エリートサラリーマンと派遣と失業しか残らない
橋下徹氏がクレームをつけた週刊朝日記事の現物を確認した。
この記事には二つの大きな問題がある。
ひとつは同和地区について、かなり詳細な地名が示されていること。
橋下氏の人格についての批判は自由だが、
「橋下徹のDNAをさかのぼり本性をあぶりだす」
との表紙記述を伴って被差別部落の記述がなされていること。
いわれなき不当な差別を助長する論理構成になっていることは妥当でない。
この点についての橋下氏の主張は妥当である。
実際、週刊朝日は謝罪の意思を表明し、次号で謝罪広告を掲載することとした。
しかし、本ブログおよびメルマガで記述した橋本徹氏の過去の不適切な行動が是認されるわけではないことを銘記しておく。
他者の不当な行為に対して抗議することは正当な行為だが、そのことが、自分の他者への不当な行為を正当化する理由にはならないことをしっかりと認識するべきである。
話が変わるが、ジャーナリストの斎藤貴男氏との共著
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について、尊敬する渡邉良明氏が4回にわたって詳細な書評をブログに掲載下さった。
同書を丹念にご精読くださり、過分な書評を掲載下さったことに深く感謝の意を表したい。
極めて精密な分析を示され、本書のポイント部分を的確に抽出くださっている書評であるので、まずは、この書評をご精読賜りたく思う。
最終回の書評記事から、その一部を転載させていただく。
「ところで、今日、小泉・竹中時代の「新自由主義」が息を吹き返すような、許し難い勢いや状況がある。
ここで、植草氏の語る言葉は、ひじょうに含蓄がある。彼は言う。
「竹中さんは『頑張った人が報われる社会』といっていました。通常の日本語の意味で、頑張った人が報われるのであれば間違いではないと思うんです。悪い話じゃない。
ところが、竹中さんが言う『頑張った人が報われる』というのは、例えば、金融の分野で大儲けをする。で、会社を上場させて、株式を分割して、株価を吊り上げて錬金術のように巨大な不労所得を得る。これを竹中さんは『頑張った人』と呼んだわけです。
これは、『頑張った』のではなく、『うまいことをやった』にすぎません。『うまいこと』をやるために、法律の抜け穴をくぐってきているかも知れません」と。
まったく、その通りだと思う。ここには、竹中の欺瞞と悪辣さを見事に看破した植草氏の正しさと限りない明晰さが、遺憾なく発揮されている。
とりわけ、植草氏が強調するのは、次の点だ。同氏は、こう力説する。
「新自由主義の流れを民間部門で放置すると、格差はさらに拡大します。 現在の時代環境を踏まえると、分配および再分配における政府の役割は飛躍的に大きくなっていることを強調しなければなりません。
成長論が分配の格差容認論とセットになってしまっていることが、現代日本の一番の問題じゃないかと思います」と。
ひじょうに明快な主張だ。特に、植草氏の最後の言葉に注目したい。 益々深刻化する国内の格差問題、かつて、それを助長・増幅させた小泉・竹中政治は、もっと厳密に告発されなければならないであろう。
企業が労働者を消耗品として扱うことを許してはならないのです。
事実、先ほどの「頑張った人が報われる」という言葉に関して、同氏は、次のように述べる。
「『頑張った人が報われる』という話ですが、世の中で本当に頑張っている人はいくらでもいます。ラーメン屋を経営して、汗にまみれて朝から晩まで働いて、年収がいくらになるのかという話です。
大企業は正社員を一握りしか採用せず、大多数の若者がフリーターになって年収が二○○万に届かない。この人たちが一千万人いる。懸命に働いているのにそこから抜け出すことができない。
これを『頑張った人が報われない社会』と言うんです。
『頑張った人が報われていない』現実を放置して、きわどいことをやって億万長者が生まれることを『頑張った人が報われる社会』だと絶賛した竹中さんの感覚が、いかれてしまっていたのだと思います」と。
(中略)
また、「サラリーマン税制は人々から『思考』することを奪った」と考える斎藤氏にとって、同氏の立場とか考えの基本にあるのは、「個人一人ひとりの尊厳を守りたい」ということである。
さらに、この両者が主権者であるわれわれに必要なことと考えるのは、「思慮深さと積極的な行動」である。
(中略)
両者は、消費増税後の世界が、まことに恐るべきものであることを提示する。斎藤氏は、警鐘を鳴らして、次のように訴える。
「僕はね、やっぱり一人ひとりの生活を考えたときに、とんでもない歪んだ社会になるのを怖れるんです。何度も言いましたが、消費税増税で転嫁ができない中小零細が全部潰れる。・・・・
第一次産業は全部派遣。自営業とか零細企業でやっていた人たちも、もはやそういう業態そのものが成立しなくさせられるのですから、派遣以外の働き方はまず見つからないでしょう。
だったら世の中全体でどういう働き方が残るか。エリートサラリーマンか、派遣か失業者か、そのいずれかしかない。これしかない社会というのが僕は怖くてならないんですよ」と。
日本経済の第一線で果敢に取材活動をしてきた斎藤氏の言葉だけに、ひじょうに重いと感じる。
(中略)
また、「支配者はエネルギーと食糧と武器の独占を狙う」というテーマの中で、植草氏は、自らの危機意識を、次のように吐露する。
「私もいま、将来に向けた支配者たちの意図というのを感じています。それは、本格的な植民地化の始動ということじゃないかと思うんです。
その支配者とは誰なのか、アメリカなのかどうなのか、いろんな見方がありますが、それはともかく、ごく少数の巨大資本がいろんな意味で圧倒的な力を持っているときに、彼らが人々を従属させたり隷属させたりする手法というのは、人々が生きていく上で必要不可欠なものを握ってしまうということでもあります。
それは、エネルギー、食料、そして武器です。この部分を握られてしまうと、 人は隷属せざるを得なくなります。
だからこの勢力からすれば、日本が、そして世界が再生可能エネルギーの方向に走るのを命がけでとめなきゃならないということになりますね。鉱物資源とかウランなどに依存する状況を残さなきゃいけないのですから。
人間の叡知を考えると、太陽光、風力、水力、地熱などから永続的に活用できるエネルギーを採取する技術は、進化する可能性が大いにあると思います。
また、食糧は一番根源的なものだと思いますが、最近は農作物の種子の管理で、種子の出来ない作物を遺伝子組換えで作ってそれを管理する・・・」と。
(中略)
このような極めて厳しい現状に対して、われわれ国民には、まことの”思慮深さ”が求められる。
しかし、そのためには、与えられる情報が公正、かつ公平なものでなければならない。
だが、現実には、それは今日の日本では、まさに「絵に描いた餅」である。
(中略)
皆さんも、本書を是非購入され、常に手許に置いて愛読なさることを、私は、心から願いたい。それだけの価値のある良書だ。」
続きは本日の
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