メディアが大宣伝する「第三極」に取り入る野田佳彦氏
衆議院の解散・総選挙に関する情報戦が活発に展開され始めた。
「解散権は内閣総理大臣の専権事項」
などという言葉が聞かれるが、日本国憲法にそのような定めは存在しない。
解散権について定めがあるのは日本国憲法第六十九条であり、衆議院で内閣不信任決議案が可決されたときに内閣は総辞職か解散を選択しなければならないとの規定が置かれているだけである。
日本国憲法
第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
衆議院の任期は4年であり、内閣不信任決議案が可決され、内閣が総辞職しない場合に解散・総選挙が行われるとの規定が置かれているわけだ。
この条文に、「内閣総理大臣の専権事項」としての解散権の規定はない。
「内閣総理大臣の専権事項」としての解散権は、憲法の勝手な解釈によって存在するかのような説明がなされてきただけのものであって、その法的根拠は極めて希薄なものである。
日本国憲法第7条が勝手に拡大解釈されてきただけに過ぎない。。
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。
第三項に「衆議院の解散」とあり、天皇の国事行為が「内閣の助言と承認により」行われるとの規定を拡大解釈して、内閣総理大臣に衆議院の解散権があるとの拡大解釈が行われてきたのである。
しかし、天皇の国事行為の規定を活用した衆議院の解散は、「天皇の政治利用」にあたるものであり、日本国憲法における天皇の位置付けを踏まえるなら、この条文を活用する内閣総理大臣による衆議院解散は本来認められるべきものない。
この点について、元参議院議員で自民党参議院議員会長を歴任した村上正邦氏がブログ「不惜身命」で問題点を指摘している。
以下に該当部分を転載させていただく。
「「1票の格差」が是正されていない現在の国会は、衆・参とも、最高裁から違憲判決を下された脱法状態にあります。
異常事態にあるのは、一票の格差だけではありません。
現在、国会では、重要な局面で、違法・無法な制度やしきたりが幅をきかせ、国会運営や議会主義、政党政治のあり方を根本からゆがめています。
その一つが、内閣総理大臣の専権事項といわれている衆議院の解散権です。
内閣総理大臣の解散権は、憲法に謳われているわけではありません。
衆議院の解散権を規定している憲法第69条には、内閣は、衆議院で不信任の決議案が可決されたときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならないとあるだけです。
総理大臣が、衆議院解散の専権事項をもつとする根拠は、天皇の国事行為を定めた憲法第7条に「天皇は、内閣の助言と承認により、国事に関する行為を行ふ」とあるからです。
その7条の3に「衆議院の解散」が明記されています。
この国事行為における「内閣の助言と承認」が、総理大臣による衆議院解散権の根拠になっているのです。
これは、天皇の政治的利用で、第7条を政権争いの道具にすべきではありません。
げんに、昭和17年のサンフランシスコ条約締結まで、第7条による衆院の解散はGHQによって、禁止されていました。
野田首相が約束して、自民党が履行を迫っている「近いうち解散」も、7条の3にもとづく慣例で、内閣不信任決議をともなわない解散は、約束すべきものでも、履行を迫るべきものでもありません。
国会運営は、憲法第69条に定められたルールにしたがって、粛々とすすめていかなければ、国会の機能がマヒして、政治の劣化が、さらにすすむことになります。」
(ここまで「不惜身命」ブログからの引用)
衆議院の解散は内閣不信任決議案が可決されたときに、内閣が総辞職の道を選択しない場合にとられるべき措置であって、巨大な国費を投入して実施される衆議院総選挙によって定められた議席構成は4年の任期を持つものであり、首相の私有物ではないから、「専権事項としての解散権」という考え方自体が、国会の私物化といえるもので、「解散権」に関する見直しを早急に行うべきである。
このブログ記事を掲載された村上正邦氏が新しい著書を刊行された。「不惜身命」ブログに掲載した昨今の政治の諸問題についての所見の一部を収録した新著である。
タイトルは、
『政治家の「あるべきようは」 ―日本を洗濯致し候(そうろう)』
(文芸社)
永田町を知り尽くす元自民党国会議員による警世の書である。
国民の信を得ずに暴走を続ける野田佳彦氏であるが、内閣支持率も一段と低下して、いよいよ解散に追い込まれる局面を迎えている。
解散・総選挙は正当に、内閣不信任決議案を可決して実施されるべきものと思う。
その野田氏が、TPP交渉参加意思を表明し、総選挙に突入する構えを示し始めた。混乱する政局の間隙を縫って、なお権力にしがみつこうとする野田氏の心情がよく表れている動きである。
野田氏が狙っているのは、次の選挙でメディアが全面支援している「第三極」に取り入って、民主党と第三極とによる連立政権を樹立して政権を維持しようとの浅はかな考えである。
第三極としてメディアがもてはやしているのは、石原・みんな・維新である。
この第三極にTPP賛成の旗を掲げさせて、TPP賛成の民主党と、TPP賛成の石原・みんな・維新で連立政権を樹立しようとの思惑が透けて見える。
続きは本日の
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