小沢一郎政権樹立を阻止する対米隷属勢力の正体
元外務省情報局長の孫崎享氏が新著『戦後史の正体』を出版される。
そのパイロット版をご恵送賜った。
孫崎氏はこの3月に講談社現代新書から、
を発表されたばかりである。
精力的なご執筆活動に驚嘆するとともに、心からの敬意を表したい。
『不愉快な現実』では、いま日本で喧(かまびす)しい尖閣諸島の問題についても、もっとも正確で精密な現状分析が示されている。
米国は尖閣諸島を日米安保条約第5条が適用される日本の管轄地としながらも、尖閣諸島の領有問題について、尖閣諸島の領有権が「係争中」にあり、日本と中国のいずれの側にもつかないとの立場を明確にしている。
尖閣問題を論じる際に、歴史的経緯および現実の事実関係を正確に把握することは何よりも重要なことであるが、通常のマスメディアは、このような基礎的な事実関係を正確には伝えない。
このことが、領有権に関する国際間の紛争を助長する側面があることを見落とせない。
孫崎氏の新著は7月30日に刊行予定とあり、ご恵送賜った著書は、パイロット版である。本の出版前に広く情報を周知させるという、新しいスタイルの出版方式が取られている。
孫崎氏が「はじめに」に書かれているように、本書は、
「これまでほとんど語られることのなかった「米国からの圧力」を軸に、日本の戦後史を読み解いたもの」
である。孫崎氏が記述するように、「「米国の意向」について論じることは、日本の言論界ではタブー」である。ここに正面から切り込んだ著書であり、すべての国民必読の書であると思われる。
本書はそもそも孫崎氏が出版社から、「高校生でも読める日米関係の本」として提案された書である。
この提案に対して孫崎氏が野心的に対応し、冷戦後ではなく第二次大戦の終了から今日までの日米関係全体が描かれることになった。
編集担当の矢部宏治氏が冒頭に記述されているように、文字通り
「まさに数十年に一度、書かれるか書かれないかという本である」
と私も思う。
すべての国民が本書を精読して、この国のかたちを、正確に捉えることが必要不可欠だ。
本書の主題は日本の外交政策の変遷である。その変遷とは、「対米追随」と「自主独立」との間でのせめぎ合いを指す。
言うまでもなく、敗戦後日本の主軸は「対米追従」であった。
しかし、「対米追従」が主軸であり続けるなかで、何人かの日本の代表者が、日本の「自主独立」の道を模索してきた。
しかしながら、「自主独立」の道を模索した数少ない日本の代表者に対して、米国はことごとく厳しい圧力をかけ、その存在を排斥してきた。
孫崎氏はこの現実を鮮明に、そして精緻に浮かび上がらせている。
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私は2010年に『日本の独立』を上梓した。
『日本の独立』のタイトルに込めた判断と思いは、孫崎氏と共通するものであると考える。
私は戦後日本政治の支配者を「米・官・業・政・電」の五者であると捉えた。そして、この構造の頂点にあるもの、すなわち日本を実効支配し続けてきたものを米国であると判断した。
米国を頂点とするピラミッド構造。これが、戦後日本政治の基本構造である。
この米国が官僚機構と大資本と連携して日本を実効支配する。その、いわば手先として活動してきたのが政治屋と御用メディアである。
孫崎氏の精密な記述を通読するなかで、私は自分が『日本の独立』で描いた現代日本の基本構造が間違いでないことを改めて確信した。
戦後日本の対米追従体制。私は「対米隷属」という表現を用いたが、その元祖は吉田茂であるとの見解を拙著に明記した。外務省における吉田茂の後輩にあたる孫崎氏が、まったく同様に吉田茂こそ、対米追従路線の創始者であることを明記された。
吉田茂に対する美談が戦後日本史の主流を占めてきた状況に、大きな変化が生じることになると予想される。
本書の冒頭に、編集者の矢部宏治氏が提示された問題意識は極めて重要である。
○人類史上最悪といわれる原発事故が起きた。なのになぜ、それまで「絶対に安全だ」と言い続けてきた責任者たちは誰も責任を問われず、逆に「安全性が確保された」などと言って再稼働を求めているのか。
○公約をかかげて勝利した政権与党の党首(野田首相)が、なぜ公約に完全に反した政策を「命をかけてやりとげる」などと言い続けているのか。
○本来、社会正義の守り手であるべき検察が、なぜ組織ぐるみで証拠を捏造し、有力な首相候補である政治家(小沢一郎氏)に冤罪を着せようとしたのか。検察官の不正はあきらかなのに、なぜ彼らは罰せられないのか。
○右のようなきわめて重大な問題を、なぜ大手メディアは批判せず、むしろ不正に加担しているのか。
「こうした数々の重大な疑問を解くためには、「戦後日本」が誕生した終戦直後(占領期)まで歴史をさかのぼって考える必要がある」と矢部氏は記述する。
天木直人氏は「小沢一郎氏に最強の味方が現れた!」と論評されているが、小沢一郎氏問題を正しく理解するには、戦後日米関係を冷徹に洞察する視点が不可欠なのである。
昨日のブログ・メルマガ記事のなかで、小沢一郎氏およびその同志について、「始末に困る者」との表現を用いた。
説明が不足したので、誤解を与えかねない表現だったが、その真意は、言うまでもなく西郷南洲翁遺訓にある「始末に困る者」にある。
「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は始末に困るものなり、この始末に困る人ならでは、艱難を共にして国家の大業は成し得られぬなり」
自己の利得だけを追求する者が跋扈するのが、残念ながら日本の現実である。
このなかで、日本の世直しを実現できるのは「始末に困る者」だけである。
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