これから真価が問われる期待先行のアベノミクス
日経平均株価の高値は3月21日に記録した。
12,635円。
昨年11月13日の終値が8661円。
日経平均株価は4ヵ月で3974円、45.9%も上昇した。
野田佳彦氏が衆議院解散を宣言したのと同時に、安倍晋三政権の誕生が予想され、金融緩和強化予想=円安=株高の反応が生まれてきた。
実際に、12月16日の総選挙を通じて安倍晋三政権が誕生した。
そして、安倍晋三氏は、日銀人事において、インフレ誘導派の人物を日銀幹部に据えることに成功した。
この事態が進展するなかで、円安=株高の反応が続いてきたのである。
日経平均株価が高値をつけた3月21日。
日本銀行総裁に黒田東彦氏が就任した日である。
誠に皮肉な現象であるが、日経平均株価はこれまでのところ、黒田新総裁が就任して以来、下落基調を続けている。
これでは、何のための日銀人事であったのかということになる。
黒田=岩田規日銀は、非常に厳しい船出を迎えている。
『金利・為替・株価特報』2013年3月29日号のタイトルおよび目次を紹介しておく。
タイトル「発射台の高さがもたらす拙速金融政策運営」
<目次>
1.【新刊紹介】『金利・為替・株価大躍動』刊行のお知らせ
2.【概観】株価動向を決定する最重要因子
3.【為替】ドル高は持続するか
4.【金融政策】追い込まれる黒岩田日本銀行
5.【金利】陰極まれば陽に転じる金利
6.【欧州】キプロス波乱とユーロの変調
7.【株価】高値波乱領域に入るNY株価
8.【政局】陸山会裁判の闇と一票の格差
9.【中国・金】最強のパフォーマンス示す金投資
10.【投資戦略】カギを握る円ドルレート
安倍晋三氏の豪語、金融市場の期待の高まりがあるから、黒田岩田体制の日銀=黒岩田日本銀行は、非常に厳しい船出となる。
期待が低ければ船出はし易いが、期待が高すぎると船出は難しくなる。
株価を決定する最重要因子も再確認してゆかなくてはならない。
4月1日、日本銀行短期経済観測調査2013年3月調査結果が発表された。
大企業製造業の業況判断DIは前回12月調査の-12から-8へと4ポイント改善した。
しかし、改善幅は市場の事前予想を下回った。
大企業非製造業の業況判断DIは12月調査の+4から+6へと2ポイント改善した。
製造業、非製造業ともに、株価上昇ほどの業況判断の改善は実現していない。
株価は先行き予想の変化に対応して変動するから、業況判断の現実が変化するにはタイムラグがある。この点が改めて明確になった。
しかし、日銀短観には気になる部分が多く示された。
短観では、大企業調査とは別に、中堅企業、中小企業の調査結果も発表になる。
中堅企業の業況判断DIは
製造業 -12 → -14
非製造業 -1 → 4
中小企業の業況判断DIは
製造業 -18 → -19
非製造業-11 → -8
となった。
非製造業では業況判断の改善が観察されたが、製造業では、逆に業況判断が悪化している。
2013年度の企業の収益見通しでは、全規模合計で
製造業 +9.5%
非製造業 +3.9%
全産業 +5.9%
と改善が見込まれているが、設備投資計画では、土地投資を含むベースで、2013年度は全規模全産業で-3.9%の計画となっている。
日銀は4月3、4日に新体制下での初めての金融政策決定会合を開く。
金融政策を改良すれば必ずインフレ率を引き上げることができると豪語してきた人々の実力が問われることになる。
拙著『金利・為替・株価大躍動』(ビジネス社)にも記述したが、いわゆる「伝統的金融政策手段」を用いてインフレ率を引き上げることは困難である。
現在の状況下でインフレ率を引き上げるには、「非伝統的金融政策手段」を用いることが必要である。
しかし、「非伝統的金融政策手段」を活用すると、必ず副作用がある。
つまり、魔法の杖は存在しない。
懸念されるのは、インフレ率引上げは可能であるとの「豪語」を出発点においてのスタートが影響して、副作用の強い政策実行に突進してしまう可能性である。
市場はいま、黒岩田日本銀行の金融政策を、固唾を呑んで見守っている。
続きは本日の
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
第532号「7月参院選までに政治の風向きが急変する可能性」
でご購読下さい。
