« 「社会保障と税の一体改革」という名の単なる巨大増税 | トップページ | 岩上安身氏によるインタビューをご覧ください »

2012年2月 9日 (木)

やはり全物品を関税撤廃対象としていた日本政府

TPP参加に向けた関係国との協議が始まっている。

 米国との事前協議は米国ワシントンDCで2月7日午後(日本時間8日未明)から始まった。
 
「欺瞞と策略に満ちたTPP交渉への日本参加」方針だ。
 
昨年11月に米国ハワイで開かれたAPEC総会。
 
 この場で野田佳彦首相は、
 
「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入ることを決めた」
 
ことを表明した。
 
 これに先立つ民主党内の協議では、交渉参加への反対意見が多数を占めた。政府には慎重な対応を求めた。
 
 これを受けて野田首相は
  
「TPP交渉への参加」
 
とは言わず、
 
「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」
 
と述べた。

人気ブログランキングへ

国内の反対派は、「一歩踏みとどまらせることができた」とコメントしたが、これは間違いだ。
 
 TPP交渉に参加する場合、新規参加国が一方的に「参加する」と明言して参加できるわけではない。
 
 すべての交渉参加国が新規参加意向表明国の参加を承認して初めて新規参加が許される。
 
 日本がTPP交渉に参加する場合には、まず参加意思を表明して関係国との協議に入ることが、その具体的なプロセスになる。
 
 野田佳彦氏が述べたのは、TPP交渉への参加に向けて、日本がそのプロセスに入ることを述べたもので、これを内容から捉えれば、「日本がTPP交渉参加への意思表示をした」ことになるのだ。
 
 この「真実」を説明せずに、国内反対派に対して、あたかも反対意見にも配慮したかのように見せかける行為、ここに野田佳彦氏自身の欺瞞体質が鮮明に表れている。
 
 手口が姑息なのだ。

 Dsc_0012_682x1024_5

Book 日本の再生

著者:植草 一秀
販売元:青志社
Amazon.co.jpで詳細を確認する
 
 

TPP交渉への参加意思を表明する場合、すべての物品・サービスを交渉のテーブルに載せることを表明する必要がある。
 
 日米首脳会談で、日本サイドがこのスタンスを表明したとの米国公式文書が問題になった。
 
 追求に対して野田氏は首脳会談の席上で野田氏がそのような発言をしていないと弁明したが、米国公式文書に記載された、日本政府のスタンスについての記述については取り消しを求めなかった。
 
 問題の本質は、野田氏が発言したのかどうかではない。日本政府の意向として、すべての物品・サービスを交渉のテーブルに載せる方針を示したのかどうかなのである。
 
 この処理もうやむやにされていたが、やはり予想通り、日本政府がすべての物品・サービスを交渉のテーブルに載せる意向が示されていたことが判明した。
 
 日本は独裁国家ではない。民主国家なのだ。野田氏が主権者国民に真実を隠して、主権者国民の意思に反する行動を取ることは許されない。
 
 日本の政治構造の根幹を踏みにじる暴挙である。
 
 日本は国民主権の国家である。国政は国民の厳粛な信託によって行われるものである。そして、首相はこのことを定めた日本国憲法を擁護し尊重する「義務」を負っている。
 
 野田氏は民主党の党首でもある。民主党内で反対意見が多数を占めているTPP交渉への参加について、首相が独断で参加意思を表明すること自体が間違っている。

人気ブログランキングへ

自由貿易自体を否定しているのではない。自由貿易は相互に利益をもたらすものである。しかし、自由貿易が万能なのではない。自由貿易に伴う弊害も存在する。その弊害とのバランスによっては、自由貿易に制限を設定することはあっておかしくない。
 
 日本の関税率のなかには、コメ778%、砂糖328%、バター360%など、例外的に高率の関税率が設定されているものがある。コメ生産、沖縄のサトウキビ農家、北海道などの酪農の存続を守るためである。
 
