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2013年1月23日 (水)

日本経済の問題根幹は「物価」ではなく「景気」だ

アベノミクスと呼ばれる安倍政権が提唱する経済政策の主張。


正しい部分もあるが大きく間違っている部分もある。


これを正しく整理して、正しい部分を残し、間違っている部分を正す必要がある。


アベノミクスの間違っている点を改めて示す。


三つある。


第一は、物価の問題と景気の問題を混同していること


第二は、中央銀行の独立性を排除しようとしていること


第三は、財政政策の中身を改悪しようとしていること


である。


正しい部分は何か。


それは、日本経済を再建するために財政政策の活用を示したことだ。


この点は進歩が見られる。

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これは20年来、私が提唱してきたことである。


財政政策の適切な活用を行わなければ日本経済の改善も財政再建も実現しない。私はこの主張を20年以上示し続けてきた。


これに対して、例えば竹中平蔵氏などは、財政政策活用は「時代遅れの考え方」、「オールドケインジアンの主張」などと罵倒していた。


ところが、クルーグマン教授などが財政政策の必要性を肯定的に主張し、実際に米国が2009年に大規模財政再策を実行するなどの現実が示されてきた。これらが背景だったのだろう。2001~3年にはケインズ政策を罵倒していた竹中氏などの発言が急変した。いまは、財政政策も必要などと言うようになっている。しっかりとした学問的な土台がないのだと思われる。


間違っていた考え方を正したことを望ましいことだが、かつて間違いはしっかり反省してもらいたい。

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経済の本格改善を実現するには、財政政策と金融政策の総動員が必要で、これと並行して、長期的に経済を活性化させる「構造改善策」が必要になる。財政健全化は重要な課題だが、これも経済の再生なくして実現しない。


これらは私が20年来主張してきたことである。詳しくは拙著『日本の総決算』(講談社)や『金利為替株価の政治経済学』(岩波書店)、『現代日本経済政策論』(岩波書店)などをご高覧賜りたい。ようやくこの主張に対する賛同者が増えてきた。


しかし、安倍政権の間違っている部分は正さねばならない。


その第一は、「景気」と「物価」を混同していることだ。


「景気」と「物価」は別の問題である。


「物価」が上がっても「景気」が良くなるとは限らない。「物価」が上がって「景気」が悪化したら最悪である。これを「スタグフレーション」と呼ぶ。


安倍政権は「物価上昇率」の引上げに熱心だが、「物価上昇率」が上昇して国民の生活が良くなるわけではない。


インフレや円安で利得を得るのは、借金をしている人、輸出企業、そして、ドル建て資産を保有している人々だ。

 

ただ、これはコインの裏表の一方だから、必ずその裏側がある。

 

預金者は押し入り強盗に遭ったように預金の価値を失う。輸入車は支払金額を強制的に増大させられる。ガソリン価格も灯油価格も上がるのだ。

 

物価が上がるだけで、景気が良くなる保証は存在しない。


物価が上がり、景気が悪くなる「スタグフレーション」が生まれないとはまったく言い切れない。


インフレは正当性のない経済的不公平を生み出すのである。

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これと二番目の問題がリンクする。


もっとも重要な事実は、日本政府が巨大な借金を抱えているという現実にある。


政府は激しいインフレを常に熱望している。


激しいインフレがたった一回起これば、借金を帳消しにできるからだ。


この熱望を持つ政府の支配下に日銀を置いて良いわけがない。


私は断言する。日銀が政府支配下に置かれることになれば、将来、必ず激しいインフレが引き起こされる。

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なかなか物価上昇率が上がらないと言うが、物価上昇率を上げる手立てがないわけではない。


激しいインフレを引き起こす方法はいくらでもある。


その実例を後段で紹介する。


これを「非伝統的手段」と呼ぶ。


「非伝統的手段」を用いればインフレを誘導できる。問題はそれが正しいのかどうかだ。


「景気をよくする政策」は正しいが、「インフレ率を引き上げる政策」は無条件で正しいとは言えない。


この点を踏まえると、日銀の独立性を奪う政策を実行することは間違っているというのが私の見解だ。

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他方で、安倍政権の経済政策は日本政治の時計の針を大きく逆戻りさせるものである。


「財政民主主義」が破壊されて「財政利権主義」に完全回帰した。


これが財政政策の中身の問題である。

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