2011年10月1日よりメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(月額:525円(税込)/配信サイト:フーミー)の配信を開始しました。
創刊月2011年10-2012年6月は、このようなテーマで書いています。ご登録・ご高読を心よりお願い申し上げます。詳しくはこちらをご参照ください。
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、info@foomii.com までお願い申し上げます。
金利・為替・株価大躍動 ~インフレ誘導の罠を読み解く 価格:1,785円 通常配送無料 |
消費税増税 「乱」は終わらない 価格:1,470円 通常配送無料 |
国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る 価格:1,470円 通常配送無料 |
![]() |
消費増税亡国論 三つの政治ペテンを糺す! 価格:1,000円 通常配送無料 |
日本の再生―機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却 価格:1,575円 通常配送無料 |
日本の独立 価格:1,800円 通常配送無料 |
売国者たちの末路 価格:1,680円 通常配送無料 |
知られざる真実―勾留地にて― 価格:1,890円 通常配送無料 |
消費税のカラクリ 価格:756円 通常配送無料 |
戦後史の正体 価格:1,575円 通常配送無料 |
日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 価格:798円 通常配送無料 |
![]() |
日米同盟の正体~迷走する安全保障 価格:798円 通常配送無料 |
検察崩壊 失われた正義 価格:1,365円 通常配送無料 |
検察の罠 価格:1,575円 通常配送無料 |
![]() |
「主権者」は誰か――原発事故から考える 価格:525円 通常配送無料 |
![]() |
原発のカラクリ―原子力で儲けるウラン・マフィアの正体 価格:1,680円 通常配送無料 |
« 一票の格差は自と民TPPは1対2で討論のNHK | トップページ | 日銀私物化インフレ誘導勢力の脅威を甘く見るな »
「安倍晋三新政権」カテゴリの記事
- ハゲタカの手先に成り下がっている安倍政治(2017.12.03)
- プーチン武蔵「一本勝ち」に終わった日ロ首脳会談(2016.12.17)
- 急坂を転げ落ち始めた安倍政権(2016.11.25)
- 安倍ジョンイル所信表明と既得権支配維持の方策(2016.09.27)
- 安倍政権の凋落に歯止めがからない気配濃厚(2016.02.05)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: これから真価が問われる期待先行のアベノミクス:
» 国民栄誉賞に浮かれている隙に、隣国では着実に軍靴の足音が響き始めている。自国民の朝鮮半島退去を計画する外国政府が出始めたが、日本国も最悪の事態に備えておかねばならぬ。 [高橋央の『日本社会白書』]
@font-face {
font-family: "Arial";
}@font-face {
font-family: "MS 明朝";
}@font-face {
font-family: "Century";
}@font-face {
font-family: "Century";
}@font-face {
font-family: "@MS 明朝";
}@font-face {
font-... [続きを読む]
» 安倍首相を皮肉るストリートアートを渋谷パルコ前で発見。日本はアメリカの言いなり? [SwinginThinkin]
日本の首相、安倍晋三さんを皮肉ったストリート・アートを渋谷で見掛けました。(左)放射能ハザードシンボル。(中央)アメリカ国旗。(右)アーミー。それらをバンダナ風にデザインして口を覆うギャング・スタイル。...... [続きを読む]
« 一票の格差は自と民TPPは1対2で討論のNHK | トップページ | 日銀私物化インフレ誘導勢力の脅威を甘く見るな »