 日本がTPPに参加する場合、TPPが例外のない関税撤廃を原則としていることから、10年の経過措置を経て、これらの品目の関税率がゼロに設定される可能性が高い。
 
 その場合、日本のコメ生産の大半、沖縄のサトウキビ生産、北海道などの酪農が、壊滅する可能性が高い。
 
 農家1戸当たりの農地面積は、日本を1とすると、米国は99、オーストラリアは1900である。農業の規模がまったく比較にならない。
 
 米国のカリフォルニアで、日本向けの品種改良が進めば、日本のコメ生産はほぼ壊滅するだろう。沖縄の砂糖、北海道の酪農も同じだ。
 

【送料無料】日本の独立 【送料無料】日本の独立

販売元:楽天ブックス
楽天市場で詳細を確認する


 日本にとってコメは単なるひとつの経済生産物ではない。日本人の主食であり、少なくとも3000年の歴史を持つ、まさに日本文明の根幹の一部をなす、重要な存在がコメである。
 
 地域社会、農村共同体は、コメ生産と不可分に結びついてきた。
 
 TPPに参加し、コメの関税を撤廃し、農業を市場原理主義だけで統制することは、とりもなおさず、日本文明を破壊することに直結する。
 
 このような重大な内容を含む重要事項を、主権者国民の意思に反して、国民の信託をも受けていない首相が、独断で諸外国と交渉を進めて良いわけがない。
 
 政府がTPP参加に向けて暴走している現状を踏まえ、国会が政府行動を厳しく追求し、政府の暴走を止めなければならない。

人気ブログランキングへ

お知らせです。
 
 昨日、岩上安身氏のインタビューを受けました。
 
 U-STでアーカイブ放送されているのでぜひご高覧下さい。
 
 1週間はアーカイブで閲覧可能とのことだが、その先は、岩上氏の有料サイト会員専属のアーカイブに格納されるということなのでご注意ください。

人気ブログランキングへ

Photo日本国憲法第36条に以下の条文がある。
 
36 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
 
日本には「死刑」という刑罰があるが、これが、「残虐な刑罰」に該当するのではないかとの見方がある。
 
2月4日から東京渋谷のユーロスペースで死刑映画週間が始まった。
死刑映画の上映とトークショーが開催される。
「「死刑映画」は「命の映画」だ」のコピーの下、問題作が連日上映され、作家などによるトークショーが行われている。
 
ユーロスペース1 死刑映画週間
 
死刑制度に賛否両論があるが、この機会にイベントに参加して、各自の思考を深めてください。

人気ブログランキングへ

続きはメルマガ版

「植草一秀の『知られざる真実』」
 
第132号「自己利益のため国益踏みにじる政事屋が日本を滅ぼす 
でご購読下さい。

 2011101日より
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(月額:525円(税込)/配信サイト:フーミー)の配信を開始しました。

 創刊月201110-2012年1月は、このようなテーマで書いています。ご登録・ご高読を心よりお願い申し上げます。詳しくはこちらをご参照ください。

 メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、info@foomii.com までお願い申し上げます。

 Dsc_0012_682x1024_5

Book 日本の再生

著者:植草 一秀
販売元:青志社
Amazon.co.jpで詳細を確認する
 
 

【送料無料】日本の独立 【送料無料】日本の独立

販売元:楽天ブックス
楽天市場で詳細を確認する

【送料無料】TPP亡国論 【送料無料】TPP亡国論

販売元:楽天ブックス
楽天市場で詳細を確認する

【送料無料】誰が小沢一郎を殺すのか? 【送料無料】誰が小沢一郎を殺すのか?

