腐敗する裁判所の弊害除去に裁判審査会創設急務
日本では裁判所が法の番人としての機能を果たしていない。
三権の分立が確立されておらず、司法権が行政権の支配下に置かれてしまっている。行政権のトップは内閣総理大臣だが、内閣総理大臣が司法権を握るという事態が生じている。
つまり、裁判所が「法の番人」として機能するのではなく、「権力の番人」として機能する状況が著しく強まっている。
刑事事件の捜査機関である検察・警察組織は、背後で米国からの強い影響を受けている。日本を支配し続けてきた権力は、戦後一貫して米国と官僚組織と蜜月を続けてきた。これに大資本が加わり、さらに情報統制機関としてのマスメディアが加わり、米官業政電の利権複合体、悪徳ペンタゴンを形成してきた。
利権複合体を攻勢する五つの存在、すなわち、米国、官僚、大資本、政事屋、マスメディアの五者の関係をより正確に観察するならば、すべての頂点に立っているのは米国である。米国の支配下に官僚、大資本が存在し、この三者に協力する部隊としてマスメディアと政事屋が位置すると言える。
つまり、「米国を頂点とするピラミッドの構造」が、より正確な表現になると思われる。米官業政電が結託する「悪のピラミッド」と表現することが、実態をより正確に表現するものであると考える。
行政権力の支配下に司法権を置いたのは明治である。三権分立を強く指向した江藤新平を殺害し、霞が関による日本支配の構造を構築したのが大久保利通である。
この系譜を引いて、日本では裁判所が「法の番人」として機能しない状況が生まれている。
とりわけ、オランダの政治学者カレル・ヴァン・ウォルフレン氏が著した『誰が小沢一郎を殺すのか』(角川書店)が、Character Assassination=人物破壊工作の存在を明示したことにより、政治権力を握る者が司法権を掌握してしまうことの恐ろしさが、より鮮明に理解されるようになった。
すなわち、時の権力は、権力に対する政治的敵対者に対して、政治的な謀略を仕掛け、これを、警察・検察権力および裁判所権力を持って抹殺することが可能になるとの、メカニズムがはっきりと浮かび上がってきたのだ。
近年の事案のなかに、この範疇に括られる事案が多数存在していることは、間違いのない事実であると私は思う。
しかし、これは、民主主義にとっての危機を意味する。民主主義にとっての危機と言うよりも、民主主義の未実現を意味する事象と言わねばならないだろう。
誰が小沢一郎を殺すのか? 画策者なき陰謀 著者:カレル・ヴァン・ウォルフレン |
諸外国でも民主主義・法の支配が確立されていない非近代国家は存在する。権力者が警察権力、司法権力を含む権力を独占して、専制政治を行っている国では、民主化を要求する市民は不当に摘発され、罪を負わされてしまう。
こうした事態を私たちが観察するときに、正義の行動を示して国家権力によって捕らえられた人々を、「被告」などと呼んだりはしない。
民主化運動に注力する人々が仮に政府に捉えられ、重罰を科せられても、これらの人物を悪人扱いにはしない。これらの国で裁判所が有罪判決を示しても、直ちに、そのことをもって、有罪判決を受けた人物を悪人視しない。
つまり、裁判所が示す判断であっても、そもそもその裁判所自体の判断が正当であるとは言えないとき、私たちは、裁判所の判断を絶対視しないのだ。裁判所は有罪の判決を示したが、そもそもおかしいのは裁判所の側であると、普通に判断する。
残念ながら、このことは日本の外にある後進国、あるいは非民主化国家に限った問題ではないのである。日本自身が、そのような重大な問題を抱えていることに、ようやく、人々が気付き始めた。
残念ながら、現行の日本の制度の下では、とくに、政治権力にとっての敵対者については、公正な裁判は行われないということが明らかになり始めている。
そうであるなら、そのことを、広く国民全般に周知することが重要だ。裁判所自体が歪んだ存在であることがわかれば、歪んだ判決が出てくるのは当然ということになる。そのときに何よりも重要なことは、裁判所の判断を重く受け止めないことである。
裁判所の判断は、間違ったものであると受け止める冷静さが重要になってくる。
悪政を敷いている国家では、民主化活動家などの、いわゆる「正義」に属する人々が官憲に捕らえられる対象になる。つまり、悪政に睨まれ、不当な罪を着せられることが、ある意味で「正義の証し」ということになるのである。
ノーベル平和賞を受賞しながら中国政府によって監視される劉暁波氏、ミャンマーの民主化活動の先頭に立つアウンサンスーチー女史などを見て、私たちは、権力によって捕らえられた人だから悪人であるとは、判断しないだろう。
このような思考訓練が必要になっている。
私もそうだし、小沢一郎氏もまったく同じ文脈のなかで理解することができる。
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こうした歪んだ裁判所の現実を踏まえて、国民が国民による国民の裁判所を創設するべきだと提案したところ、早速多くの方からご賛同をいただいた。賛同の意思表示に、この場をお借りして感謝の意を表したい。
私はこれを「人民裁判所」と表現したが、「人民裁判」という言葉が特定の意味を示す場合があるから、別の表現を用いる方が良いのではないかとの建設的意見もいただいた。
いずれにせよ、政治的な背景を持つ刑事事案については、優秀な法曹が結集して創設する民間裁判所が、客観性のある適正な判断を一つ一つの事案に対して示してゆくことが必要だと思う。
検察審査会制度の実態は巨大な闇のなかにあり、制度是正が求められるが、不当判決を市民目線で弾劾する制度を構築する必要がある。この視点を取り入れて、「裁判審査会」を創設するべきだ。国は最高裁を最終審とする建前を主張するだろうから、市民が力を結集して、市民による「裁判審査会」を本格的に発足させる必要がある。
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