法的整理断行で政府による東電私物化を回避せよ
昨日のブログおよびメルマガ記事に記述した内容について、誤解を生じる恐れがあるために補足して記述したい。
大阪による、電力供給がどうしても足りないというなら、一時、臨時、最小で原発を稼働してはどうかとの提案を「コロンブスの卵」だとして評価した。
その真意は、いかなることがあっても、なし崩し的に原発の全面的な再稼働を認めるべきでないというものである。
目指すべき方向が原発再稼働を認めないというものであることは言うまでもない。
しかし、政府が原発再稼働に向かって暴走姿勢を強めているため、最悪のケースとしての原発全面再稼働の方針提示に対する備えを強めておくことが肝心であることを強調したかったのだ。
もちろん、原発の一部再稼働に賛成するというものではない。
計画停電を実施してでも、原発稼働無しに今年の夏を乗り越えるべきであると考える
大阪市提案に対する藤村官房長官の発言では、原発再稼働は必要最小限ではなく、トータルな経済性等を勘案して判断するとされており、必要最小限ではなく、順次稼働を念頭に置いた発言を受け止められる。
順次稼働と最小限稼働との間には天と地の開きがある。
米官業利権複合体の利益を追求する野田政権は、必要最小限稼働を検討しているのではなく、順次再稼働、原発全面再稼働を狙っていると判断できる。
この全面再稼働、原発フル稼働に暴走することを絶対に阻止しなければならない。
そのためのひとつのステップとして、現段階で、「順次再稼働」ではなく「必要最小限稼働」という形で外堀を埋めておくことが必要である。
万が一、再稼働の方向に事態が進んでも、絶対になし崩し的な全面再稼働、順次稼働に突き進まないように、絶対的な予防線を張っておく必要がある。
その意味で、本当に電力供給が追い付かない場合で、万が一原発を稼働させる場合でも、一次、臨時、最小の原則を守らせることが肝要である。
そのことを伝えたかったのである。原発再稼働を容認することではなく、万が一、再稼働の方向に政権が暴走しても、その暴走を食止める歯止めの論議を行っておくことが重要であると考えているのだ。
関西電力は原発再稼働を認めないなら、計画停電だと脅しをかけている。
本当は、電力の供給不足を補える方法は多様に存在する。また、料金制度の見直しなどで電力利用ピーク時の需要を抑制する方法も存在する。
これらをすべて活用すれば、電力の供給不足は回避できるはずである。
そのために全力を注ぐ姿勢を示さないのは、原発再稼働を実現するためである。
さらに重大な問題は、関西電力が必要最小限の原発利用ではなく、他の発電に代えて原発を最大限に利用することを考えていることだ。
つまり、福島の教訓とは関係なく、自社の営利だけを考えているわけだ。
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昨日も記述したように、関西電力がこうした自己中心的で営利至上主義の行動を取っている最大の背景に、政府による東電の救済がある。
本来、東電は法的整理されるべきものである。
それを経産省が東電私物化を図っている。
財務省も東電のメインバンクである日本政策投資銀行の損失を回避するために、東電救済に前のめりの姿勢をとった。
東電を法的整理していないために、責任処理が極めて曖昧になっている。
本来責任を負うべき、株主、経営者、貸し手などの責任が問われていない。
法的整理になれば、役員はすべて一掃される。退職金も支払われない。
株主は株価がゼロになることで、出資責任を問われる。
貸し手金融機関は融資残高の一部を損失として処理しなければならなくなる。
政府は、法的整理を行うと、原発事故損害賠償債権よりも一般担保付社債に対する弁済が優先されるため、損害賠償資産が枯渇することが指摘されてきた。つまり、法的整理を行うと、原発事故の損害賠償に支障が生じるとの説明が示されてきた。
しかし、原賠法第16条には国が原発事故の損害賠償について支援を行えることが定められており、この点について、国の支援を国会が決定すれば、原発事故損害賠償に支障を来すことなく、東電を法的整理することができる。
現状では、原発事故を引き起こした東電経営者が国によって救済され、ほとんど責任を問われていない。
東電を退職する役員が子会社である東証一部上場企業の社長に就任するなどというニュースさえ報道されている。
東電を法的整理しないために株主、貸し手が負わなかった損失、本来は支払われないはずの経営者に対する退職金の負担は、すべて消費者に転嫁される。
本来責任を負うべき人々の責任が免除され、その金額がすべて一般消費者に転嫁される。
このような歪んだ政策を遂行しているのが野田内閣なのだ。
関電は、これを横で見ているから、原発リスクを重視しない。いざ重大な事故を引き起こしても、国が自分たちの生活を保障してくれると考えている。
東電の社外取締役にNHK経営委員会委員長を起用する。
こうなると、NHKが東電救済スキームを批判することはなくなる。
NHK経営委員会委員長は、事実上のNHK最高意思決定権者である。
NHK会長は経営委員会が任命し、NHK副会長および理事は、NHK会長が経営委員会の同意を受けて任命する。
つまり、NHKの人事権は経営委員会が握っているのだ。
いまからで遅くない。東電を透明に処理し、責任ある当事者の負担を国民に転嫁させることを防ぐために、東電を法的整理するべきである。
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