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2012年8月21日 (火)

本来は野田佳彦氏が正論を提示すべき局面

台湾の馬英九総統がNHKのインタビューに応じて、


「尖閣諸島を巡っては、関係するすべての国と地域が島への上陸などの行動をそろって自制することが重要だ」


との考えを示したと報じられている。


報道によると馬英九氏は尖閣諸島について、


「台湾に属する島だ」


と述べて領有権を主張した一方で、台湾と同じように尖閣諸島の領有権を主張する中国と連携して日本に対抗する意図はないことも明確にし、尖閣諸島を巡る主張の違いによって日本との関係が悪化することは避けたいという立場を強調した、とのことである。


そのうえで馬英九氏は、尖閣諸島に上陸して逮捕、強制送還された香港の活動家らが10月ごろに再び上陸する計画を検討していることについて、日本の地方議員などが尖閣諸島に上陸したことに触れながら、


「最も重要なのは、いずれか一方だけに自制を求めるのではなく、皆が平和的に争いを解決する方法を探ることだ」


と述べて、関係するすべての国と地域が島への上陸などの行動をそろって自制することが重要だという考えを示したと、NHKは報じている。

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馬英九氏は8月5日、争いを平和的に解決するための提言である「東シナ海平和イニシアチブ」という構想を打ち出して、関係する国や地域による資源の共同開発を呼びかけた。


この「東シナ海平和イニシアチブ」について、琉球新報社説は次のように論評している。


「台湾の馬英九総統が、日本のほか、中国と台湾が領有権を主張する尖閣諸島の問題で、「行動規範」策定など5項目を内容とする「東シナ海平和イニシアチブ」を提言した。


(中略)

 

日中を念頭に、関係国の話し合いで平和的解決を図るとする提案は、国連憲章にも沿うものでもあり傾聴に値する。

  
(中略)

 
馬氏は、さらなる対立を避けるため主権問題を棚上げした上で、行動規範策定のほか、東シナ海の資源の共同開発などを訴えた。尖閣をめぐって関係国の緊張が高まっている現状に、強い危機感を抱いていることの表れだ。」


本来は、日本の為政者がこのような発言を示し、東アジア諸国・地域間の「対立」を平和的に解決するリーダーシップを発揮するべきである。


日中両国政府は日中国交回復時に、尖閣の領有権問題を「棚上げ」する合意を形成した。「棚上げ」とは、中国が日本による実効支配という現状を容認し、その変更を武力をもって行わないということである。


8月17日付ブログ記事
「消費増税問題をせん滅するための竹島尖閣騒動」


同日付メルマガ記事
「領土問題を武力紛争にしないための知恵」


に記述したが、孫崎亨氏が指摘するように、この「棚上げ」合意を尊重する姿勢を取ることは日本の国益にかなうものである。


それを日本側から「棚上げ」合意を否定して、日本の領有権のみを強調する方法でアピールし、中国や台湾などの対抗措置を招くことは建設的対応とは言えない。


米国は東アジア諸国・地域が友好関係を深めると、この地域で戦争を誘発することが困難になるため、意図的に東アジア諸国・地域の対立を誘導しようとの考えを有しているのだと思われるが、その手先として日本が行動することは日本の国益に反するものである。

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琉球新報社説は次のように続けるが、これが正論というものだ。

  
「とりわけ、野田首相は戦略対話を提案しながら、7月に打ち出した国有化方針が、ことさら中国や台湾の神経を逆なでしたことは否定できない。対日強硬論が強まり、海洋活動などがエスカレートしていることからも明らかだろう。

  
いたずらに領土ナショナリズムを刺激し合うような現状は、関係国相互の憎悪を増幅させるだけで、あまりに非生産的だ。関係国が目指す戦略的互恵関係から程遠く、国際社会にとっても不幸である。

  
国連憲章にあるように、武力の行使や威嚇によらず、平和的方法による解決の道を模索することは、日本だけでなく、中国や台湾の利益にもかなうはずだ。

  
本来ならば、日中国交正常化40周年の節目に当たる今年は、民間レベルを含め日中両国の友好関係を深める好機となるはずだが、信頼醸成の機運はしぼんだままだ。

  
日中が領土問題を棚上げし、国交正常化や平和友好条約締結を推し進めたのは、不毛な感情的な対立を避け、平和と安定を希求した双方の外交的努力があったからにほかならない。尖閣をめぐる「不信の連鎖」を断ち切るためにも、今こそ先人の知恵に学びたい。」

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国民のナショナリズム感情に火をつけて、いたずらに反中国などの感情を煽ることは、国内問題から国民の目をそらさせ、政治的支持を得る上では好都合な手法かも知れないが、真に国を思う行動とは言えない。


しかも、その行動が日本を支配する米国の意向に迎合するものであるなら、なおさら、その行動の反国民性は重大である。

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馬英九氏が提唱するように、領土問題を「棚上げ」して、資源開発などで国際協力体制を構築することは、対立を煽り、東アジア情勢を不安定化させることよりも、よほど国益に適う外交対応である。


本来は野田佳彦氏がこのリーダーシップを発揮するべきところ、馬英九氏にその役割を先んじて示されてしまったことを日本政府は謙虚に反省するべきだ。


日本が尖閣諸島の実効支配の現状を補強することは間違った施策ではないだろう。しかし、米国で東京都が尖閣諸島を購入する構想を発表したことなどは、アジア情勢を不安定化させるためへのパフォーマンスを演じて、単に米国の歓心を買うことだけを目指したものであると言わざるを得ない。


日本の安全保障を確保するために重要な第一のことがらは、アジア諸国・地域と相互依存、互恵の強い友好関係を構築することである。


日本がこの友好関係を構築するなら米軍が日本の常時駐留する必要性も著しく低下するはずである。

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