ペテン師用語集にある「一定のめど」と「近い将来」
2009年8月30日 第45回衆議院総選挙が実施され、民主党が大勝した。
2009年9月16日、主権者国民の熱烈な支持に支えられて鳩山由紀夫政権が誕生した。
2010年6月2日、鳩山由紀夫首相が辞意を表明。
菅直人氏は、民主党内の対米隷属=官僚主権=大資本との癒着派と連携して、党内クーデターを挙行、6月8日に菅直人政権を樹立した。
2010年7月11日 菅直人内閣が「菅内閣に対する信任投票」と位置付けた参院選で大敗した。菅直人首相は即刻辞任する必要があった。
ところが、菅直人氏は首相の椅子を手放さず、9月14日の民主党代表選に臨んだ。
民主党代表選では小沢一郎元代表が立候補し、当選する見通しだったが、極めて不透明な選挙事務、検察審査会を活用した謀略疑惑などを通じて、菅直人氏が再選を果たした。
外国人からの違法献金問題で前原誠司氏が大臣辞職。菅直人氏も同様の外国人献金疑惑を追及された。
そのタイミングで、東日本太平洋沖大地震、大津波、原発事故が発生。菅直人氏はこの災害と事故を利用して首相在任期間の引き延ばしを図った。
しかしながら、菅内閣の原発事故対応などへの批判は日増しに増大した。
国会では内閣不信任決議案が上程され、民主党内からも賛成する議員が多数生まれる状況が生じた。
そして、菅直人氏による政権クーデターからちょうど1年後の2011年6月2日、菅内閣不信任決議案を採決する衆議院本会議直前の民主党代議士会で菅直人氏が発言した。
このなかで、菅直人氏は、
「『一定のめど』が付いた段階での若い世代への引き継ぎを果たして」
と発言した。NHKをはじめ、メディア各社は一斉に、「菅首相辞意表明」の見出しを付けて緊急報道を行った。
菅首相発言の直後、菅氏と直接会談した鳩山由紀夫氏が同じ代議士会で補足説明した。
「首相が重大な決意を表明したと理解する。代議士会に先立ち首相と会談し『一定の仕事を果たしたあかつきに職を辞してほしい』と申し上げた。復興基本法案を成立させることと、2次補正編成の目処をつけた暁には身を捨てて欲しい。首相と鳩山の間で合意した。」
この発言について、菅直人氏は反論せずに代議士会は終了した。
不信任案に賛成する予定だった民主党国会議員の多くは、菅直人氏の辞任で合意が成立したと判断して不信任決議案に反対票を投じた。その結果、内閣不信任決議案は否決された。
ところが、不信任案否決後、菅直人氏は「辞任表明はしていない」と態度を一変させた。
これに対して、鳩山由紀夫元首相は、
「口できちっと約束したことは守る。あたり前のことです。それができなかったら、ペテン師です。そんな詐欺師まがいのことを首相がやると、私は思っていない。」
と反発した。
菅-鳩山会談には岡田克也氏、平野博文氏が同席し、合意文書まで用意されたが、その文書のなかには「辞任」の文字はなかった。
岡田氏は、この事実を盾に、菅首相が辞任する必要はないことを主張した。
この対立を客観的に評価するとき、非難されるべきは、菅直人氏、岡田克也氏の側であることは論を待たない。
政党内の協議であり、駆け引きの場ではない。
一部に、「辞任」の文字を文書に残さなかった鳩山氏の脇が甘いとの批判があるが、これは適正な批判でない。
他国との外交文書であれば、一字一句、精査する必要がある。
しかし、同じ政党内の最高幹部による話し合いである。
江戸城無血開城を決めた西郷-勝会談で、細目を文書にして契約書を交わすなどの「作法」が妥当であったとは思われない。
「作法」の問題であり、「品格」の問題である。
1.復興基本法を成立させ、
2.2011年度第二次補正予算編成のめどが立った、
時点で菅首相が辞任することが、話し合いで決定されたのだ。
鳩山元首相は民主党代議士会でこの合意内容を明確に確認している。
この場で、この鳩山氏発言に異論を唱えず、不信任決議案否決後に、そのような合意はなかったと発言するのは、紛れもない「ペテン師」の手法である。
菅直人氏や岡田克也氏は、このような手法を用いる「人種」なのだ。
このことを私たちはしっかりと心に刻んでおく必要がある。
欧米社会は契約社会とも言われる。
契約を交わす際に、すべてのあり得るケースを明文化し、一寸の解釈の誤差も出ないように文書を作成して契約を交わす。
この際に、文書の抜け穴をどのように仕組むかも検討される。
このような契約を交わす背景にあるのは、「相互不信」である。相手を信用できないから、細目にわたって文書化する必要がある。
同時に、すべてを文書化することを逆手に取って、不正な目論見を、契約文書の行間に創出しようと努めるのだ。
これに対して、「相互信頼」が成り立っている社会では、このような細目にわたる細かな取り決めを必要としない。お互いの「信義」に基いて問題を処理することが重視される。
民主党内の最高幹部による話し合いにおいて、後者の「相互信頼」に基づく流儀、作法が用いられるべきことは当然である。
ところが、菅直人氏と岡田克也氏は、相手が「信義」に基づく行動を示したことを逆手に取って、文書を盾に不正な決着を目論んだのだ。
消費増税法案の採決をめぐる政局流動化のなかで、早期解散総選挙の確約を求める自民党に対して、民主党は「法案成立後、『近い将来』の解散」を提示した。
これに対して、自民、公明両党は、時期の明確化を求めている。
テレビ朝日「報道ステーション」に後藤謙次氏が登場して、落としどころについてコメントした。後藤氏は政府から派遣されたコメンテーターであると解釈して間違いないだろう。
「民主党は曖昧な回答を示すのではないか」
これが後藤氏の発言であるが、単純な推測ではなく、本人が関与している話である可能性が高い。
政府は現在、後藤謙次氏に政府のスポークスマンの役割を担わせているのだと思われる。
この点については、6月22日付ブログ記事
に書いた。
「近い将来の解散・総選挙」
で決着させようとする野田佳彦氏の意図が示された。
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