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2012年8月17日 (金)

消費増税問題をせん滅するための竹島尖閣騒動

オリンピックが終わるのを待ったかのようにテレビを占拠している尖閣、竹島問題。


国民の最終判断を待たなければ最終決定できない消費増税問題をこれから本格的に国民的論議にしなければならない局面で、これらの問題が情報空間を占拠している。


野田佳彦氏は「我が国の法令に準拠して厳正に対処する」と述べながら、不法入国として逮捕、拘留した活動家をそのまま強制送還する方針である。


すべてが「茶番」、広い意味の「やらせ」である。


外国と領土をめぐって摩擦が生じたとき、「対立」の方向に事態を推移させれば、国内の「ナショナリズム」には簡単に火がつく。


国内の重要問題は消し去られ、威勢のより「対立」の主張が喝采を浴びる。


こうしたことを計算し尽くしたうえで、一連の「茶番」が演じられている。


登場人物はすべて広い意味の「役者」であると思われる。

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こうしたなかで、元外務省国際情報局長の孫崎亨氏が冷静な対応を呼びかけて異彩を放っている。


折しも孫崎氏が執筆された『戦後史の正体』(創元社)がベストセラーになり、日本外交の本質が少しずつ主権者国民に知られ始めている。


孫崎氏は本書の前に、『日本の国境問題』(ちくま新書)、『不愉快な現実』(講談社現代新書)を出版されている。


テレビや新聞は尖閣、竹島が日本固有の領土であることを明言し、国民のナショナリズムと他国との対立の感情を煽り立てているが、孫崎氏はこれらの問題を客観的に捉え、問題の建設的な解決の道を模索する姿勢を示されている。


これらの問題を建設的に解決するために、すべての国民が孫崎氏の主張に耳を傾ける必要がある。


何よりもまず、孫崎氏の著書『不愉快な現実』第9章「日本の生きる道-平和的手段の模索」をご購読賜りたい。


孫崎氏は、


「国際的に見ると、領土問題は武力紛争につながる可能性が高い」


ことを指摘する。さらに次の記述を示す。


「領土は、国民的感情を高ぶらせる。そしてすぐに紛争にエスカレートさせる。それだけに領土問題の管理が重要である。」


実はこの点に権力者が領土問題を「利用する」鍵が隠されている。


大きな国内問題が存在するとき、国民の関心を別の方向に振り向けさせる上で、領土問題ほど使い勝手の良いものはない。


消費増税、オスプレイ、辺野古基地建設、原発利用継続などの重要問題の「解決」を図るうえで、領土問題の「演出」は最適の処方箋になる。


「解決」というのは、「もみ消す」、「ごり押しする」という意味だ。

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人間生活において、他者との摩擦はつきものである。


そして平和な生活を送るためには、この他者との摩擦を上手に解決してゆくことが不可欠だ。


他者を支配して服従させるなら、自己の主張だけを貫いてゆくことができるかも知れない。しかし、このような不当な他者の権利の抑圧は、他者の不満を蓄積させ自己が破滅に追い込まれる原因を作ることになるだろう。


これが人類の闘争の歴史を貫くひとつの原理でもある。


自己の存在と権利が守らねばならぬように、他者の存在と権利も守らねばならない。これが共存と共生の原理である。


他者との摩擦、対立を平和裏に解決してゆくために何よりも必要なことは、自己の主張を示すとともに、他者の主張に真摯に耳を傾けることである。


相互が自己の主張だけを展開し、他者の主張に一切耳を傾けなければ、他者との摩擦は必ず紛争に発展してゆくことになるだろう。他者との紛争は不毛な結果しかもたらさない。

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孫崎氏が提示する素朴な疑問点は、竹島や尖閣問題で「対立」を主張する人々が、相手の主張を十分に知っていないという事実だ。


日本側が尖閣や竹島の領有権を主張するには、それなりの論拠がある。その論拠に沿って領有権を主張している。このこと自体に問題はない。


しかし、他者との摩擦を解決するには、自己の主張を展開すると同時に、相手側の主張にも真摯に耳を傾けることが必要になる。


この点に着眼すれば、ものの見え方が大きく変わってくる。

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孫崎氏は尖閣における中国の主張を「北京週報」1996年ナンバー34「釣魚島に対する中国の主張は弁駁を許さない」から引用して示す。


詳細は孫崎氏の著書をご高覧賜りたいが、中国の歴史的文献には15世紀に釣魚島の記載があり、在来の国際法における「発見を領土取得の根拠にすることができる」との規定に基づくと釣魚島は遅くとも15世紀に中国の領土になったということになる。


米国は尖閣諸島が日米安全保障条約第五条の適用地域であることを表明しているが、それは、日米安全保障条約第五条


「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。(後略)


にある、「日本国の施政の下にある領域」との表現に基づいている。


現在日本は尖閣諸島を「実効支配」している。領有権問題について決着はついていないが、現実に尖閣諸島を「施政下」に置いている。これを「実効支配」と呼ぶ。


米国は日本の実効支配を認識して、尖閣諸島が日米安全保障条約第五条の適用地域であることを表明しているのである。


しかし、一方で米国は、「尖閣諸島の領有権については、どちら側にもつかない」ことを明示している。米国は尖閣諸島を領有権について国家間で意見が対立している「紛争地域」と認定しているのである。

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この現実のなかで、日中両政府は尖閣問題について、「棚上げ」という合意を形成した。


「棚上げ」とは、中国が現状を容認し、その変更を武力をもって行わないことである。中国が尖閣諸島を中国領であると認識しながら日本との関係を発展させることが重要であるとして、日本の実効支配を容認するとの譲歩をしたものである。


孫崎氏はこの「棚上げ」を日本側から破棄することは、あまりにも愚かなことであると主張するが、正論そのものだ。


「棚上げ破棄」を明言したのは前原誠司氏である。国会等で「棚上げは中国の主張。日本は同意していない」と繰り返し述べてきたのだ。

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