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2012年8月 7日 (火)

参院特別委公聴会中村豊明公述人発言の問題点

昨日、参議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会が開催した公聴会で意見を述べた。


公聴会の模様は、


「参議院インターネット審議中継」


にて視聴することができるので、ご高覧賜りたい。


視聴方法は以下の通りになる。


上記サイトの左上に「審議中継カレンダー」がある。


8月6日の日付をクリックすると、2012年8月6日の審議中継が一覧で表示される。


2件目の


「社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会」右側の


原稿と人物の絵表示をクリックすると


「会議の経過」と「発言者一覧」


が表示される。


発言者一覧の下半分が、私が出席した午後の公聴会の発言者一覧になる。


それぞれの発言者の名前をクリックすると、その発言者の発言以降の全動画を閲覧できる。

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公聴会は午後1時半から午後4時45分まで開催された。初めの1時間15分が、各公述人の発言に充てられた。1人15分ずつ意見を陳述した。私は4番目に発言した。


私は消費増税法案に反対する立場から、五つの点にまとめて意見を述べた。


私が提示した五つの反対理由とは以下のものである。


1.議会制民主主義のデュープロセスに反している

   公約違反の消費増税決定は主権者に対する背信行為


2.世代間の対立を煽っての消費増税推進は健全でない

年金収支の世代間不公平は年金制度改革で対応するべき


3.財務省が財政危機を否定した2002年と基本環境は不変

   日本政府は資産超過で財政赤字は国内資金で賄われている


4.循環的要因による財政赤字拡大に増税で対応するのは誤り

   景気回復で循環赤字を縮小してから構造赤字対策を講じる


5.経済縮小、世界経済減速、間接税比率上昇下での消費増税は、

  経済をさらに悪化させ、分配の格差をさらに拡大させる

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1については、本ブログ、メルマガでも再三にわたって取り上げている、野田佳彦氏と岡田克也氏の2009年7月、8月の演説における発言内容を例示して意見を述べた。


両氏の演説動画は以下のものである。抜粋して例示した発言とともに以下に示す。


第一は野田佳彦氏による2009年7月14日の衆議院本会議演説


「私どもの調査によって、ことしの五月に、平成十九年度のお金の使い方でわかったことがあります。二万五千人の国家公務員OBが四千五百の法人に天下りをし、その四千五百法人に十二兆一千億円の血税が流れていることがわかりました。


これだけの税金に、一言で言えば、シロアリが群がっている構図があるんです。そのシロアリを退治して、働きアリの政治を実現しなければならないのです。


天下りをなくし、わたりをなくしていくという国民の声にまったく応えない麻生政権は、不信任に値します。」

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第二は、岡田克也氏による2009年8月11日の千葉県柏駅前での街頭演説


「財源がないという批判もある。
私たちは、208兆円ある一般会計と特別会計、
このなかで、約9兆円の金を作り出すと言っている。
与党はそんなことできっこないと言う。


できっこないのは与党だ。
彼らは自分たちができないからできないと言っている。
私たちはそれをやる。
一から制度を見直せばできるんです、みなさん!」


第三は、野田佳彦氏による2009年8月15日の大阪での街頭演説


「マニフェスト、イギリスで始まりました。
ルールがあるんです。


書いてあることは命懸けで実行する。
書いてないことはやらないんです。それがルールです。


書いてないことを平気でやる。これっておかしいと思いませか。


書いてあったことは四年間何にもやらないで、
書いてないことは平気でやる。


それは、マニフェストを語る資格はないというふうに、
ぜひ、みなさん、思っていただきたいと思います。


消費税5%分の皆さんの税金に、天下り法人がぶら下がっている。シロアリがたかっているんです。

 

シロアリを退治しないで、消費税引き上げるんですか?
消費税の税収が二十兆円になるなら、
また、シロアリがたかるかもしれません。


鳩山さんが四年間消費税を引き上げないと言ったのは、
そこなんです。


シロアリを退治して、天下り法人をなくして、天下りをなくす。
そこから始めなければ、消費税を引き上げる話はおかしいんです。」

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公聴会での発言内容と参考資料については、改めて提示したいと思うが、日本政府のバランスシートを示して、2010年末段階で日本政府が資産超過状態にあることを提示したことに対して、公述人で出席した株式会社日立製作所執行役副社長の中村豊明氏が理解しがたい発言を示した。


公聴会は公述人が意見を戦わせる場ではないので、私は中村公述人の発言に対して意見を述べることを差し控えたが、中村氏は国の財務状況を分析する正しい視点を持ち合わせていないと感じた。


「参議院インターネット中継」における、私の発言から始まる動画映像では、1時間34分08秒以後にこの場面が収録されている。


中村氏は次のように述べた。


「植草さんが提示した資料で国のバランスシート久しぶりに見た。債務が1000兆円で純資産が3兆円。自己資本比率が3%であり、1000兆円の債務の利払い費を考えると、あと数年で破綻することになる」


一般政府のバランスシートは「国民経済計算統計」に記載されているが、一般にはほとんど知られていない。久しぶりに見たと言われていたが、経済統計をよく調べる人でないと普通はあまり見ることのない統計だ。久しぶりに見たと言われていたが、いつご覧になったのだろうか。


これはさておき、中村氏の発言は、国のバランスシートと一般企業のバランスシートを同列に論じている点に最大の問題がある。


国が財政運営上、借金を行う場合、その借金の返済は、将来の国民の納税によって担保される。国の信用力とは、将来の徴税に対する信頼感と表現してもよいわけであって、政府債務残高が問題とされる前提には、借金がそのままネットの政府債務、いわゆる「純債務」であることが念頭に置かれている。


民間企業には外部資金を強制的に徴収する権限も実力もないから、資産よりも負債が多い状態、すなわち、純債務状態にある=債務超過状態をもって「破綻」と認定するわけだが、政府はこれと異なり、将来の税収に対する信頼感によって、「純債務」の状態が容認される存在である。


しかし、過大な「純債務」の状態が生じれば、債務返済に対する信頼が低下する。ここから政府債務危機が発生するのだ。


政府債務規模のGDP比が問題とされる背景には、基本的に政府は資産を保有する主体ではなく、政府債務は「純債務」であるとの認識がベースに置かれていると考えるべきなのだ。


この点に照らすと、日本政府の財務状況には著しい特異点があることが分かる。それが、債務1000兆円に匹敵する資産を保有していることなのだ。


債務超過になるかどうかが問題なのではなく、債務残高に匹敵する規模の資産を保有している点が重要な着眼点なのである。


国の財務状況の分析視点と一般企業の財務状況の分析視点には決定的な差がある。中村氏はこのような点を理解せずに発言されたものと考える。


中村氏は日本経団連税制委員会企画部会長の立場で公聴会に出席され、日本経団連としての考え方を述べられた。経済学の専門家ではないのだと思われるが、企業財務と政府財政を混同して捉える視点で財政問題を論じることには、根本的な誤りが含まれると認識する。

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