このまま進めば必ず激しいインフレが創作される
日銀総裁人事が本格的に検討される時期に入っている。
自民党は衆議院で294議席を保持しているから、自民党の提案は衆議院では賛成多数となる。
しかし、参議院では自民党は定数242に対して83しか議席を有しない。
公明党の19を合わせて102議席だ。
提案を通すにはあと20議席が必要だ。
民主が88、みんなが11、維新が3議席だ。
自民党に近い新党改革が2議席だ。
自公+みんな維新+改革でも116議席だから、122議席には届かない。
民主の賛成が必要になる。
これが実は二院制の機能だ。
参議院が存在し、議席が3年ごとに半数だけ改選される。
したがって、しばしば「ねじれ」現象が生まれる。
「ねじれ」は意思決定を遅らせるが、政治の大転換に対する「ダブルチェック」の意味がある。
最近の総選挙を見ると、2005年の郵政民営化選挙で自民党が大勝。
2009年の政権交代選挙では民主党が大勝。
2012年のシロアリ消費税選挙では民主大敗=自民大勝だった。
振り子が選挙のたびに反対に振り切れる。
このとき、参院とのねじれがなければ、政治全体が振り子の大振動を繰り返すことになる。
政治の方向が右に振れ、左に振れたのでは、長期的な施策を軌道に乗せることもかなわなくなる。
衆議院の大転換があり、その次の参院選でその大転換についての評価を主権者国民が下す。
衆参両院の選挙で連続して大勝して初めて、本格的な政権体制が整う。
それまでは言わば「試用期間」だ。
「試用期間」の実績を主権者国民が判定する。
二度の国政選挙で信任を得れば、本格的な政治運営が可能になる。
この意味で、参議院は政治の安易な暴走を防ぐための安全弁の役割を果たしている。
みんな・維新が小泉・竹中政治の二番煎じだとすると、安倍政権の基本路線と極めて近い。
自公+みんな維新が固まって、今回の総選挙のように参議院でも議席の大多数が握られてしまえば、安倍政権の本格的な暴走が始動してしまう。
憲法は書き換えられ、日本は名実ともに米国の実質植民地に転じることになるだろう。
この暴走列車を止めるには、「生活」が躍進する必要があるが、同時に、民主党を再び主権者国民政党に刷新させることが必要である。
民主党を主権者国民政党に回帰させることができるかどうか。
これが日本政治を刷新するための必要条件になるだろう。
この意味で、日銀総裁人事での民主党の行動は極めて重要な意味を持つことになる。
安倍晋三氏は自分の考えに共鳴する人が日銀総裁の条件であることを公言しているが、極めて危険な考え方だ。
現行の日本銀行法の精神をまったく理解していない。
日銀の政策のあり方については学者の間でも意見は対立しているが、もっともバランスのとれた適正な意見を述べているのは野口悠紀雄氏である。
私がブログ、メルマガで書いたことを、野口氏も同じように指摘している。
日銀が非伝統的金融政策手段を用いれば、インフレも円安も誘導することは可能なのだ。
日銀がこの非伝統的金融政策手段を活用するのは、日銀が政府の支配下に置かれるときである。
1月30日付ブログ記事
メルマガ第478号記事
に記述したように、日銀が無尽蔵に日銀券を用意して、これを銀行窓口、役所窓口、鉄道駅、コンビニに山積みにして「ご自由にどうぞ」と貼り紙を置けばよい。
こうすれば、間違いなくインフレと円安が実現する。
この説明に書き加えなかったが、このとき、行動を起こして、これを決めるのは政府、財務省である。
政府が国債を日銀引受けで発行する。その発行代わり金を日銀から日銀券で引き出し、これを国中にばらまくわけだ。
日銀は返済のあての無い国債を強制的に保有させられる。
浜田宏一氏などが提案している政策は、究極的にはこのような方向の施策である。
このような危うい方向に日本銀行を誘導して良いわけがない。
本当に危険なことだ。
続きは本日の
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