「私」を捨て「公」に殉じた日隅氏が放つ「希望」の光
昨日は、重要なイベントが二箇所で同時開催された。
ひとつは、NPJ(News for the People in Japan)主催の日隅一雄編集長による連続対談企画第7回「敵は天下りシステムにあり」。
会場を埋め尽くす市民の参加があり、熱気に満ちた討論が繰り広げられた。
もうひとつの会合は、永田町の憲政記念館で開催された「消費税を考える国民会議」主催の「この時期の消費大増税に反対する超党派国民集会」である。
こちらのイベントにも多数の市民が参加して、野田内閣が強行推進している「シロアリ退治なき消費増税」を粉砕する国会議員による結束が改めて確認された。
ブログ、メルマガに、日隅一雄氏の氏名漢字の入力ミスがあり、深くお詫びを申し上げたい。
いまの日本を見ると、さまざまな意味で絶望的な気持ちに直面することが少なくない。
不正や不正義の横行、信頼の失墜、悪意の跳梁跋扈などが、社会の末端でではなく、社会の中核において広がっている。
日隅氏の存在は、そのなかでの「希望」であると感じられる。
パンドラの箱が開き、さまざまな悪が氾濫するなかで、最後に残された「希望」。
日隅氏の仏様のような柔らかな笑顔を拝見するにつけ、その思いが込み上げてくる。
日隅氏ばかりではない。自己の利益を追求するなら、いくらでも自己の利益を追求できる立場にある人が、自己の利益ではなく、他社の利益を追求する行動を示されている。
ここに、現代日本の救いがあると思われる。
日隅氏はインタビューで、ホームにいて、目の前で線路に落ちた人がいたら、自分が助ける以外に道はない。それは、言ってみれば与えられた運命、宿命のようなものと感じる、と述べられた。
しかし、現実には、目の前で線路に落ちた人がいた時に、自分が助けることが一種の宿命であると感じる人がどれほどいるのだろうか。
ホームに落ちた人を助け出す十分な時間があるのに、自分とは関係のないこと、自分の利益には貢献しないことと考えて、何もしようともしない人が増えているのではないか。
経済学は合理的な個人の存在を前提にさまざまな分析を行う。合理的な個人とは、自己の幸福の最大化を目指す存在ということだが、これをもう一段かみくだくと、自己の利益の極大化を目指す存在ということになる。
すべての個人が、この前提で行動し、政府は、こうした合理的な個人による合理的な行動による結果に対して、できるだけ介入しないようにする。それが、経済全体の効率をもっとも高める道である。
これが、いわゆる市場原理主義、マーケットメカニズムを信奉する、いわゆる自由主義の経済学の主張である。
小泉竹中政治による市場原理主義の強制が、日本社会を変質させたと言われるが、すべての個人が、自己の利益の極大化だけを考える存在になるなら、この世は殺伐とした荒れ地と化すだろう。
自己の利益を求めることを否定することはできないし、それは、ある意味で当たり前のことではあるが、これがすべてになるなら、社会の連帯は生まれない。
自己の利益を考えると同時に、他社の利益を考えること。ここに、決定的な違いが生まれてくる。
これが「弱肉強食社会」と「共生社会」とを分かつ境界であると思われる。
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昨日の対談では、日本政治の支配構造がひとつの論点になった。
官僚は、自己を一市民と捉えず、自己を社会の支配者の一員として捉えている。ここに、そもそもの根源的な誤りがあることを天木氏が指摘された。
私もまったく同感だ。
私は、戦後日本の支配者を米国・官僚・大資本と捉えている。憲法上は主権者である国民が支配者であるべきだが、現実には、これはあくまで建前であって、実際には米官業のトライアングルが日本を支配し続けてきた。
問題は、この支配者である米官業の側が、市場原理主義、自己の利益のみを追求する傾向を強く有することなのだ。
これを是正すべき存在が、本来は政治である。政治が主権者国民の視点に立って、米官業の支配勢力による利益独占に歯止めをかける。社会全体を市場原理主義から共生主義に修正させることが求められている。
しかしながら、政治そのものが、米官業利権複合体の利益を代弁する形で存在し続けてきた。主権者国民のための存在であるはずの政治が、米官業利権複合体の利益拡大のための存在であり続けてきたのだ。
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