筋違いの増税主張を礼賛する日経新聞の劣化
国会でようやく消費増税論議が始まったが、メディアは金環日食一色である。
5月22日はスカイツリー一色になるのだろう。
そうして、7月27日から8月12日まではロンドンオリンピックが開催されるから、オリンピック一色になるだろう。
その前の6月3日からはサッカーワールドカップのアジア最終予選が始まるから、サッカー一色になるのだろう。
NHKは消費増税の賛成論と反対論の全面討論をまったくやらない。
意図的に徹底論戦を行わないのだ。
こんな状況で公約違反の消費増税を決定することは許されない。
5月21日付日本経済新聞オピニオンのページに、同紙論説委員長の芹沢洋一氏による「ポピュリズムよさらば」と題する署名記事が掲載された。
芹川氏は、かの悪名高い、小沢一郎氏攻撃マスコミ組織「三宝会」世話人を務めた人物である。
共同通信社の後藤謙治氏も同じ世話人を務めている。いまも、小沢民主党を叩くことをなりわいとしているのだと思われる。
また、芹川氏は私がかつて主査を務めていた21世紀臨調(「新しい日本を作る国民会議」)政治部会の委員も務めていた。
「ポピュリズムよさらば」に示される主張の奇妙さは特記に値する。
要するに、消費増税反対論を叩くための文章であるわけだが、基本的に論理が破綻している。
芹川氏は米国で、欧州で、そして日本でポピュリズムの暗雲が浮かんでいるとする。
芹川氏は大衆迎合主義という訳を用いているが、そもそも、この訳語を用いているところから芹川氏の勉強不足は明白だ。
ポピュリズムは、民衆の利益が政治に反映されるべきという政治的立場であって、大衆迎合主義とは異なる。政治学を知らない初心者の間違いを犯して論を進めるのだから、全体の内容は推して知るべしだ。
この点は、月刊FACTA6月号に寄稿している田勢康弘氏とまったく共通した間違いを示しており、日系に共通する恥部かも知れない。
主権者である国民の判断の真の意味を考察しようとせず、あらかじめ決定している価値観に合わないものを民衆が示すときに、それを「ポピュリズム」と表現して非難の対象にする姿勢は、まさに「思考停止」と言わざるを得ない。
著者:植草 一秀
販売元:飛鳥新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する
フランスで現職大統領が惨敗した。ギリシャでは政権与党が敗北した。そして、ドイツでも与党CDUが州選挙で大敗した。
民衆は現行の政策運営に明確なNOの意志を表示したのであって、それをはなから否定する根拠は存在しない。
現実の政策運営とは、与えられた環境のなかでの、優先順位の設定という側面を強く持つ。
経済学的な表現を使うと、「制約条件化の最適化」を目指すのが政策運営者の基本的立場だ。
しかし、ここで問題になるのは「最適化」の中身である。
すべての政策手段にはメリットとデメリットが付きまとう。すべてを同時に満たす政策手法はほとんど存在しない。
その時に重要になるのは、何を優先し、何を劣後させるのかという判断である。
例えば、緊縮財政政策は景気にはマイナスの影響を与えるが、財政危機回避には有効であるかも知れない。しかし、緊縮財政が景気を著しく悪化させる場合には、景気にマイナスであるとともに、財政収支にもマイナスの影響を与えるかも知れない。
このとき、正しい判断がどのようなものであるのかは、一概には決められない。
専門家の間でも望ましい政策対応の手順については、意見が分かれるからである。
ある専門家は、強い緊縮政策を推奨するかも知れない。これが正しい処方箋であると。
しかし、別の専門家は異なる主張を示す。
強すぎる緊縮政策は百害あって一利なしであると。まずは、積極政策で経済を回復軌道に誘導し、構造的な財政改革はそのあとで実施するべきであると主張するかも知れない。
どちらが正しいかは、経済学の論争課題であるが、実は、学問的にも答えは一通りには定まっていない。
芹川氏にしても田勢氏にしても、共通するのは、経済学の専門知識が乏しいことだ。経済学の専門知識がないから、どのような政策運営が正しいかを判定できない。
もっとも、専門家の間で意見が一致しないということは、専門家であっても結論を断定することは難しいということでもある。
芹川氏は記事のなかで、緊縮政策を実行するのが正義であり、緊縮政策に反対するのが不正義で、これに迎合することをポピュリズムと表現して、非難の対象としているようである。
その論理の構造の軽薄さと言うか、中身の乏しさには驚きを禁じ得ない。
これが、社を代表する論説委員長の記事なのだから、日本経済新聞の置かれた現状がいかに危ういものであるのかが透けて見えてくる。
私は芹川氏を個人的にもよく知っているから、これ以上は言いたくないが、経済学上の重要な論争点について、予断と偏見に満ちた知識で主張をまとめることは、いささか軽率に過ぎると思われる。
問題を見つめるため、野田氏、岡田氏による下記「天下り決死隊」変節動画三点盛をご高覧いただきたい。
続きは
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
第233号「劣化著しい日本経済新聞の凋落」
でご購読下さい。
2011年10月1日よりメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(月額:525円(税込)/配信サイト:フーミー)の配信を開始しました。
