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2012年7月25日 (水)

真摯で建設的な姿勢を欠く消費増税論議

幅広いテーマについて多くの名著を出版され、消費税問題についても詳細な分析を行なわれているジャーナリストの斎藤貴男氏と会談し、消費税の問題について考察している。


このなかで興味深いお話を聞いた。


かつて政府税調会長を務めていた加藤寛氏の発言だ。


加藤寛氏は消費増税推進論者の一人だが、加藤氏は「直間比率の是正」を消費増税の理由としてあげていた。


ところが、大蔵省、財務省から申し入れがあり、「直間比率の是正」ではなく「財政危機」だと主張していただきたいと。


これに対して加藤寛氏は反論した。


日本は財政危機の状況にはない。


日本政府の長期債務900兆円のうち、200兆円が地方の債務、250兆円が建設国債、約400兆円が赤字国債である。


ひと口に900兆円の長期債務と言っても、その中身にはかなり性格の異なるものが存在する。


加藤氏は、本当の意味で問題のある債務はさほど大きくなく、日本が財政危機にあるというのは正しくないと主張したとのことだ。

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この点について簡単に補足しておく。


地方の債務、地方債が200兆円あるが、地方債は発行の際に厳しいチェックが行われている。資金返済が確実な事業の財源調達にしか基本的に地方債の発行は認められていない。


つまり、地方債200兆円に債務不履行のリスクはほとんど存在しない。


建設国債が250兆円あるが、これは、家計で言えば住宅ローンと同じようなものだ。


資金の返済計画さえしっかりと構築されていれば、住宅ローンを組んだとしても、借り手が破綻の危機にあるとは言われない。


資産である住宅の時価評価の変動にもよるが、借金に見合う資産が存在しており、資金返済を求められれば、最後の手段としては資産を売却して返済することができる。


したがって、政府債務900兆円のうち、問題がある借金は、400兆円の赤字国債ということになる。


この借金残高の規模は日本のGDPの約80%であり、こうなると、他の主要国の財政状況と大差はなくなる。


さらに言うと、短期債務まで含めた日本の政府債務は、一般政府ベースで1037兆円であるのに対して、政府資産は1073兆円存在する(2010年12月末時点)


日本政府は依然として資産超過の状況にあり、政府債務危機、債務不履行リスクは存在しない。


財務省は2002年に格付機関に日本財政の健全性を説明する意見書を提示したことがあるが、現在も基本状況はこの時点と変わっていない。

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つまり、日本が「財政危機にある」という財務省の主張は「うそ」なのだ。


加藤寛氏自身がこの点をはっきりと指摘しているのだ。


では、なぜ、財務省は「直間比率の是正」の主張をやめて、「財政危機」を主張し始めたのか。


理由は単純である。「直間比率」はすでに是正されてしまったからだ。


国税収入に占める消費税の比率は1990年度には7.6%だった。


これが、2009年度には25.3%にまで上昇した。すでに、消費税の国税収入に占める比率は、イギリス、ドイツ、スウェーデンなどを含むOECD諸国における類似した税目の税収比率とほぼ同水準にまで上昇した。米国よりはすでにはるかに高い水準に上昇している。


このことから、「直間比率の是正」という言葉が消えた。


消費増税の大義名分を失った財務省は、新たに「財政危機」をキャッチコピーに使い始めたのだ。


しかし、財政状況を正確に調べる者には、この主張がウソであることがわかる。


大蔵省、財務省のご都合主義がはっきりと読み取れる。

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これに加えて、財務省が最近始めたキャンペーンは、次のものだ。


現行の年金制度などは、若い世代の国民に大きな損失を押し付けるものになっている。つまり、現在の高齢世代は得をするが、現在の若年世代は大損する。この損を穴埋めするには、高齢者も負担することになる消費税を増税し、高齢者により多額の税負担を負わせるべきだというものだ。


この狙いから、政府は年金制度についての説明を180度転換した。


2004年に厚生労働省が発表した年金収支試算では、全世代で、現行年金制度は大きな利益を加入者に与えるものだとしていた。


ところが、本年年初に内閣府経済社会総合研究所が発表したディスカッションペーパーでは、正反対の見通しが示された。


このペーパーでは、1960年生まれ以降の世代は、年金収支がすべて、大幅な赤字になるとしたのである。


このペーパーをもとに、政府はいま、現行年金制度では、1960年生まれ以降の世代はすべて、大きな損失が強制されると言い始めたのだ。


政府の節操のなさにはあいた口も塞がらない。


なぜこのペーパーが発表されたのかといえば、このペーパーをもとに、若い世代が現行制度で大損することを強調するためである。

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すべてが、ご都合主義で動いている。


そして、国会では、民自公の三党が密室で談合して、財務省の消費大増税案に完全に乗ってしまった。国民の意思を踏みにじる暴挙である。


国民の意思とはかけ離れているが、国会を占拠してしまい、国会質疑で、増税実現の大キャンペーンを展開している。


社会保障の将来を考えると増税は不可避である。若い世代は大損になるので、高齢者に負担を負わせるために消費増税を実現するべきだ。


こんなキャンペーンが展開されている。


この奸計、悪だくみを見抜いて、これを阻止しなければならない。


国民が真実を知り、賢くなり、悪党たちの悪だくみを阻止しなければならない。


そのためには、仕事人が必要だ。悪を封じ込めて、国民のための政治を取り戻さねばならない。

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