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2013年1月17日 (木)

米国が日銀総裁に押し込もうとしている人物とは

日銀の白川方明総裁の任期が本年4月で満了になることを踏まえて後任人事が検討されている。


米国ではグリーンスパン氏が20年間もFRB議長を務めるなど、中央銀行トップの再任は珍しくない。


中央銀行トップの職責を果たせる人材は限られており、余人をもって代えがたい人材であるなら、再任を除外して検討することは適切でない。


この意味で白川氏を上回る適任者は存在しないと思われる。


日銀総裁就任者に求められる要件については、1月12日付記事


「日銀総裁に必要な第一の要件は売国者でないこと」


に、三点を掲げた。


1.売国者でないこと


2.金融政策に関する正しく深い学識と見識を備えていること


3.政治から一定の距離を保っていること


である。

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安倍政権関係者や野党党首などが、


・英語を話せること


・PHDの学位を保有していること


・企業経営の経験があること


などをあげているが、枝葉の事項と言うべきだろう。


英語を話せた方が良いのは事実だが、英語を話すことが必須の条件ではないだろう。


英語を話すが中央銀行トップとしての能力を欠く人物



英語を話さないが中央銀行トップとしての能力を備える人物


のいずれかを起用するのであれば、後者を起用することが間違いなく正しい。


PHDは博士の学位だが、博士の学位付与など極めて杜撰なものだ。


私も大学の教員として博士課程修了判定などに関わったことがあるが、審査はまったく厳格性を欠いている。


PHDの学位を持たないが極めて優秀な学者が存在する一方、PHDの学位を持つがまったく能力を欠く学者も無数に存在する。


企業経営の経験の有無も本質的な問題でない。

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「売国者でないこと」が必要条件であり、


「金融政策・金融理論に関する正しく深い学識・見識を有すること」が十分条件である。


そのうえで、金融政策運営を政争の具にしないために、政治から一定の距離を保っている人物を選ぶことが望ましい。

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昨日付の記事にも記述したように、現行の日本銀行法は、「通貨及び金融の調節」について、

 

「(日銀の)自主性は尊重されなければならない」


と規定している。


したがって、安倍晋三氏が次期日銀総裁人事について、


「デフレ脱却に向け、金融政策で私の考え方に共鳴する人を人選したい」


と述べたことは、日本銀行法の本旨に照らして適正ではない。


歴史の教訓に鑑みて、日本銀行の政府からの独立性を重視する規定が盛り込まれているのである。

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政府の利益と預金者である一般国民の利益は相反する。


中央銀行の政府からの独立性を重視するのは、中央銀行が一般国民に不利益を与えて政府に利益を与えることを防止するためである。


管理通貨制度の下においては、市場に流通する貨幣量は中央銀行の意志によって恣意的に操作される可能性がある。


このとき、中央銀行が政府の支配下に置かれると、中央銀行の行動が政府に利益を与え、一般国民に不利益を与える方向にバイアスが欠けられる蓋然性(=確率)が高まる。


これを回避するために、中央銀行を政府から独立させることが求められている。

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具体的に言えば、激しいインフレが経済主体に大きな得失を与えることを十分に踏まえる必要があるのだ。


インフレは債務者に利得を、債権者に損失を与える。


物価が10倍になることを考えてみよう。


1000万円の借金を持つ人と、1000万円の預金を持つ人とを考える。


年収はいずれも500万円とする。


物価が10倍になるとき、年収も連動して5000万円程度になるだろう。


ところが、借金と預金の額面は1000万円で変わらない。


借金を持っている人は、年収の20倍の借金が年収の2倍の借金になる。


預金を持っている人は、年収の20倍の預金が年収の2倍の預金になってしまう。


これを「債務者利得」、「債権者損失」という。


インフレは借金をしている人に利益を与え、預金をしている人に損失を与える。

中央銀行が政府に支配されると、金融政策運営がインフレを発生させる方向に誘導されやすくなる。


安倍晋三氏がインフレ誘導を訴え、金融市場が円安=株高の方向に反応しているから、「インフレ誘導政策=政治による日銀支配」があたかも「正義の政策」のように報じられているが、一般国民にとっては決して歓迎するべき話ではないことを知っておかなくてはならない。

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さて、もうひとつの問題は、米国が「日本からの収奪」を実現するために、深謀を巡らせている点についての考察だ。


次期日銀総裁候補として何人かの人名が取り上げられているが、意図的にある人物の名前が取り除かれている。


それが竹中平蔵氏である。


事前に取り上げられると反対論が巻き起こるために、意図的に隠蔽されているのだと思われる。


米国が米国の策謀として竹中氏を日銀総裁に押し込むことを考えている可能性がある。


安倍氏が米国の指令に沿って動く場合、短期日の間に竹中案を提示して一気に決めてしまう可能性がある。


「みんな」、「維新」は純然たる「対米隷属勢力」であると判断できる。


また、民主党の悪徳7人衆(野田・岡田・前原・枝野・玄葉・安住・菅)も純然たる「対米隷属勢力」である。


自民、公明に「みんな」、「維新」と民主党対米隷属派を加えると、参院でも過半数の票を獲得することができる。


安倍晋三氏が米国の指令に従って、米国のエージェントを日銀総裁に押し込むことを提案すれば、これが通ってしまうリスクが存在するのだ。


これまでの歴史事実は、米国が米国の利益のために竹中氏を活用してきたと判断できるものである。


その具体的事実を検証してみよう。

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