販売元:楽天ブックス
楽天市場で詳細を確認する

【送料無料】原発のウソ 【送料無料】原発のウソ

販売元:楽天ブックス
楽天市場で詳細を確認する

【送料無料】売国者たちの末路 【送料無料】売国者たちの末路

販売元:楽天ブックス
楽天市場で詳細を確認する

【送料無料】知られざる真実 【送料無料】知られざる真実

販売元:楽天ブックス
楽天市場で詳細を確認する

« 「社会保障と税の一体改革」という名の単なる巨大増税 | トップページ | 岩上安身氏によるインタビューをご覧ください »

TPP」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: やはり全物品を関税撤廃対象としていた日本政府:

» 『小沢一郎』に言うべし [ぢゃがいもの冒険~人生は経験と感動~]
「自立と共生」あふれる日本にする為に、自立しようとした国民を簡単に裏切る『民主党』の、同じ穴のムジナである(そう大多数の国民に思われている)責任をとってくれ。 「自立と共生」あふれる日本にする為に、もう1度立ち上がるつもりがあるのであれば、やってくれ。早急に。... [続きを読む]

» TPP全物品を関税撤廃対象としていた政府:植草 [もうすぐ北風が強くなる]
 やはり全物品を関税撤廃対象としていた日本政府 2/9  植草一秀  TPP参加に向けた関係国との協議が始まっている。  米国との事前協議は米国ワシントンDCで2月7日午後(日本時間8日未明)か...... [続きを読む]

» 減税をした名古屋市 [木霊の宿る町]
辞めたいと思っていてもなかなか辞められない悪い癖。本日は政治ネタです。当地からみる日本は、財務省という親方が綱を操り、マスメディアというお囃子連中が太鼓をたたき、笛を吹く消費税率アップという芝居を首相という猿が踊っていて、それを見ている国民という観客が嬉しがっているように見えます。いまの日本で増税するのは暴挙としかいえません。国債発行という国の借金が未来の日本国民の負担になるというのも間違いです。どういうことなのかについては以前に説明したので省きます。そういえば減税を公約... [続きを読む]

» 野田佳彦経済音痴 [格闘する21世紀アポリア]
 TPPがこの期に及んで一体どうなっているのかについては、経済評論家・植草一秀氏が分かり易くまとめてくれている。「やはり全物品を関税撤廃対象としていた日本政府」と題されたブログにおいて、「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」とした曖昧表現は、紛...... [続きを読む]

» 【教育】 「若い先生、君が代で立ってる…恐怖!」「クビでも立たない!公務員の生き方否定するな」 君が代嫌い先生、卒業式前に苦悩 [政治経済ニュース・今私の気になる事]
教職員処分規定:「卒業式に出られぬ」大阪・不起立で免職  「君が代起立斉唱の職務命令に3回違反したら分限免職」--。教育基本条例案の修正案を巡って8日開かれた大阪府と大阪市の統合本部会議で、処分の規定が決まった。卒業式シーズンは間近。がぜん現実味を帯び…... [続きを読む]

» 日本の消費にかかる構造 [Thot Diary]
日本の経済が回復し、国民の生活水準が回復するためには、最大の需要項目である消費が [続きを読む]

« 「社会保障と税の一体改革」という名の単なる巨大増税 | トップページ | 岩上安身氏によるインタビューをご覧ください »

有料メルマガご登録をお願い申し上げます

  • 2011年10月より、有料メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」の配信を開始いたします。なにとぞご購読手続きを賜りますようお願い申し上げます。 foomii 携帯電話での登録は、こちらからQRコードを読み込んでアクセスしてください。

    人気ブログランキング
    1記事ごとに1クリックお願いいたします。

    ★阿修羅♪掲示板

主権者は私たち国民レジスタンス戦線

  • 主権者は私たち国民レジスタンスバナー

    主権者は私たち国民レジスタンスバナー

著書紹介

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想
2024年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

関連LINKS(順不同)

LINKS1(順不同)

LINKS2(順不同)

カテゴリー

ブックマーク

  • ブックマークの登録をお願いいたします
無料ブログはココログ