自民党の方針転換で東電法的整理は秒読み段階へ
2月26日のNHK「日曜討論」では、エネルギー問題についての討論が行われた。国民の生命と健康、生活に直結する問題であるだけに、真摯な論議が求められる。
この日の討論では、日本のエネルギー政策に関する主要論点が提示され、各党の見解が一致する部分、離反する部分がある程度明確化され、それなりに意味のある討論になったと思われる。
公共の電波を用いて、国民の代表者が一堂に会して討論を行うわけであるから、常にこのような姿勢で建設的な討論を行ってもらいたい。
主要な論点を七つあげることができる。
1.原子力の位置付け
2.原発再稼働
3.脱原発状況の問題点
4.当面の基本的対応
5.制度的対応
6.電力料金
7.東電処理
まず、最大の問題は原子力利用を今後の日本でどのように位置付けるのかである。昨年3月11日に、現実に原子力発電所は人類史上最悪レベルの事故を引き起こした。
そのために、極めて多数の国民が甚大な被害を受け、いまなお苦しみの淵に置かれている。原発が立地する双葉町の町民が町役場ごと避難した埼玉県加須町の旧騎西高校には1月時点でなお500人以上が暮らしている。
国会の事故調が始動したが、原発事故の原因はまだ解明されていない。原発事故が発生した日の8日前にあたる3月3日には、政府の地震調査委員会事務局が東京電力などと非公式会合を開き、電力会社が巨大津波や地震への警戒を促す表現を変えるよう求め、事務局が「工夫する」と答えて、表現を後退させたことが新たに明らかになった。
原発事故後に政府が放射能飛散予測データを隠蔽したために多数の住民が大量被曝の犠牲者になったことと合わせ、政府と東電の責任が厳しく追及されなければならない。
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今回の事故を踏まえて、原子力利用の抜本的な見直しが不可欠である。私は「脱原発」の方針を明確に定めるべきだと考えるが、国民全体にとって根本的な問題であるから、国民的論議を深めて、最終的には国民の意思で方針を決めることが必要だ。
米・官・業のトライアングルが支配する政治からは、原子力利用継続の答えしか出て来ない。しかし、これは国民主権国家日本の結論ではない。最後に結論を出すのは主権者国民である。
原子力利用継続を熱望する米官業トライアングルは、原発停止状態で本年夏の需要ピークを乗り切ってしまうことを阻止するために、原発再稼働を強引に推進することが予想される。
野田内閣は表向き、安全性が確認できない限り再稼働を認めないとしているが、本音は明らかに違う。
しかし、事故調が原発事故の原因も究明していない段階で、原発再稼働はあり得ない選択だ。各地の再稼働に向けた説明会等が、やらせミーティングであったことも確認されている。事故原因が解明され、そのうえで、今後のいかなる事態に対しても、原発が事故を起こさないとの確証が得られるまでは再稼働を認めるべきでない。この点について、国会は早急に意見集約を行うべきだ。
TPPや消費税よりもはるかに重大で緊急を要するテーマである。
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3番目以降の論点について、結論だけを先に示す。
原発停止状態に入り、当然のことながら、火力発電の比重が激増している。とりわけ、LNGへの依存が約40%に達している。
安価な燃料調達に向けての日本政府の外交努力が極めて重要な局面だ。対中東政策も極めて重要で、イスラエル支持の立場から、対イスラム諸国に強硬姿勢を示す米国と日本は一線を画す外交姿勢を取る必要がある。
当面の基本対応としては、原子力稼働ゼロを前提に、それでも供給不足が生じないための取組みが不可欠である。国全体での省エネが不可欠で、夏場の、時間帯によるテレビ放送中止などの措置を早い段階から検討するべきだ。
制度的な対応の余地が極めて大きい。何よりも重要なことは、発電のエネルギー効率を上げることで、そのためには分散型のエネルギー供給システムの構築が重要だ。発送電を分離し、発電コスト引き下げに向けて競争原理を活用することも検討するべきである。
自然エネルギーの活用を広範に拡大するための政策支援が強く求められる。
原発事故の責任処理を適正に行わない段階での電気料金大幅引上げは容認されない。透明性のある、合理的な問題処理を行うには、東電の法的整理が不可欠である。自民党代表者が東電の法的整理を強く主張したのは驚きである。
これでなお、野田内閣が東電実質国有化という東電救済策に固執するなら、野田内閣は「金権腐敗内閣」と呼ばざるを得ない。電力料金変更の前に、東電を法的整理することが必要である。
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