない。
工業化・大量生産・大量消費・効率化・拙速の時代は終わりを告げた。
人々はいま、スローライフ、スローフードを求めている。
効率一辺倒ではない、ゆっくりとした落ち着いた生活を求め始めている。
その時代に地下鉄と都営バスを24時間営業にするというのは、時代錯誤である。
このような時代錯誤の人物だからこそ、人権意識、平等意識のない、次元の低い発言を示すのだ。
イスラム世界でのオリンピック開催がこれまで行われていないなら、日本は率先してイスラム世界でのオリンピック開催に協力する姿勢を示すべきだろう。
ブラジルでのオリンピック開催にも意義がある。
東京は立候補を取り下げて、トルコや2016年のブラジルでのオリンピック開催に協力する立場を明らかにするべきだ。
スポーツそのものの価値は高いし、スポーツに力を注ぐアスリートの活躍が私たちに与えるエネルギーは大きい。
スポーツを否定する考えは毛頭ないのだが、スポーツの周囲に群がる強欲な資本主義者の姿は醜い。
また多くの利権政治屋が強欲資本主義者たちと肩を並べてオリンピック利権に群がってくる。
日本を狙う外資のハゲタカ、官僚利権を手放さないシロアリ、そして、強欲な資本主義者たちというハイエナに、日本が食い荒らされる。
続きは本日の
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
第557号「猪瀬氏メトロ24時間営業構想は都民寿命短縮化目的か」
でご購読下さい。
2011年10月1日よりメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(月額:525円(税込)/配信サイト:フーミー)の配信を開始しました。
創刊月2011年10-2012年6月は、このようなテーマで書いています。ご登録・ご高読を心よりお願い申し上げます。詳しくはこちらをご参照ください。
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、info@foomii.com までお願い申し上げます。
金利・為替・株価大躍動 ~インフレ誘導の罠を読み解く 価格:1,785円 通常配送無料 |
消費税増税 「乱」は終わらない 価格:1,470円 通常配送無料 |
国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る 価格:1,470円 通常配送無料 |
![]() |
消費増税亡国論 三つの政治ペテンを糺す! 価格:1,000円 通常配送無料 |
日本の再生―機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却 価格:1,575円 通常配送無料 |
日本の独立 価格:1,800円 通常配送無料 |
売国者たちの末路 価格:1,680円 通常配送無料 |
知られざる真実―勾留地にて― 価格:1,890円 通常配送無料 |
消費税のカラクリ 価格:756円 通常配送無料 |
戦後史の正体 価格:1,575円 通常配送無料 |
日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 価格:798円 通常配送無料 |
![]() |
日米同盟の正体~迷走する安全保障 価格:798円 通常配送無料 |
検察崩壊 失われた正義 価格:1,365円 通常配送無料 |
検察の罠 価格:1,575円 通常配送無料 |
![]() |
「主権者」は誰か――原発事故から考える 価格:525円 通常配送無料 |
![]() |
原発のカラクリ―原子力で儲けるウラン・マフィアの正体 価格:1,680円 通常配送無料 |
« シンデレラの運命をたどってきた日本国憲法 | トップページ | 日本国憲法がシンデレラであるとする理由 »
「2012年東京都知事選」カテゴリの記事
- 猪瀬都知事辞意表明は事件捜査の出口でなく入口(2013.12.19)
- もし裏金受領の主が猪瀬氏でなく小沢氏だったら(2013.12.04)
- 猪瀬直樹氏はオリンピック招致撤退を表明すべき(2013.05.01)
- 野合連合提唱石原知事後任に孫崎享氏擁立を提唱(2012.10.27)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 猪瀬直樹氏はオリンピック招致撤退を表明すべき:
» 富士山うんぬんの背後では戦争屋の工作活動が不気味に繰り広げられており、鳥インフルという生物テロやオスプレイの追加配備はアジア情勢に暗雲が漂い始めていることの証左だ。 [高橋央の『日本社会白書』]
@font-face {
font-family: "Arial";
}@font-face {
font-family: "MS 明朝";
}@font-face {
font-family: "Century";
}@font-face {
font-family: "Century";
}@font-face {
font-family: "@MS 明朝";
}@font-face {
font-... [続きを読む]
» 【交通】暴れる地下水、60m上昇も…首都高・鉄道影響 [政治経済ニュース・今私の気になる事]
東京都内の地下水位が40年前と比較して、最大で約60メートル上昇していたことが都などの調査でわかった。 戦後から高度成長期にかけて工場などが大量の地下水を使用して地盤沈下が進み、これを食い止めようと長年にわたってくみ上げ規制を続けてきたためだが、水…... [続きを読む]
» 猪瀬都知事は直ちに辞職せよ [街の弁護士日記 SINCE1992at名古屋]
東京オリンピック誘致のために訪米していた猪瀬都知事が、ニューヨークタイムズのインタビューに対して、とんでも発言をして騒動になっている。発言を撤回し、謝罪と夕刊は報じているが、それですむ問題ではない。ことはオリンピック誘致の成否の問題にとどまらない。しかるべきケジメを付けなければ、日本が失うものがあまりにも多い。「真意が伝わっていない」「文脈が違う」「雑談の中で出た話だ」とする知事の言い訳を踏まえた... [続きを読む]