相次ぐ重大交通事故が示す「安全より効率」の思想
春の大型連休に前後して悲しい大型惨事が相次いだ。
京都では自動車が通行中の歩行者の隊列に突入して多くの死傷者が生まれる事故が相次いで発生した。
これと前後して、千葉県館山市、愛知県岡崎市でも登校中の児童の隊列に自動車が突入して死傷者が出る事故が相次いで発生した。
また、金沢から千葉県のディズニーランドに向かうツアーバスが側壁に激突して多数の死傷者が発生する惨事があった。
図らずも事故に見舞われた方々の一刻も早いご回復と、亡くなられてしまった方のご冥福を心よりお祈りしたい。
それぞれの事故の原因を究明することが必要であり、責任ある当事者の責任が厳しく問われなければならないことは言うまでもない。
これらの事故を通じて、私たちが考えなければならないこともあるように思う。
京都亀岡市、千葉館山市、愛知県岡崎市での事故は、いずれも朝の登校時間中に発生した。
社会として守らねばならない子供の生命、安全が確保されなかったことになる。
事故の詳細が明らかにならなければ責任問題は論じられないが、自動車の運転者の過失が自己の大きな原因であることは推測できる。
しかし、多数の児童が一定時間内に通行することがはっきりと分かる時間帯に発生した事故であるから、事前にもう少し徹底した安全対策を取ることができたのではないかという気がしてならない。
小学生の朝の登校時間は一定の時間帯に集中する。せいぜい1時間の時間帯に圧倒的多数の児童が登校を終えてしまうだろう。
この1時間について、主要な通学路のうち、歩道が完全に整備されていない部分については、自動車通行を禁止する措置が取られるべきであると思われる。
政府の予算の使い道が問われるが、ほとんどの地方自治体では、市庁舎や巨大公共施設には膨大な予算が投入されるが、生活道路のガードレールさえほとんど整備されていない。
道路の端に白い線を描いて、その内側は歩行者用通路だと規定しても、自動車は簡単に白い線を踏み越えてくる。
行政、立法の基本姿勢として、国民の生命、安全を守るという、根源的な課題に対する姿勢がなおざりにされている。
地域住民がこのような生命、安全の問題を重視して、議員や行政に働きかけることで、事態は改善する可能性もあるだろう。
そもそも、警察が住民の生命、安全を重視して率先して動くべきであるとも言える。
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京都亀岡市の事例では、京都縦貫道の無料化実験が終了した。私も無料化実験中に車で通行したことがあるが、無料化実験中の通行量はかなり多かった。
ところが、無料化が中止され、有料化された途端に、通行量が激減した。
その車が一般道に流れる。
そのために、一般道の渋滞が激化したと伝えられている。
亀岡市の事故現場は、そのために渋滞する道路の抜け道として利用されていたとのことだ。
しかも、朝の通学時間帯は対面通行ではなく、一方通行にされていたという。
通常、朝の通学時間帯に一方通行の措置が取られるとき、自動車の通常の流れを遮断する方向に一方通行措置が取られる。自動車の流入を遮断しなければ通学中の児童の安全が確保されないからだ。
京都の場合、自動車の流入を遮断する一方通行措置が取られていなかったのではないだろうか。一般道を回避する自動車の抜け道としての通学路が抜け道として利用する自動車に便利なように一方通行の措置が取られれば、逆に自動車の流入を促進することになる。
2009年9月に発足した民主党政権は高速道路の無料化を掲げた。これを破壊したのは、民主党内の利権複合体派の議員である。岡田克也氏、前原誠司氏などがその筆頭である。
高速道路の建設には、道路利用者の莫大な通行量が注がれている。高速道路を建設する当初、いずれ通行量は無料化されることになっていた。
無料化の公約を撤回して生まれているのは、道路会社を中心とする巨大な天下りと利権の構造である。
道路を無料化して、道路会社の運営をガラス張りの透明なものにすることによって、利権や天下りの排除が初めて可能になる。
民主党内の利権複合体派、そして、利権まみれのマスメディアが結託して、高速道路料金無料化という適正な政策を潰したのである。
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大都市圏の中心部を除けば、日本全国の高速道路は、まさに閑古鳥が鳴いている。巨大な国費を投入して建設した、巨大な社会インフラが、活用されずに放置されているのだ。
財政の無駄を排除することが重要だと言われているが、巨大な建設費を投入した社会インフラを最大限に活用することも、財政の無駄を排除する重要な施策のひとつであることをなぜ理解しないのか。
巨大な国費を投入して建設した社会インフラであっても、それをフルに活用するなら、投資の効果は大きくなる。投資に見合うベネフィット=便益を得ようと考えるなら、とりわけ地方における高速道路無料化の効果は極めて大きい。
遠距離を走る、スピードを重視する自動車は自動車専用道路に吸収される。その分、一般道路を利用する自動車は減少する。
そうなれば、朝の通学時間帯に、通学路として利用する道路を、抜け道に便利な一方通行の措置まで取って、自動車の流入を促進する必要もなくなってくる。
規制緩和には経済的規制と社会的規制がある。国民の生命、安全を守る規制は社会的規制である。規制緩和の掛け声の下で、社会的規制の緩和まで加速されてきた風潮があるが、これを根本から見つめ直す必要がある。
お知らせです。
『消費増税亡国論-三つの政治ペテンを糺す-』の出版を記念して
「シロアリ退治なき消費増税粉砕講演会」
が、5月19日午後7時20分より、京都駅前のキャンパスプラザ5階で開催すされることになりました。
講演会には、元外交官で作家の天木直人氏もゲストとしてご講演くださいます。
シロアリ退治なき消費増税を粉砕し、市民の市民による市民のための政治を確立するための方策を、講演会参加の皆様と考察いたしたいと考えています。
席に限りがありますが、一人でも多くの皆様のご臨席をお願い申し上げたく存じます。詳しくは大垣書店さまサイトをご覧ください。
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また、これに先立ち、5月12日土曜日に高知の人権啓発センター6階で、「サロン金曜日」主催の講演会
「亡国のTPPと増税に反対!」
が開催されます。一人でも多くの市民の皆様のご出席をお願い申し上げます。なお、高校生以下は無料とのことですので、若い方々の参加もお待ちしております。
続きは
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