欧州金融危機の持続が日本経済に落とす深刻な翳
ユーロの下落が続いている。
日本円の対ユーロレートは95円台を割り込み、94円台に突入した。
2000年10月に記録した1ユーロ=88.8円に接近しつつある。
2008年に深刻化したサブプライム金融危機。このなかで、ユーロの大暴落が始まった。
2000年10月から2008年7月までの8年間は、文字通りのユーロ高の時代だった。世界の投資資金がユーロに吸い寄せられた。その結果として、2008年7月ユーロは対円でも1ユーロ=170円を記録した。
2000年から2008年までのユーロ高の時代のあと、2008年7月以降、ユーロが暴落に転じた。円の対ユーロでも急騰である。
2008年7月から4年の時間が経過したが、このなかで、日本円の対ユーロレートは1ユーロ=94円台にまで急騰して現在に至っている。
ここで興味深いことは、日本の株価が円の対ユーロレート変動と、驚くほど酷似した推移を示してきたことである。
『金利・為替・株価特報』では、2009年年初以降、この点を指摘し続けてきた。
日本の経済・株価の低迷が持続しているが、そのひとつの断面として、日本円の上昇、急激な円高を見落とせない。
もちろん、日本経済に与える影響を考える際には、円ドルレートの変動も注視しなければならない。
円ドルレートは2007年6月の1ドル=124円から趨勢的に円高方向に変化し、昨年10月に1ドル=75円台を記録したのち、現在も1ドル=78円台で推移している。
2003年から2007年にかけて、日本経済は極めて緩やかな経済改善の道を進んだ。小泉政権が無茶な緊縮財政政策を強行したために、日本経済が無残に破壊されてしまったのが2003年だった。
小泉竹中政権は「大銀行もつぶす」との風説を流布して株価暴落を誘導した。この政策誘導によって、日本の株価や不動産価格は大暴落を演じた。
金融恐慌が引き起こされるなら、二束三文の価格でも、株や不動産所有権が紙くずになる前に換金しようと人々が殺到したからだ。
ところが、小泉竹中政権は、最後の最後、暴落価格で株や不動産を投げ売りした人々をあざ笑うかの如く、大銀行を税金で救済した。
小泉竹中政権の目標は、小泉竹中政治を批判する大銀行トップを追放すること、そして、この大銀行を乗っ取ることだった。
りそな銀行処理は、まさに、風説の流布、株価操縦、インサイダー取引などの重要犯罪が国家規模で実行された疑いが濃厚の、今世紀最大の巨大国家犯罪であったとの推論でしか説明できない事象である。
この話はさておき、2003年の人為的な経済破壊が税金による銀行救済で終止符を打つと、日本経済は、自律的に緩やかな改善を示した。
その結果、日本の財政状況は2007年には劇的改善を遂げる。
2007年度の国債発行金額は25兆円だったが、日本の財政制度では、政府支出のなかに「債務償還費」が含まれている。国債発行残高を減少させるための支出、国債の償還金だ。2007年度は債務償還費が14兆円も計上されたから、実際の政府の借金金額は11兆円にまで減少した。
OECDのEconomic Outlook統計による、日本の一般政府財政赤字で見ても、2007年にはGDP比2%の水準にまで、財政赤字は減った。
財政規律がやかましいユーロ諸国における、ユーロ加盟基準は財政赤字GDP比3%であり、2007年の日本の財政赤字はこの基準さえクリアーした。
緩やかな景気改善と劇的とも言える財政赤字の縮小が実現したのが2007年だったが、このタイミングで、サブプライム金融危機が発生した。
サブプライム金融危機の発火点は欧州だった。欧州の金融機関の一部がサブプライム金融危機で巨額損失を計上し始めたのだ。
サブプライム危機の象徴は2008年9月15日のリーマンブラザーズ破綻だ。いわゆる「リーマンショック」である。
しかし、金融機関の損失発生の分布を見ると、その傷は欧州を中心に広がっていたのである。
この変化を背景にユーロが急落した。
2008年7月に1ユーロ=170円だった円の対ユーロレートが10月には一気に1ユーロ=113円に急騰した。
この激しいユーロに対する日本円急騰が日本の製造業を直撃した。
製造業では販売不振から在庫が急増し、これを背景に生産活動が激減したのである。
製造業における稼働率急低下は、製造業に従事していた非正規労働者を直撃した。多数の非正規労働者が「雇い止め」の事態に直面した。
寒空の下で会社の寮からも放り出された非正規労働者は、命からがら東京の日比谷公園にたどり着いたのである。これが、あの年越し派遣村であった。
2008年7月以降の金融市場を観察すると、円ユーロレートの推移と日経平均株価の推移が驚くほどの連動関係を維持していることが分かる。
日経平均株価の推移とは、日本経済の推移と言い換えても良い。
円ユーロレートの推移(2008年7月~2012年7月)
日経平均株価の推移(2008年7月~2012年7月)
数多くの経済指標があるが、もし、多数ある経済指標から、日本経済の動向を占う指標をただひとつだけ取り出すとするなら、私は、この円・ユーロレート、そして、これと連動する日経平均株価の推移をあげる。
いま、世界金融が動揺している震源地は欧州である。
この欧州が揺れ動くということは、ユーロの対日本円レートがさらに下落傾向を維持するということになる。
この意味で、日本経済にとっても最重要の指標であるユーロの先行き動向に、なお、大きな警戒が求められるのだ。
詳しくは『金利・為替・株価特報』2012年7月27日号に記す。
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