熟考なき尖閣国有化がもたらす新世界不況
『金利・為替・株価特報』第165号は発行日を当初予定の9月28日から9月30日に変更させていただいた。
全体タイトルを「熟考なき尖閣国有化がもたらす新世界不況」
とした。
尖閣をめぐる騒動は、一言で言って日本が引き起こしたものだ。
日本が頼りにしている米国は、尖閣の領有権について、日本の側にも、中国の側にも立たないことを繰り返し表明している。
「尖閣に領有権問題は存在しない」とする日本の主張と真っ向から対立する見解を米国は明示しているのだ。
そして、私たちは歴史の事実を正確に見つめ直す必要がある。
1972年の日中国交正常化の過程で、尖閣の領有権問題は俎上に乗っている。
このときに「棚上げ合意」が形成された。
中国は領有権を主張するが日本の実効支配を容認するとの考えを明示し、日本もこれを受け入れたのだ。
それを日本が「棚上げは存在しない」、「領有権問題は存在しない」と主張し始め、尖閣を国有化すれば、波風が立たないわけがない。
日本が喧嘩を売ったと言われて反論できない。
実効支配を確実にする方策を検討することは間違っていない。しかし、国有化措置を取るなら、事前に中国に根回しをしておくことが不可欠だ。
日中関係の悪化は経済に直接的な影響を与えることになる。
中国は世界第二位の経済大国に成長しているから、日中対立は両国の経済活動に深刻な影響を与えることになる。
『金利・為替・株価特報』第165号の目次は以下の通り。
1.【概観】日中紛争を契機に始まる世界不況
2.【政局】偽装される民意と政局
3.【政治】「フェニックス革命」実現の条件
4.【世界経済】安易な尖閣国有化の代償
5.【株価】日米欧金融緩和政策効果の限界
6.【金利】景気回復期待から景気失速警戒への転換
7.【不動産市況】底入れ感強まる不動産市場動向の盲点
8.【為替】それでも続く日本円の上昇
9.【投資戦略】目先要警戒態勢に修正が必要
本誌を後追いするように、日本経済新聞が10月2日付朝刊に次のタイトルの記事を掲載した。
「尖閣対立 世界経済に影」
米国ジョンズ・ホプキンス大学中国研究所長のデービッド・ランプトン氏へのインタビュー記事だ。
ランプトン氏は、日本の政権が脆弱であるため穏健な議論を促す政治環境にないことを指摘する。
そして、
「尖閣周辺に国家主義的な人々を乗せた船が集まっているため、『事故』が起きかねず、事故が制御の利かない深刻な事態、紛争に発展することもあり得る」
と主張する。
さらに、
「日米中という世界の三大経済大国を巻き込む恐れのある紛争は、すでに様々な問題を抱える世界経済に甚大な影響を与えることになる」
と指摘する。
問題の解決には迅速な事態の沈静化が不可欠だが、それは各国の次期政権の顔ぶれによると指摘する。
そのうえで、米国が領有権問題で日中両国のいずれにも加担しない方針を示しながら、尖閣が日米安保条約第5条の適用地域であると発言してきたことを、「混乱を招きかねない対応」であると批判する。
全体として私の主張と重なる部分が非常に多い。
ランプトン氏も強調した点だが、迅速な事態の沈静化が実現しない場合には、日中経済のみならず、世界経済に深刻な影響が広がるだろう。
日米両国が2013年にかけて、強烈な「財政の崖」に直面する。
日本では2011年度に大型補正予算が編成されたために、2012年度の財政支出が極端な緊縮予算になっている。
ここに追い打ちをかけるように、2012年度に減額補正予算が編成されれば、日本経済も深刻な財政不況に突入する。
消費増税を実施するには日本経済を浮上させねばならないのに、財務省は不況を推進する考えを有しているのだろうか。
米国でも昨年の政府債務上限引上げ法案可決と引き換えに大統領が呑まされた、10年間で4兆ドルの財政赤字削減策が2013年から始動する。こちらの「財政の崖」も険しい。
欧州も財政再建を重視して、緊縮財政を推進する空気が依然として強い。
尖閣国有化を契機とする世界不況の足音が響き始めている。
こうしたなかで、この10月にIMF・世銀総会が日本で開催される。
『週刊金曜日』が最新号で
を特集した。
このなかに、私も、
「大増税の一方で日本政府は資産超過
海外に巨額資金を注ぎ込む財務省」
のタイトルで寄稿した。
続きは本日の
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