他者に厳しく自分に甘い橋下徹という人物
大阪市の橋下徹氏が週刊朝日記事に噛みついている。
週刊朝日が連載した記事が気に入らないのだという。
記事は作家の佐野眞一氏が執筆したもので、橋下徹の人物像を徹底的に検証するもののようである。
橋下氏が問題にしているのは橋下氏の実父の出身地が被差別部落にあたるとの記述があるというものである。
私はまだ朝日記事を読んでいないので事実関係を確認できないが、特定の地名を表示して地名と被差別部落を直接結び付ける表現を取っているとするなら、それは問題である。
かつて「部落地名総鑑」という書物が大きな問題になった。
全国の被差別部落の名前・所在住所などが一覧のかたちで記された差別図書である。部落出身者を就職時や結婚の際に排除・差別することを目的として、興信所や探偵社が密かに出版し、多数の大企業や個人などに「極秘資料」として販売していたものである。
部落問題は日本に残存する、現世の不条理、理不尽を代表する問題のひとつである。
歴史的な淵源は深く、いまなお、日本の深刻な人権問題である。
橋下氏が被差別部落問題を重要問題と位置付け、問題の適正な解決に向けて力を注ぐのであれば、それは正しい行動である。
しかし、橋下氏は週刊朝日記事のこの部分だけを取り出して、
「これは、出自ですべてを判断する血脈主義そのものであり、この記事が掲載された週刊朝日を出版している朝日出版、およびその株主である朝日新聞社が、人の価値を出自だけで判断する考えを有する機関である」
と断定していることには、大きな論理の飛躍がある。
そもそもこの記事は週刊朝日が社として執筆した記事ではない。
佐野眞一という実績も実力もある作家が執筆した署名記事である。
本文を読んでいないので断定はできないが、父親が被差別部落の出身だから、そのことだけで橋下徹氏がだめな人間であるとの短絡的な結論を導く文章を佐野氏が記述したとは考えにくい。
また、父親の出身地の住所を明記して、この住所が被差別部落に該当する地名であるという書き方をしているのだろうか。橋下氏の記者会見発言ではそのように受け取れる記述があるということになるが、この点も原文で確認する必要がある。
橋下氏は、佐野氏が父親の出身地だけを唯一の根拠として、そのうえで、それだけを理由に橋下徹氏の人格を否定する論理を採用していると強調したが、佐野氏の主張の論理構成は逆なのではないか。
つまり、橋下氏の現実の言動を観察し続けた結果として、佐野氏は橋下氏という人物に対して否定的な判断を下した。
その判断の上で、そのような人格を形成してきたものが何であったのかをさまざまな角度から推察してみようということなのではないか。
橋下氏は佐野氏が十分に裏付けのない伝聞情報を根拠にして記述していることを問題にしているが、橋下氏は公人であり、日本国憲法は言論の自由を保障しているから、佐野氏が法律で許される範囲内で言論活動を展開することについて、その手法について橋下氏が指示、命令を下す権限はないと言わざるを得ない。
このことを問題にしているのは、橋下徹氏が私に対して行った行為と、橋下氏の今回の問題に対する行動との間に整合性がないからである。
2006年9月21日に放送された「ムーブ!」と題する情報番組に橋下徹氏は出演した。
この「ムーブ!」と言う番組は昨日、橋下氏が取材に応じないと指名した大阪を本拠とする朝日放送が放送していた番組である。
橋下氏はこの朝日放送の番組でレギュラー・コメンテーターをしていたのだ。
この番組内の「ムーブ!マガジンスタンド」というコーナーにおいて、朝日放送が「植草一秀容疑者痴漢で示談7回の過去」とのテロップを表示しながら、同日発売された小学館発行の女性週刊誌「女性セブン」の私に関する記事を紹介した。
2006年9月13日、私は痴漢冤罪事件に巻き込まれた。
この事件の詳細については、本年8月に高橋博彦氏、副島隆彦氏、そして私の共著のかたちで、
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を上梓した。詳細な裁判記録が記されている。正真正銘の冤罪事件である。
上記朝日放送番組は、この事件の発生直後に放送されたものである。
この番組が素材として使ったのが「女性セブン」(小学館)が掲載した
「植草一秀容疑者痴漢で示談7回の過去」
と題する記事だった。
この記事見出しがいまもネット上に残されているが、もちろん事実無根の捏造記事である。
私は、日本の情報空間を埋め尽くした私に対する「人物破壊工作」に対して、そのごく一部に対して名誉棄損損害賠償訴訟を提起した。
小学館に対しても、この記事について名誉棄損訴訟を提起した。小学館は私の主張を受け入れて謝罪広告を掲載するとともに、損害賠償にも応じた。
事実無根の捏造記事が掲載されたことが裁判で明らかにされたのである。
警察がウソの情報を流し、メディアがそれを流布したのだと思われる。
この番組に出演した橋下徹氏が番組内で示したコメントは次のものである。
「病気だと思います」、
「病気じゃなければそれはねえ、更生の可能性ってあるんでしょうけれども、これはもう、宮崎さんとも話しましたけれども、これはもう、その、何かりく、理屈で治すってことじゃなくて」、
「カウンセリングは無理ですねえ、もう、ほんとに薬物等でホルモン抑制とかそういうことをやらないと無理ですよ」
橋下氏は、女性セブンが掲載した記事の真偽を確かめようともせずに、真実であるとの前提に基き、上記の発言を示したのである。
橋下氏は週刊朝日の記事が伝聞に基づいた記述だが、その伝聞が真実であるかどうかも確かめていないことを問題にしたが、2009年のムーブ出演時の橋下氏の発言と矛盾するものだ。
続きは本日の
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