創刊月2011年10-2012年5月は、このようなテーマで書いています。ご登録・ご高読を心よりお願い申し上げます。詳しくはこちらをご参照ください。
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、info@foomii.com までお願い申し上げます。
『植草一秀の『知られざる真実』』をご愛読のみなさまにfoomiiよりお知らせです。
5月26日(土)に【天木×植草リアルタイム時事対談】第5弾動画生配信を行うことが決まりました。
■天木×植草リアルタイム時事対談
http://foomii.com/files/interview/nightlive2012/
●出演:天木直人(元外交官)、植草一秀(政治経済学者)
●配信日時:2012年5月26日(土曜日)
19時00分~20時30分放送予定
今回のテーマはズバリ、小沢一郎氏の復権はあるか。
一審で無罪判決を勝ち取り、停滞する政局が急転回するかと思われた矢先に流れた控訴のニュース。対談では、高裁に舞台を移して争われる裁判のゆくえとともに、小沢氏の復権のシナリオはあるかを考察します。
また、消費増税、解散、総選挙など多くの難題を抱える政局の予測とおふたりが提唱するインターネットを活用した政治活動についても討論します。
有料メールマガジン読者様は、リアルタイム時事対談の生放送配信動画を無料で視聴いただけます。アーカイブ動画配信につきましては、後日、動画配信記事として有料で販売する予定です。
ぜひこの機会に有料メールマガジンにご登録の上、生放送配信動画をご視聴ください。
◎メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
http://foomii.com/00050
メルマガ読者様の生放送配信動画の視聴方法につきましては、26日当日、有料メールマガジンでご案内します。
著者:植草 一秀
販売元:飛鳥新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する
![]() |
【送料無料】日本の独立 |
![]() |
【送料無料】TPP亡国論 |
![]() |
【送料無料】誰が小沢一郎を殺すのか? |
![]() |
【送料無料】原発のウソ |
![]() |
【送料無料】売国者たちの末路 |
![]() |
【送料無料】知られざる真実 |
すでに4月21日に開催された東京での講演会の模様については、飛鳥新社サイトで、現在動画配信中であるので、ぜひご高覧賜りたい。
« 野田内閣消費増税案を白紙撤回させねばならぬ訳 | トップページ | 原発最小限利用橋下提案はコロンブスの卵 »
「消費税大増税=大企業減税」カテゴリの記事
- 日本の光を闇に変えた野田首相(2022.12.26)
- すべてを疑うことから始める(2022.11.29)
- 消費税問題は選挙の道具でなく核心(2020.09.13)
- 不況下大増税強行という世紀の大失策(2020.08.01)
- 深刻化避けられない消費税大増税大不況(2020.02.27)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 筋違いの増税主張を礼賛する日経新聞の劣化:
» ゴロツキの見本市=人脈が酷過ぎる橋下徹 [Thot Diary]
橋下徹という人物を「人脈」面からみてみると、その酷さがより明確になります。「属国 [続きを読む]
» 【共同通信】震災復興は進まず、原発は再稼働で課題は山積み…そんな時に金環日食だの、スカイツリーだの、ほかに考えることがあるだろう [【豆β】ニュース速報+]
1 :ラストボーイスカウト@空挺ラッコさん部隊ρ ★:2012/05/22(火) 18:05:18.80 ID:???0 けさの金環日食は、私の住んでいる地域では小雨まじりの天気で、雲の切れ間から2,3秒見えただけだった。きれいな...... [続きを読む]
» 【ネット】コンプガチャ中止 大スポンサーの経営直撃でテレビ局真っ青(日刊ゲンダイ) [政治経済ニュース・今私の気になる事]
テレビ局が「コンプリートガチャ」の廃止に慌てている。通称「コンプガチャ」はソーシャルゲームの課金方法のひとつで、ドル箱の仕組み。DeNAとグリーの大手2社は、これでガッポリと稼いできた。それだけに業績ダウンは避けられないし、テレビ局もモロに影響を受…... [続きを読む]
» 主権者国民連合発のデモ第一号、詳細決定!⇒6・3 消費税増税大反対デモ 新宿 詳細決定いたしました。 [雑談日記(徒然なるままに、。)]
以下、ご紹介します。赤文字などフォント表示設定はわたくしSOBAです。記事中地図のリンク等もありますが、転載の後に地図画像やコースの画像、「主権者国民連合」の旗のイラストなどをはっておきます。 (以下転載始め) 6・3 消費税増税大反対デモ 新宿 詳細決定いたしました。 http://fairtax.seesaa.net/category/13445521-1.html 危機の時代を共に生きる国民同胞の皆様。 6月3日(日曜)新宿にて実施の【消費税増税大反対デモ 新宿 <シロアリ退治とデフレ脱却が... [続きを読む]