やはり全物品を関税撤廃対象としていた日本政府
TPP参加に向けた関係国との協議が始まっている。
米国との事前協議は米国ワシントンDCで2月7日午後(日本時間8日未明)から始まった。
「欺瞞と策略に満ちたTPP交渉への日本参加」方針だ。
昨年11月に米国ハワイで開かれたAPEC総会。
この場で野田佳彦首相は、
「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入ることを決めた」
ことを表明した。
これに先立つ民主党内の協議では、交渉参加への反対意見が多数を占めた。政府には慎重な対応を求めた。
これを受けて野田首相は
「TPP交渉への参加」
とは言わず、
「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」
と述べた。
国内の反対派は、「一歩踏みとどまらせることができた」とコメントしたが、これは間違いだ。
TPP交渉に参加する場合、新規参加国が一方的に「参加する」と明言して参加できるわけではない。
すべての交渉参加国が新規参加意向表明国の参加を承認して初めて新規参加が許される。
日本がTPP交渉に参加する場合には、まず参加意思を表明して関係国との協議に入ることが、その具体的なプロセスになる。
野田佳彦氏が述べたのは、TPP交渉への参加に向けて、日本がそのプロセスに入ることを述べたもので、これを内容から捉えれば、「日本がTPP交渉参加への意思表示をした」ことになるのだ。
この「真実」を説明せずに、国内反対派に対して、あたかも反対意見にも配慮したかのように見せかける行為、ここに野田佳彦氏自身の欺瞞体質が鮮明に表れている。
手口が姑息なのだ。
日本の再生 著者:植草 一秀 |
TPP交渉への参加意思を表明する場合、すべての物品・サービスを交渉のテーブルに載せることを表明する必要がある。
日米首脳会談で、日本サイドがこのスタンスを表明したとの米国公式文書が問題になった。
追求に対して野田氏は首脳会談の席上で野田氏がそのような発言をしていないと弁明したが、米国公式文書に記載された、日本政府のスタンスについての記述については取り消しを求めなかった。
問題の本質は、野田氏が発言したのかどうかではない。日本政府の意向として、すべての物品・サービスを交渉のテーブルに載せる方針を示したのかどうかなのである。
この処理もうやむやにされていたが、やはり予想通り、日本政府がすべての物品・サービスを交渉のテーブルに載せる意向が示されていたことが判明した。
日本は独裁国家ではない。民主国家なのだ。野田氏が主権者国民に真実を隠して、主権者国民の意思に反する行動を取ることは許されない。
日本の政治構造の根幹を踏みにじる暴挙である。
日本は国民主権の国家である。国政は国民の厳粛な信託によって行われるものである。そして、首相はこのことを定めた日本国憲法を擁護し尊重する「義務」を負っている。
野田氏は民主党の党首でもある。民主党内で反対意見が多数を占めているTPP交渉への参加について、首相が独断で参加意思を表明すること自体が間違っている。
自由貿易自体を否定しているのではない。自由貿易は相互に利益をもたらすものである。しかし、自由貿易が万能なのではない。自由貿易に伴う弊害も存在する。その弊害とのバランスによっては、自由貿易に制限を設定することはあっておかしくない。
日本の関税率のなかには、コメ778%、砂糖328%、バター360%など、例外的に高率の関税率が設定されているものがある。コメ生産、沖縄のサトウキビ農家、北海道などの酪農の存続を守るためである。
日本がTPPに参加する場合、TPPが例外のない関税撤廃を原則としていることから、10年の経過措置を経て、これらの品目の関税率がゼロに設定される可能性が高い。
その場合、日本のコメ生産の大半、沖縄のサトウキビ生産、北海道などの酪農が、壊滅する可能性が高い。
農家1戸当たりの農地面積は、日本を1とすると、米国は99、オーストラリアは1900である。農業の規模がまったく比較にならない。
米国のカリフォルニアで、日本向けの品種改良が進めば、日本のコメ生産はほぼ壊滅するだろう。沖縄の砂糖、北海道の酪農も同じだ。
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日本にとってコメは単なるひとつの経済生産物ではない。日本人の主食であり、少なくとも3000年の歴史を持つ、まさに日本文明の根幹の一部をなす、重要な存在がコメである。
地域社会、農村共同体は、コメ生産と不可分に結びついてきた。
TPPに参加し、コメの関税を撤廃し、農業を市場原理主義だけで統制することは、とりもなおさず、日本文明を破壊することに直結する。
このような重大な内容を含む重要事項を、主権者国民の意思に反して、国民の信託をも受けていない首相が、独断で諸外国と交渉を進めて良いわけがない。
政府がTPP参加に向けて暴走している現状を踏まえ、国会が政府行動を厳しく追求し、政府の暴走を止めなければならない。
お知らせです。
昨日、岩上安身氏のインタビューを受けました。
U-STでアーカイブ放送されているのでぜひご高覧下さい。
1週間はアーカイブで閲覧可能とのことだが、その先は、岩上氏の有料サイト会員専属のアーカイブに格納されるということなのでご注意ください。
日本国憲法第36条に以下の条文がある。
第36条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
日本には「死刑」という刑罰があるが、これが、「残虐な刑罰」に該当するのではないかとの見方がある。
2月4日から東京渋谷のユーロスペースで死刑映画週間が始まった。
死刑映画の上映とトークショーが開催される。
「「死刑映画」は「命の映画」だ」のコピーの下、問題作が連日上映され、作家などによるトークショーが行われている。
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死刑制度に賛否両論があるが、この機会にイベントに参加して、各自の思考を深めてください。
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