反対を貫き通す頑なさがなければ変革できない
審議会の手法というものがある。
審議会で議論をしたように見せかけて、実は、事務局が用意した原案をそのまま承認させるというものだ。
このとき審議会は何の役割を持つか。
事務局が用意した原案を実行する「正統性」の根拠を確保することがその狙いだ。
しかし、よく考えてみると、この手法は本末転倒であることがわかる。
そもそも建て前としての審議会とは、各界の有識者が集まり、知識、見識、良識を出し合って、優れた提案を創出することが本来の狙いだ。
事務局は、自分たちでは最高の提案をすることができないから、各界の有識者に検討を依頼する。審議会は、審議会としてのベストな案を創出することを本来は求められているはずだ。
しかし、現実は違う。
役所という事務局が初めから結論を持っており、この原案を審議会を使って承認させるのである。
これが審議会の現実である。
「政治主導」、「国民主導」という言葉がよく使われる。
どのような現実を前提に置いてこの言葉が使われているのか。
それは言うまでもない。
「官僚主導」に対して「政治主導」、「国民主導」が叫ばれている。
日本の政治が、制度的には国民主権、議会制民主主義を基本に置いているとされながら、現実には官僚に主導権があり、官僚がすべてを決めてしまう「官僚主権」の構造にあることが問題とされている。
この官僚主導、官僚主権構造の淵源は古い。
明治維新で明治政府は「太政官制(だじょうかん)」と呼ばれる政体を創設した。天皇を頂点とする、天皇の官吏が日本を支配する政治制度を構築した。
この制度は、律令時代の「太政官制(だいじょうかんせい)」を模倣したものである。天皇中心の政治制度を構築するうえで、古く律令時代の政治制度を復活させたのだ。
実際には、戦前の文官高等試験を合格した高級官吏が天皇の官吏として支配権をもって政治を運用した。
戦前の官僚には「支配者」の地位が付与されていた。
第二次大戦後、日本の民主化が実行され、主権在民が定められ、公務員は「全体の奉仕者」とされることになった。
public servantという位置付けに変更されたことになった。
ところが、現実は異なる。
戦後も、官僚は日本の支配者として振る舞い、官僚自身が日本の支配者としての意識を持ったまま現在に至っている。
その最大の理由は、戦前の高等文官試験が上級公務員試験として温存されたことにある。
少数採用の上級公務員、第一種公務員制度が高文試験を引き継ぎ、官僚による政治支配が維持されてしまった。
審議会は官僚が決めた原案を通すために開催される。
審議会には表面的には反対側の論者もメンバーとして採用される。
表面的には多種多様な意見が提示される体裁を整えるのだ。
しかし、反対派論者として、本格的な強い論者は採用されない。
本格的な論者を採用すれば、審議会の議論がこの人物に引っ張られてしまうからだ。
審議会でもっとも重要なことは、官僚の言いなりになる、高い肩書を持つ委員を座長とすることだ。これが、いわゆる「御用学者」である。
官僚は官僚の言いなりになるという意味で「御用学者」を重用する。
「御用学者」は「御用学者」になることにより、大学での地位を高め、社会的にも経済的にも恩恵を受けられることになる。
話が長くなった。
結局、いまの日本政治は、この「官僚主導」からまったく抜けられていないのだ。
「審議会」の手法でもっとも重要なことは次の点だ。
審議会では反対意見の表出を認める。反対側に位置する委員は、事務局原案に反対意見を提示する。これを「ガス抜き」という。
しかし、原案は変えない。どれほど批判意見が出されても、原案は変えない。毎回、審議会の最後は、「今日のご議論を踏まえて事務局が案を練り直して次回会合にご提示させていただきます」の言葉で締め括られる。
ところが、次回会合で原案が変更されることはほとんどない。
原案をほとんど変えずに何度でも提示する。その度ごとに反対意見が表出される。しかし、原案を変えない。
これを繰り返すうちに、反対意見を述べることを躊躇せざるを得ない「空気」が醸成される。
ここがポイントである。
本来は反対意見が正論であっても、事務局が原案を押し通す行為を続けることによって、この原案成立やむなしの空気が作り出されるのだ。
そうなると状況が変わるのは、「正論」を述べることが、「ものわかりの悪い変わり者」である空気が醸成されることだ。
日本人特有の「事なかれ主義」、「長いものには巻かれろ」、「寄らば大樹」の心理が影響しているのだろう。
いま論じられているシロアリ増税=シロアリ退治なき消費増税についても、まったく同じ手法が採られている。
「シロアリを退治しないで消費税をあげるのはおかしい」と明言した野田佳彦氏の消費増税提案は、100%間違っている。
公約違反も明確である。
この提案を国会で押し通す前に総選挙で民意を問うべきことは当然だ。
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に次のように記述した。
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