国民主権の根本原理が踏みにじられている
昨年12月の総選挙を無効とする訴えが全国の裁判所に提起されているが、岡山と広島で選挙無効の判決が示された。
広島の場合は、11月まで時間的猶予を与え、区割り委員会の今後の対応を見守るとしている。
岡山では現時点での無効判断が示された。
最終的には最高裁の判断に委ねられることになるが、特定の選挙区だけではなく、全選挙区の選挙、総選挙全体を無効とする判断が示される可能性は低いだろう。
それでも、一票の格差が違憲状態あるとの司法判断が示されているにもかかわらず、格差を是正せずに総選挙を実施した野田佳彦氏の責任は重大である。
司法の独立、三権分立を踏みにじる行動を示したことになる。
安倍晋三政権は衆議院で圧倒的多数を確保しているから、解散総選挙を実施して、同規模の議席を確保できるとの読みがなければ衆院解散には踏み切らないだろう。
一票の格差是正に向けての立法府の責任が厳しく問われることになるが、いまの政治状況が急変する可能性は高くない。
安倍政権が司法判断を厳粛に受け止めるなら、7月参院選の際に、衆参ダブル選挙を行うべきだろう。
しかし、自己の欲得で行動を決めていると見られる安倍晋三氏が、そのような懐の深い判断を示す可能性は低いだろう。
メディアが安倍政権絶賛の報道体制を敷いており、この状況が7月参院選まで維持されることを警戒しなければならない。
原発、TPP、オスプレイについて、日本の主権者がどのように問題を捉え、どのような判断を下すのかが重要なのだ。
総選挙が無効であるとの訴えを起こした弁護士グループが、もっとも強調していることは、日本国憲法が定める国民主権の原理がないがしろにされている現実を打破しなければならないということだ。
現行の日本国憲法では、主権者は国民であることが明記されている。
ところが、現実の政治では、この根本がないがしろにされている。
野田佳彦政権の最大の罪は、選挙の際に主権者と交わした約束=契約を踏みにじっておいて、開き直り、居直ったことだ。
これが根本の問題である。
重要な問題についての結論を決める権限を有するのは主権者である。
代議制民主主義は、すべてのものごとを主権者が直接決めるのでは、手続きが複雑になりすぎるから、主権者が代表者を国会に送り、この代表者にものごとの判断を委ねるというものだ。
この基本が日本国憲法前文に記されている。
「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、
(中略)
ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。
われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」
この根本原則が踏みにじられていることが問題なのだ。
2009年の総選挙の際に、「マニフェスト選挙」の言葉が多用された。
その意味は、国民が主権者であることを踏まえ、選挙の結果としてつくられる政権が実行する政策運営について、その内容を主権者国民の判断によって拘束するというものだった。
重要問題について、決定する権限を持つのは主権者国民であることを、実現するための方策がマニフェスト選挙だったのだ。
ところが、菅直人氏や野田佳彦氏は、この根本原理を踏みにじった。
主権者との契約を一方的に破棄して、主権者の判断に反する行動を取り続けた。
当然の結果として、菅直人氏も野田佳彦氏も、主権者から厳しい断罪を受けることになったが、この悪弊が、いまの安倍政権にまで引き継がれている。
本来、2012年12月の総選挙では、原発、消費税増税、TPPの三大問題について、国民に判断を仰ぐことが求められた。
ところが、メディアはこの最重要争点を隠し、民主党政権を選ぶか自民党政権を選ぶかの選挙であるなどと喧伝した。
安倍晋三氏の自民党などは、TPPについて、「ウソつかない、TPP断固反対、ぶれない」などのキャッチコピーで主権者にアピールして選挙に臨みながら、選挙が終わると、手のひらを返してTPP交渉参加方針などを決定した。
国民主権の大原則を踏みにじる行動が取られている。
このような現実に対して、怒りの気持ちで対応すべきは主権者である国民である。
辺野古、TPP、原発、そして消費税増税について、主権者である国民が最終的にどう判断するのかをじっくりと考えなくてはならない。
続きは本日の
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